ソウルのレストラン(いわゆる洋食屋)で、韓国風焼き肉ではなく、米国風ステーキを頼んだところ、キムチではなくタクアンが一緒に供されたのにビックリした経験がある。
別の洋食屋でスパゲティを注文したときもタクアンが付いてきた。
韓国では、しばしば「日帝が持ち込んだもので良かったのはタクアンだけだ」と、笑い話で言われる。それだけタクアンは韓国の日常の食生活に入り込んでいる。
といっても、日本のような「3年漬け」といった名品は存在しない。塩漬けしたダイコンを、毒々しい黄色に着色したものばかりだ。今日、一流ホテルのレストランで食べる洋食には、さすがタクアンは付いてこないが、なぜ洋食にタクアンなのか。
日帝時代を知る古老に尋ねたことがある。
「洋食そのものが、日本から伝えられて広まったからさ。同じころに日本の漬物として広まったタクアンが、洋食の添え物になったわけだ」
ただ、韓国でのタクアンは、決して洋食の添え物になるだけではない。
例えば、キムパップと呼ばれるのり巻き。安物のキムパップの中に入っているのは、ほとんど例外なく、みじん切りにしたタクアンだ。
のりも、のり巻きも、例の「ウリジナル」(韓国人が『韓国発祥』と主張する文物)に入っている。