米国、対メキシコの関税発動1カ月延期 両大統領が合意
【ワシントン=高見浩輔】メキシコのシェインバウム大統領は3日午前、トランプ米大統領との協議で米国による追加関税の発動を1カ月延期することで合意したと発表した。米国は4日にメキシコからの輸入品に25%の関税を発動する予定だった。トランプ氏も3日、自身のSNSに同じ内容を投稿した。
シェインバウム氏はX(旧ツイッター)に「トランプ氏と話し、合意に達した」と投稿した。トランプ氏が求めていた合成麻薬フェンタニルの流入対策に応じ、メキシコは米国との国境に1万人の警備隊を配置する。両国は3日から安全保障と貿易について協議を開始する。トランプ氏は「非常に友好的な会話だった」と評価した。
トランプ氏は1日にメキシコとカナダに25%、中国に10%の関税を課す大統領令に署名した。新たな関税は4日午前0時1分(日本時間4日午後2時1分)以降の輸入分から適用すると規定。関税は不法移民と薬物の流入を「国家の緊急事態」と認定し、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて導入するとした。
トランプ氏は3日午前9時(同3日午後11時)過ぎ、自身のSNSにカナダへの追加関税を巡ってトルドー首相と協議したと投稿した。午後3時(同4日午前5時)に再び話す予定としている。
トルドー氏は1日の記者会見で「カナダのために強く立ち向かう」と反発。報復措置の第1弾として、4日から300億カナダドル(約3兆円)に相当する米国からの輸入品に25%の関税を課すと表明していた。トランプ氏との協議で対応が変わる可能性がある。
中国は2日、世界貿易機関(WTO)に提訴すると明らかにした。報復関税には言及していない。
メキシコ、カナダ、中国は、米国の貿易額上位3カ国で全体の4割を占める。関税が導入されれば、輸入物価の上昇を通じて米国民の負担になる公算が大きい。
米国への悪影響を和らげるため、カナダ産の石油や重要鉱物などへの税率は10%に抑える。リチウムや天然ガス、石炭、ウランも対象に含めた。
トランプ氏は2日に「短期的には多少の痛みを伴うだろうが、国民はそれを理解している」と語った。
欧州連合(EU)向けにも関税を導入する意向を改めて強調した。米国が様々な分野で貿易赤字になっているとして「本当に筋が通っていない」と非難した。
トランプ氏は大統領令に、相手国が報復措置を取った場合、税率の引き上げや対象品目の拡大に踏み切ると明記した。
トランプ政権の関税発動方針を受け、3日の東京株式市場では日経平均株価が急落し、終値は前週末比1052円(2.66%)安の3万8520円だった。下げ幅は今年最大で、プライム上場銘柄の9割が下げる全面安の展開となった。
米国向け製品をメキシコで生産する自動車メーカー各社は下げがきつく、日産自動車は一時10%安まで売り込まれた。
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(更新)- 中林美恵子早稲田大学 教授分析・考察
この関税は、鈍く、痛烈で、短期間の効果を狙ったものとされる。急激な混乱は急激な収束のためとされ、「ここ数週間の移民問題、貿易、フェンタニル対策はバイデン政権下の数年間よりも多くの成果を上げた」と宣言したいらしい。今回は、スティーブン・ミラーとトム・ホーマンが推進したらしく、通商代表部(USTR)や商務省は関与していない模様だ。中国への関税は、同盟国だけを標的にしていると言われないための可能性がある。規模も小さいので中国側の反応も比較的控えめに見える。 一方で、4月に導入される予定の関税は、より精巧に設計され、長期的な影響を念頭に置いたものになりそうである。
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(更新)
2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。
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