横浜DeNAベイスターズ・山本祐大はシャチのごとく頭を使い、仲間と群れになって獲物(優勝)を狩る!
(前回記事⇒「ベイスターズに恩返しを! 8年目を迎えた「打てる捕手」山本祐大(横浜DeNA)は今季も打点に執着する」)
■昨年は初づくしのシーズン
プロ入り初の開幕スタメンマスク、そして自身としても初の開幕勝利で始まった昨季は、初づくしだった。横浜DeNAベイスターズの若き正捕手、山本祐大選手である。
初めてのオールスターゲーム出場という夢も叶えた。それもファン投票で56万2807票とぶっちぎり1位(捕手部門)の得票での選出だ。「なんか認められたというか、野球ファンの人にも僕の名前を知っていただけたっていうところが嬉しかった」と相好を崩す。
「純粋にプレーを楽しめたし、経験できたことがよかった。たわいもない感じで、そういう空間にいられたことがすごくよかったなと思います」。
プロ野球選手なら誰もが憧れる舞台で、球界を代表する選手たちと肩を並べた。
他球団のスター投手たちの球を受け、岡本和真選手(読売ジャイアンツ)に打撃の話を聞き、普段は敵である選手たちともさまざまな会話を交わした。「ああいう機会なのでやりたかった」と座ったままでのセカンドスローにもトライした。
キラキラした2日間は、山本選手の野球人生にまた彩りを加えてくれた。
■2つの偉大なタイトル
さらに、シーズン後には2つの大きなタイトルを受賞した。堂々の217票を獲得した三井ゴールデングラブ賞は「一番獲りたいタイトル」で、球団の捕手では1998年の谷繁元信氏以来26年ぶり2人目の栄誉だ。
そしてなにより独立リーグ出身者では両リーグ、全ポジションを通じて日本球界史上初という快挙である。
「めちゃくちゃ嬉しかった。獲りたい、獲りたいと思っていましたけど、実際に獲れるってなったら、やっぱちょっと感慨深いものがありましたね。それに“史上初”っていうのもなかなかないんで。そういうのも含めて、縁があったなと思います」。
自身のものを模して作られた黄金色に光るミット型のトロフィーは、「今年のモチベーションになるなって感じ」と自宅のテレビ横に飾って、毎日眺められるようにしている。
また、ベストナインにも選出された。こちらも「ありがたかった」と、これまたダントツの251票で、同じく球団の捕手では谷繁氏(1998年)以来となった。
ここまでの歩みを「7年間、決して間違った道を選んだことはなかった。一番誇れるところ」と自らを讃え、胸を張る。
「去年はなかなかうまくいかないことも多かったので、今年はもっとよくしたいし、キャッチャーとして、まだまだもっとできるなって感じはしています。タイトルは1年間、頑張った人が獲れると思っているので、今年もしっかりやって、自分が思い描いている成績や貢献ができれば、獲れる可能性があるんじゃないかなと思います。まぁ、運もありますけど…」。
そこだけを目指すのではないが、精いっぱいやりきったその先に、きっと勲章は輝くはずだ。
■目指すべきところ「侍JAPAN」
初といえば、昨年3月の強化試合・欧州代表戦(京セラドーム大阪)では初めて日本代表のユニフォームにも袖を通した。
同7日はスタメンマスクをかぶり、六回まで5投手のパーフェクト投球をリードした。打っては二回、1死一、三塁の場面で放った先制の中犠飛が決勝打となり、2-0の勝利に攻守で貢献した。
毎回の11奪三振は、落ち球をことごとく止めた山本選手のブロッキング術があったからこそで、井端弘和監督は「陰の立役者」と讃え、「山本がよかった。投手陣のリードで持ち味を存分に引き出してくれた。チームが流れに乗れる一つの理由だった」と高く評価していた。
大学生投手は2人ともドラフト1位でプロ入りした。「すごくいいピッチャーでしたね。相手チームになったんで、対戦しないといけない」。先発・金丸夢斗投手は中日ドラゴンズへ、2番手・中村優斗投手は東京ヤクルトスワローズへと、同じリーグに入団した彼らとの対戦も心待ちにしている。
残念ながら昨年11月の第3回世界野球「プレミア12」は、故障により出場はかなわなかった。だが、一度でも代表戦を経験したことによって、「侍JAPAN」というのは山本選手にとって明確な目標の一つになった。
次の代表招集は3月5日、6日の強化試合・オランダ戦(京セラドーム大阪)で、来年はいよいよWBCの第6回大会が予定されている。今後の代表戦にはなんとしても出場したいと鼻息は荒い。
「出たいし、目指すべきところになったなって思っています。国で勝負するので、責任感を感じながらやらないといけない場所。日本を代表する選手たちばかりが集まるからこそ、日本を背負う価値があると思います」。
日の丸を背負う覚悟はできている。
■ミズノブランドアンバサダーとして
「一番嬉しかった。タイトルももちろん嬉しかったんですけど、それに匹敵するくらい嬉しかった」。
オフにはミズノ社とブランドアンバサダー契約を結び、チャームポイントである“たれ目”の目尻をさらに下げた。
「ブランドアンバサダー」といえば用具メーカーであるミズノ社の顔だ。自身のモデルの用具類も販売され、野球少年たちにも広く浸透するようになるだろう。
「これからは(ミズノの用具類を)広めていくことも仕事になるので、そこも頑張りたい。これも結果を残せば自ずと広まっていくと思うので、まずは結果を残したい」。
役職を重く受け止め、より一層の活躍を誓っている。
すでに2025年用の用具も届き、昨年末から使用している。牛骨による表面加工を施し、先端のくり抜きの直径を小さくして重心がより先端になったバットは「バランスがちょっと違う」が、「今のところいい感じ」と満足気だ。
遠心力が使え、より飛距離が増しそうな相棒に「単純に考えたらそうなりますね。このバットをうまく使えたら」としつつも、「これまたピッチャーとの兼ね合いで…」と実戦で相手投手と対峙しないことにはわからないと強調する。
ただ、自主トレでの状態は「いい感じできています。自分の体の感覚と打感や打球のギャップが少ない」と言い、キャンプに向けて仕上がりは上々なようだった。
■多大な感謝の気持ちを抱いて梅野隆太郎の自主トレから卒業
今年の1月の自主トレは独り立ちするつもりだった。過去4年は阪神タイガース・梅野隆太郎捕手に弟子入りし、キャッチャーとしての、さらにはプロ野球選手としてのイロハを教わった。
「梅野さんにはすごくお世話になって、もう甘えたくなかった。梅野さん、なんでもやってくれるんですよ。だから、そういう甘える環境から脱したかったんです」。
自分なりに練習メニューを考案し、1人で個人トレーナーだけを伴ってやろうとしたのだが、いかんせん球場が見つからなかった。「結局、佐野さんに甘える形になってしまったんですけど…」とチームの先輩である佐野恵太選手を頼ることになった。
「めちゃくちゃ充実していたし、すごくきつくていい練習ができた。キャンプに不安なく入れそうです」。自主トレ中には、佐野選手に感謝しきりだった。
だが、いずれは自分でやりたいという考えはしっかりと温めている。プロ野球選手として、年々自覚が高まっている証だ。
■シャチのロゴマーク
練習中、ふとトレーニングウェアのある部分が目を惹いた。シャチだ。シャチの絵柄がロゴになって、左腕と右太ももに入っている。「好きなものにしたら」という奥さんの助言でウェアにだけちょっと遊び心を加え、名前だけではなくイラストも入れることにしたという。
「シャチ、めっちゃ好きなんです、ずっと小っちゃいころから。迫力もそうですし、形とか大きさとか見た目も好きなのと、もう調べれば調べるほどいろんなことが出てくるんで」。
シャチというのはタイプもさまざまで、生息地によって狩る生き物や狩りの方法も違い、単体でなく十数頭の家族の群れを作って社会的な生活を営むと、説明してくれる。
「親のシャチが自分の子どものシャチに狩りを教える動画とか見たりします。すごく賢くて頭を使っていて、生き残るにはどうするのかって考えているシャチがかっこいいなって」。
鴨川シーワールドに見に行くこともあるというシャチについて、熱く語るのだった。
知能が高く活発な動物で、泳ぐ速度が速くジャンプ力があるなど運動能力も高い。また好奇心旺盛で、寿命も長い。海洋における食物連鎖の頂点に立つシャチは、時として自分の倍以上の大きさのクジラにも襲いかかるという。
自身もシャチのごとく強敵に立ち向かい、長く活躍する―。そんな姿を描ける山本祐大は、これからも魅力あるプレーで楽しませてくれそうだ。
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(撮影:筆者)