ベイスターズに恩返しを! 8年目を迎えた「打てる捕手」山本祐大(横浜DeNA)は今季も打点に執着する
■「打てるキャッチャー」山本祐大
現代野球では「打てるキャッチャー」が当たり前になってきている。守りだけに注力し、8番や9番の打順で打率も2割程度では、なかなか使ってもらえない時代だといえる。
「打てるキャッチャー」―。それを体現しているのが、昨年26年ぶりの日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズの山本祐大捕手だ。
昨季は、死球による右手首の骨折により9月16日に戦線離脱したため、規定打席には到達しなかったものの、ほぼすべての部門でキャリアハイの成績を残した。打率は.291で終えたが3割超えをキープした時期もあり、一時的に“首位打者”に名前を刻んだこともあった。
安打数も100を超え(104)、「そこはひとつ、よかったなと思います。規定に乗ったらもちろん打席数も増えるので、120、130、140と増やしていきたい」と意気込む。
「1日1本を出すというところは明確にできていた。ヒットの出し方というか、ヒットを打ちにいって打てているという再現性があって、自分の中でのズレも少なかった」。
内容にも納得だ。
12試合連続安打も見事だが、連続試合無安打が少ないことも特筆すべきだろう。3試合が1度、2試合もわずかに4度と極端に落ち込むことがなく、シーズンを通しての安定ぶりが目立った。途中出場した9試合でも.455と結果を残したことも大きい。
「1か月まったく打てないという時期もなくて、波が少なかったのはよかったと感じています」と手応えを口にし、「序盤は打っても1本、2本だったのが、スターナイトで初めて猛打賞して(7月9日)、そのあたりくらいから固め打ちが増えだした」と振り返る。以降、猛打賞は5度記録している。
ちなみにスターナイトの3日間(同9日~11日)は10打数8安打、1本塁打で打率.800、出塁率.818、長打率1.300、OPS2.118という神がかり的な数字で、チーム3連勝に貢献した。それでも「できすぎです」と、そのときも決して驕らなかった。
逆に3試合連続無安打のときも「さすがにちょっと不安になりましたけど、やることは一緒。甘い球を打ち損じしないっていうのがそのひとつで、その原点にまず戻ろうと、そこは忠実にやっていました」と気持ちを波立たせず向き合って、脱した。
好成績の要因を自らこう分析する。
「1軍で多くのピッチャーの球を見るようになったことと、練習から打ち損じが少なくなってきたこと。自分が思った球を、自分が思った打球で返せていることが増えてきたっていう、自分の中での感覚がよくなっているんじゃないかなっていう感じはしています」。
相手も必死に抑えにくる中で、その対応力が上がってきている。経験をすべて糧にしている結果だ。
■本塁打
5本のホームランも自己最多である。
「とくに変えた部分はないですけど、とらえた延長線上がホームランになったっていう感覚。ホームランを打ちにいったとかもなかったし、打席によってホームランを求めてということもなかったので」。
徐々に大きく力強く鍛え上げてきたフィジカルの成長が、飛距離に直結しているのだろうか。「それもあります。でも、(飛距離は)ちょっとずつ伸びているのかなとも思うけど、全部が伸びているわけじゃないんで、まだまだかな。角度やタイミングもありますし」とさまざまな要因があり、そこに今後の本塁打増の秘訣があるという。
「角度とか力の伝え方的なものをもっと明確にして、それをより再現性高く、より確実に自分の角度にもっていけるか。それが増やす秘訣というか、必要だなって思っていますね」。
ただ、打撃練習でできてはいても、生きた投手を相手にそれができるかというところが、ここからの課題だという。
■打点
打撃主要部門のもう一つ、打点に関してはこんな表現をする。
「僕、打点に関しての執着はけっこう強いなと思うんです。(打撃で)チームに貢献するのは、やっぱ打点だから。もっともっと打点は挙げたい」。
昨季の打順はおもに7番(61試合)や6番(34試合)で(ほか2番・1試合、5番・2試合、8番・1試合)、上位から好打者、強打者が並ぶベイ打線では下位にチャンスが回ることも少なくない。だからこそ、自らが打点を挙げることが勝利に近づけることだと自負している。得点圏打率は.308だった。
そんな中、リーグトップタイを記録した6犠飛に大きな意味を持つ。
「僕は最低でも、とか思っていない。最高が犠牲フライやと思って打ちにいっています。もちろんヒットが一番嬉しいけど、向こうも点を取られたくないって思ってなかなか打たせてはくれない。そんな中で打点を稼がないといけないってなったとき、その“事の起こし方”ができるバッターって、僕はキャッチャーとしてすごく嫌。なんとか自分がそれをできないかと思ってやった中での犠牲フライ。6本でしたけど、打点になっているのは、すごくいいんじゃないかと思っています」。
内野ゴロを打たないよう、しっかり振った中で外野まで飛ばし、スコアボードに点数を刻む。仕事を果たせたことに、大きく胸を張る。
■圧倒的な成績
そもそもは打撃力に高い評価がありながら、出番が少なかった時代はどうしても焦って結果を求めるがゆえに、その力を存分には発揮できなかった。だが、本来の能力が開花した今、「打てるキャッチャー」のイメージも定着した。
「打率もホームランも打点も去年以上の数字を出すよう、自分にプレッシャーをかけながら勝負したい。やっぱ、印象をつけさせたいんで。相手だけじゃなく、味方にもみんなにです。チャンスで還してくれるという印象って打ち続けないと無理なので、そういう印象を細かく細かく積み重ねていくところが、いい結果にも繋がっていくのかなと思っています」。
そこで掲げるのが、具体的な数字ではなく「圧倒的な成績」だ。単なるキャリアハイではなく、これまでの自分を、もちろん相手をも、すべてを圧倒できるような成績。それを今季は求めていく。
■仲間たちの気持ちに感謝
昨季の数字に関しては、自らに一定の評価は与える。だが、終盤に死球で戦線離脱したことが悔しかった。もちろん相手も意図したことではなく、不可抗力であることは重々承知だ。
右手首に死球を受けて、それでもなお出場を直訴した根性。さらに病院に直行し、骨折と診断されたが、すぐに切り替えたポジティブさ。かつてトッププレーヤーを何人も見てきたトレーナーは「ケガをしたときの切り替えの早さこそ、一流の証」と言ったが、まさにその域にいる。
「もちろん落ち込みはしましたよ。でも、落ち込んでいても仕方ないな、やるべきことはいっぱいあるからそこにトライしていこう、そう思って切り替えられました」。
手術を終え、ゲーム復帰の最短は日本シリーズだろうとの診断に、自身もそこを目標にしてチームが進出してくれることを願った。
公式戦で、「登場曲は戦う曲。感情的に僕も戦っている感じにはなりました」と牧秀悟選手が自身の登場曲であるBigfumiさんの『Soar』を使ってくれたこと、クライマックスシリーズでは桑原将志選手が「商売道具やのに、まさか使ってくれるとは」と『やまゆう』のネームが入った打撃用手袋を使ってくれたこと、また、ベンチに自身のユニフォームを掲げてくれたことなど、さまざまなことが気持ちを揺さぶった。
「また頑張ろうって思えたし、僕もそうやって人の心を動かせる人間になりたいと思いましたね」。
「祐大のために」「祐大と共に」という想いが伝わり、仲間たちに心から感謝した。
■明日なきアスリートの覚悟
「実はまだ、あのとき(日本シリーズ)骨はついてなかったんです」。
今だから、衝撃の発言をする。骨がついていないながらも「握力が戻るか戻らないかっていう話で、お風呂に入っても握力を戻すトレーニングとか、していましたね」とやれることをやってきた。
一時は左手より15キロも弱くなっていた握力。打撃の感覚は多少の違和感で済んだが、投げるほうが「かなり感覚が変わりましたね」と、ずいぶんと落ちていた。
しかし懸命のリハビリで「100%かって言われたらそうじゃないけど、試合には出られるくらいのレベルには戻っていました」と、プレートで固定しつつも日本シリーズ第4戦からベンチ入りメンバーに名前を連ねた。
ゴーサインが出たときは「みんなと一緒に戦えるっていうのが、一番デカかったですね」と喜んだ。出番はなかったが、チームのためにできることに徹した。
骨がついていないままプレーすることによって状態が悪化し、選手生命が終焉を迎える事態になることは予想しなかったのだろうか。すると、「そこで先のことを考えるアスリートなんていない」と一蹴した。
「そんな考えは全くなかったですね。僕の野球人生だし。やりきったか、やりきってないかの話になってくると思う。みんながあんなに頑張っているのに、むしろ悠長にリハビリをしているなんて嫌だった。それに、来年がどうなるかなんて別にケガしなくてもわかんない話なんで、僕からしたら(復帰は)当たり前のこと。毎年不安の中でやっているので、ケガしたからもっと不安になるなんてないっていう感じでした」。
これが真のアスリートの気概、覚悟なのだ。
■ベイスターズに恩返しを誓う8年目シーズン
昨年は「自分が変わらないとチームも変わらない。結果でも行動でも変わっていけば、何か変えていける」との覚悟をもってシーズンに入った。そして今やチームの中心選手になり、キービジュアルにも欠かせない存在になった。
「そんな実感はないですけど(笑)。でも、もう8年目のシーズンになりますし、ベイスターズにいる歴も長くなってきているんで、少なからずベイスターズに恩返しをしたい。周りのみんなとの関係もできてきたし、それも含めてチームをよくしていきたいなと思います」。
自身の活躍は必須だが、考えるのは自分のことだけじゃない。常にチームのことを考えている。たとえば「守備で勝てるよう、僕発信からでもできることもあるんじゃないかな」と昨季、両リーグでワーストだったチーム失策数の軽減など、意識喚起をしていく考えもある。
今季は最後まで戦い、リーグ優勝の輪に入って三浦大輔監督を己の手で胴上げすること誓う。さらには「プラス、タイトルにも絡んでいければ」と、連続受賞も虎視眈々と狙っている。
*次回は“初づくし”だった昨季のタイトル受賞や日本代表について、紹介する。
(次回記事⇒「横浜DeNAベイスターズ・山本祐大はシャチのごとく頭を使い、仲間と群れになって獲物(優勝)を狩る!」)
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(撮影:筆者)