Sid.40 二人だけの別荘で寛ぎきれない

 特急列車に揺られること二時間十一分。諏訪駅のひとつ手前、茅野駅に到着した。

 下車すると高原の爽やかな風、でもないな。暑い。


「暑いっすね」

「そうね。温暖化のせいかな」

「日本中どこに行っても暑い」


 今や北海道と言えど夏は暑くなる。昔は札幌近隣でさえも、夜間肌寒いくらいだったらしい。


「レンタカー借りないとね」


 改札を抜け駅舎から通路を通り大きな建物側へと移動する。


「駅直結のショッピングモールがあるんですね」

「そうみたい」

「絢佳さん。来たことあるんですよね」

「学生時代にね、友だちと」


 昔の話らしい。昔って言っても何十年も前じゃないよなあ。

 まあ十年ひと昔とは言うが。

 モール内を通り地上へ出るとバス停が並び、左側を見るとレンタカー屋があるようだ。

 絢佳さんが先導し暫し歩くと、レンタカー屋に入り受付へ。

 手続きを済ませ車が用意されると乗り込む。


「あの、大丈夫ですか?」


 パネル回りやハンドル付近を覗き込んで、いろいろ確認してるようだ。

 アクセルとブレーキの位置も確認してるのか。


「ちょっとね、数年ぶりだから」


 絢佳さんと心中は構わんが、せめて絢佳さんで童貞卒業してからがいい。

 そのあとなら気兼ねなく一緒に旅立てる。

 いや、一発と言わず何回でも。勿体無さ過ぎるだろ。


 ほぼペーパー状態が何年か続いて、感覚が鈍ってるかもしれないと。


「あのね、ナビお願い」

「カーナビ見て指示すればいいんですか?」

「そう」

「でも音声出ますよね」


 運転に集中するから、カーナビの抑揚のない音声だと聞き逃すそうだ。

 俺が何度か言えば理解できるはずと。なんか怖いぞ。それでも慎重に運転するだろうから、そう簡単に事故ることは無いだろう。

 エンジンを掛けるのに、絢佳さん、俺でも分かる。ブレーキ踏んで無いとエンジン掛からないって。


「絢佳さん緊張してます?」

「かなり」

「えっと、ブレーキ」

「あ、そうだった」


 無事に走り出すと慎重な運転が暫く続く。

 慎重過ぎて後続車がしびれを切らしそうだ。煽られないか心配になるけど、ある程度走ると感覚が戻ったのか、普通に運転できる状態になったようだ。


「もう大丈夫」


 思わず乾いた笑いが漏れたぞ。


「えっと、どこを走れば」

「ナビの音声出てますけど」

「聞こえてないから」


 あかんな。迷子になりかねない。

 ナビのマップではなくスマホのマップを確認し、少し遠回りしたようだが、無事に二九九号線に入れたようだ。


「あとは道なりに進んで芹ケ沢西交差点を左です」

「うん、思い出した」


 それにしても埋もれてんなあ、シートベルト。俺も埋もれたい。はみ出し撓む、ばるんばるん。

 じゃない。思い出した、とは言えナビはしておかないと。


 走ること二十五分程で別荘のある場所に着いたようだ。


「確かこの辺だと思うけど」


 車外の様子を窺いつつ、少しずつ車を移動させると、無事別荘を発見し車をカーポートに。

 シートベルトを外す絢佳さんだけど「圧迫されてきつかった」とか言ってる。でか過ぎるからだな。撓んでたし。少し揉み解すと楽になったり。なわけ無いか。

 肩じゃないんだし。


「絢佳さん。肩こりません?」

「凄いこってるの」

「肩揉みしますよ」

「え、じゃあ少しお願いしようかな」


 肩じゃなくて、その下にある、ばるんばるんを揉みたいけどな。

 荷物を下ろし別荘に入るのだが、見た目はあれだ、木の板を張った感じの外壁で、全体が真っ茶色。斜面に建っていて、カーポートから階段を使い上がって行く。

 結構な段数があり先を進む絢佳さんだけど、やっぱりすごく左右に揺れるんだよな。眼福ではあるが、万が一落ちた際に俺が支える、と言う大義名分がある。

 だから絢佳さんの下に居るのだ。


 階段を上り切るとウッドデッキがあり、玄関ドアがあった。

 解錠しドアを開けると「少し休んでから、この辺を見て回ろうか」と言ってるな。


 中に入るとまた階段があるし。

 親父の奴、もっと平坦な場所に別荘建てろよ。あ、でもあれか、愛人を囲うのが目的なら、見通しが効かない方がいいのか。

 階段を上がるとホールがあり、右側に部屋がひとつ。左側のドアを開けると少し広めのリビングがあった。


 リビングに入るとドア側の壁に暖炉があり、ソファやらテーブルにテレビと本棚がある。リビング右側には段差のあるキッチン。斜面だからか。

 リビングの奥にも部屋があるようだ。

 奥まで進むと荷物を置いて暫し休むことに。


 ソファに腰を下ろすと「事前に別荘の管理人が、食材とか飲み物を用意してくれてると思う」らしい。

 絢佳さんがキッチンに行き冷蔵庫内を確認してるようだ。


「必要最低限のものは揃ってるみたい」

「じゃあ買うものって」

「今は必要無いかな」


 キッチン内を見回して何があるか確認してるようで「あ、翔真君。ポーションコーヒーあるから飲もうか」だって。

 勿論、返事はイエスだ。

 氷を入れたタンブラーにポーションコーヒーを入れ、牛乳で割って持ってきてくれる。


「はい、飲んだら肩揉んでくれるんだよね」

「当然です」


 ソファに腰を下ろし窓の外を見て「斜面だから眺めはいいのね」と言って、コーヒーを口に運んでひと息吐く絢佳さんだ。

 さて、では乳を、じゃなくて肩を揉んで進ぜよう。


「じゃあ肩揉みしますから」

「うん、お願い」


 なんかいいなあ、これ。

 絢佳さんの後ろに立ち肩に手をやると、確かにコリ方が尋常じゃないな。ガッチガチ。

 揉み解すのに少し時間が掛かりそうだ。


「凄いですよ、コリ方」

「あのね、重いのと緊張でね」


 分かる。ばるんばるんが重過ぎる上に、車の運転で緊張したからだ。

 肩を揉み始めると「あ、いい感じ」と少し妖艶な声が漏れ出る。それにしても相当お疲れだな。日頃、家事を頑張ってるからなあ。少しは労ってあげないといけないよな。

 モミモミしていると「ふぅ」なんて声が漏れる。


「どうです」

「少し楽になったかな」


 ブラの肩紐が邪魔ではある。外せ、とは言えないから、そのまま揉んでいるが。


「あ、ちょっと待って」

「なんです?」

「ちょっとだけ」


 そう言うとブラの肩紐をずらすが、同時にばるんばるんが豪快に下がった。


「えっと」

「邪魔でしょ」

「まあ」


 堪らん。

 再び揉み始めると「肩甲骨の間もこるの」とか「胸の上もね、少し」って、胸の上?


「あの、分からんです」

「デコルテ周り全部」


 デコルテとは首筋から肩、胸元までの範囲を差すらしい。デコルテ全体をマッサージすると、コリが解れるそうで。

 と言うことでリクエストされた以上は、邪な考えを捨てマッサージに専念、できるわけがない。

 背中や肩はいい。首筋も問題無い。しかしだ、胸元って直下にばるんばるんが控えてる。それでも手を当てると柔さが伝わってくる。ばるんばるんでは無いのに柔い。


「もう少し下」

「え」

「少しくらい触れてもいいから」


 股間がな、もう噴火しそうだよ。

 そっと下へと手を下ろすと、更なる柔さが手に伝わってくる。もっと下に手を当てれば、アンナプルナを手中に収めることができる。などと考えながらも、鋼の意思を見せる俺だ。

 いやらしくないよう、丁寧にマッサージをすると。


「翔真君。上手」

「そう、ですか」

「これからもお願いしようかな」

「言ってくれれば」


 でも、親父はやらんのか?


「あの、親父はやらないんですか?」

「あの人自体が疲れてるから」


 仕事で疲れているのか、他の女を抱き過ぎて疲れているのか。

 絢佳さんがキッチンを見てる。


「やっぱりダイニングテーブルの高さかな」

「えっと、なんです?」

「あのね、置くのに都合がいいの」


 乗せるのにか。

 重いだろうからなあ。どこかに乗せておけば楽なんだろう。高さ的に丁度いいのがダイニングテーブルってことか。


「私はキッチンで休むから」


 そう言って立ち上がるがブラ紐外してるんだよ。


「ちょっと具合が」


 あの、絢佳さん、何してるんです?

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