千代田区長選挙で次点の佐藤沙織里さんって何者? SNS駆使、YouTube時代の選挙に密着したら

2025年2月3日 06時00分 会員限定記事
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2月2日に投開票された東京都千代田区の区長選で、交流サイト(SNS)を駆使した候補者がいた。
無所属新人で公認会計士・税理士の佐藤沙織里さん(35)。再選した現職に次ぐ、6474票を獲得した。
告示後にYouTubeで関連動画が数多くアップされた。佐藤さん自身もライブ配信などをし、期間中に20本近くの動画をアップし、再生回数は合計235万回を超えた。

いったい何が起きていたのか。選挙戦を追った。(小沢慧一、小川慎一)

◆聴衆より多い?ずらり囲んだ配信カメラ

区長選が告示された1月26日、末広町の交差点はまるでテレビスタジオのようだった。ずらりと並ぶ動画配信者たちのカメラは、佐藤さんに向けられている。

1月26日、選挙戦初日の演説。カメラが並び街頭がテレビスタジオのようになっていた(小沢慧一撮影)

「千代田区を減税の突破口にする。そのためなら区長報酬はいらない覚悟だ」
佐藤さんがマイクを手に力強く訴えるものの、カメラの数に対し、聴衆の数はそう多くない。通常の選挙戦と比べると異様な光景だ。
しかし、その様子は配信者らによって動画サイトに投稿され、街頭演説の「切り抜き動画」がネット上に多数上がった。
再生回数は20万回を超えるものもあった。YouTubeで「さとうさおり」と検索すると、多くの動画が出てくる。
再生回数に呼応するように、選挙戦が進む中で街頭演説に人だかりができるようになり、わざわざ他県から訪れる人もみられた。
東京のど真ん中の千代田区は、有権者約5万3000人。これまで区長選が全国的に注目されたことは、記者の記憶にはない。
佐藤氏とはいったい何者なのか。

◆2年間で動画400本、フォロワー30万人のYouTuber

佐藤氏はYouTubeでチャンネルを運営し、登録者数は約30万人に上る。約2年間で400本以上の動画を投稿し、税金の問題や財務省への批判、政治をテーマに語るものが多い。

佐藤さんのYouTubeチャンネルのスクリーンショット(2月2日午後3時半時点)。選挙期間中の動画では再生回数が44万回のものも

公認会計士の知識を生かした鋭い指摘やユーモアある語りが人気を集めている。
茨城県出身で、きょうだいが多く家計が苦しい家庭に育ち、高校時代は都内に出てバイトでお笑いコンビを組んでいたという。
医者を夢見るが、学費を払う余裕がないため、給料がもらえる防衛大を志望した。
入学に必要な体重が足りず進学を諦め、飲食店のコンサル会社に就職した。

◆2023年千代田区議選はNHK党から出馬し291票

だが、苛烈な労働環境に耐えかね、次は頭を使う仕事をと公認会計士を目指し、働きながら専門学校に通い26歳で資格を取得した。
大手監査法人に就職するも、同僚が子育てと仕事の両立ができなかったり、過労で倒れる姿をみて、「企業の福利厚生では限界。政治しかない」と政治家を志した。
「政治家女子48党」を経て、NHK党に所属し、2023年の千代田区議選に出馬するも、291票の獲得にとどまり惨敗した。
ちょうどそのころから、支援者の勧めでYouTubeを始めた。

1日、選挙戦最終日。多くの聴衆が千代田区外から訪れ、動画を撮影した(小沢慧一撮影)

2024年の衆議院議員選で東京1区(千代田、新宿区)で出馬。NHK党には理念の違いを感じ、無所属で挑むと約1万2000票を得る善戦を見せた。
街頭演説の聴衆に話を聞くと、ほとんどが佐藤氏の動画を視聴して訪れた人で、遠方からの人も多い。
茨城県から街頭演説を見に来た男性(27)は「優秀で熱意がすごい。応援したくなって直接見に来た」と話す。

◆面識がなくても、全国から集まるボランティア

活動を支えたのは全国から集まるボランティア。SNSのやりとりでつながっているため、佐藤さんと直接面識のない人ばかりだ。その数は約200人に上った。

1月30日、選挙戦中盤の街頭演説。聴衆が増加していった(小沢慧一撮影)

北海道、岩手、埼玉、千葉、愛知など遠方からも集まり、ポスター貼り、ポスティング、ビラ配り、選挙カーの運転手、身辺警護、演説の撮影、拡散など、活動を全面支援した。
ボランティア同士のやりとりは、ビジネスコミュニケーションアプリ「Slack(スラック)」が使われた。
現地で参加できないボランティアが遠方で仕事を割り振り、スラックを通じて集合場所や作業内容、時間などが伝える。
選挙の拠点となる特定の事務所を持たず、現地集合、現地解散で好きな時だけ支援することを可能にした。
鍼灸(しんきゅう)師の伊藤浩司さん(37)は、2日間休暇を取って、愛知県から訪れた。「佐藤さんに政治を変えて欲しい。そのために自分が負担を少しでも減らしてあげたい」
60代の主婦は札幌市から日帰りで参加し、街頭演説会場でビラを配った。「動画で佐藤さんを見ていて、何か応援したかった」

◆「テレビ、新聞は信用できない。動画こそ真実」

街頭演説の様子は、その都度SNSにアップされ拡散された。それにはYouTubeチャンネルを持つ配信者たちの力が大きく寄与している。

1日、選挙戦最終日。千代田区外からも大勢の聴衆が訪れた(小沢慧一撮影)

演説場所の前列には常に、4~5台のカメラが並び、佐藤...

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