「事件をなかったことには絶対できない」加害者に問いかける遺族 傷つけられても心情等伝達制度を使う理由 #令和の人権
加害者と遺族の苛烈な言葉の応酬 オブラートに包むべきか
翌8月、渡邉さんは2度目の制度利用を行った。犯行の計画性について、納得できる答えが返ってこなかったからだ。「私たち家族は、今でも事件と向き合って苦しい生活を送っている。お前は刑務所の中で死ぬことになる。過去のことをなかったことに絶対できない。そのことをどのように考えるか」という鬼気迫る質問も入れた。 2度目の「心情等伝達結果通知書」は9月末に届いた。その内容は1度目以上に渡邉さんを傷つけるものだった。 [保さんがどう思っていようが、俺には関係ない] [過去のことは、俺はなかったことにする。それを保さんが自己中心的な考えだと思うなら勝手に思えばいい] [こんなこと何回もやってられない。俺的にはゼロからやり直そうと思っているのに、わざと邪魔してるようなもんじゃん。変な手紙を送ってきて、嫌がらせですよ] [俺のことを憎んでもどうしようもない。人を憎んでも、挫折とか絶望しか生れない] [二度と手紙を書いて来ないでください] 計画性についても、[目的はない、偶然そうなっちゃった。行き当たりばったりで、もし、計画的犯行なら財布とか盗んでいる。そのことは弁護士も言っている]という主張を繰り返した。
傷口に塩を塗りこむような言葉の羅列。渡邉さんによれば、法務省も、制度開始前から、このような苛烈な言葉のやり取りになることは予想しており、研修でそのまま伝えるべきかどうかの議論があったという。 渡邉さんは2回目の心情伝達を郵送で行ったが、その際、こんな経験をした。 「『私の思う責任のとり方は、今すぐお前が死ぬことだ。この世からいなくなることだ』と書いたら、担当の刑務官から電話がかかってきて、『それは自死を促すことになるので、そのまま伝えることはできません』と言われました。表現を変えていいかと聞かれたので、仕方なく応じました」 渡邉さんは、刑務官の負担を気遣いながらも、こう話す。 「刑務官は、被害者や遺族とどう接していいかわからず、言葉遣いや振る舞いによっては二次被害を与えてしまうのではないかという戸惑いがあると思います。ただ、被害者はこういう思いでいるんだ、この加害者がやったことは被害者や遺族にこんな打撃を与えて、苦しめているのだということをわかってほしいんです」