マッド三枝が行く!!

「被告は遺族に5510万円払え」判決もどこ吹く風 犯人の家族は無借金で家を構え、1円も支払わず 司法に置き去りにされる犯罪被害者の遺族

財力はあるのに、服役囚の父は…

 渡辺さんの話を聞き、福島に向かうことにした。穂積服役囚の両親は、白河市の外れ、かつては表郷村だった郊外に住んでいた。

 事前に登記簿謄本で調べると、420平方メートルもある敷地は親族の畑だったようで、平成10年にその親族から買ったものだった。あくまでも支払い義務があるのは穂積服役囚だ。だから、家族には法的な支払い義務はない。だが、本人が支払わないなら、せめていくばくでも誠意を見せてもいいのではないだろうか。支払わないとかたくなに思っているならその気持ちを知りたい。

 そんなことを車を止めて思案していると、プロパンガスを積んでいると思われる軽トラックが止まった。

 「おはよう」

 男性が家に向かって声をかけると、ランニング姿の小太りの男性が顔を見せた。車の脇を通った際に顔を見ると、穂積一服役囚と顔がよく似ている。

 近くの市営住宅の敷地で井戸端会議を20分ほどすると、また戻ってきた。近くに人がいないことを確認して車を降りた。

 「穂積さん」

 「はい」

 男性は人の良さそうな顔をこちらに向けた。

 「息子さんが犯した殺人事件の取材で来たのですが」

 名刺を渡して来意を告げると、一瞬にして顔が曇った。

 「弁護士に任せてあるから…」

 振り絞るように男性は声を出した。

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