《平成17年3月。駅から自宅まで一人で歩いて帰宅する途中だった会社員、渡辺美保さん=当時(22)=を殺害したとして、殺人罪などに問われた同級生の男に横浜地裁が無期懲役を言い渡した。男は退廷時、傍聴していた父親の保さん(69)ら遺族に向かって叫んだ。「お前らが(駅に)迎えに行かなかったから娘は死んだんだよ」》
なんだこいつは、と思いました。私たちがバー(法廷を傍聴席から仕切る柵)の外側にいたから言えたのでしょう。
《20年に被害者参加制度が導入されるまで、遺族は柵の外での傍聴しか許されなかった》
美保は夢の中にいるような、ほんわかとした子でした。事件後は3年間も犯人が分からず、なぜ優しい娘が突然亡くなったのか、考えては涙がこぼれました。しかも男は自首したのに裁判では無罪を主張。否認の言葉に腹が立ち「嘘つくんじゃねえよ」と傍聴席でつぶやくと、すかさず裁判所職員に「静かに」といわれました。当時、裁判では遺族は被告人質問もできず、もどかしい時間でした。
《18年8月には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)だった妻の啓子さん=当時(53)=が、電車にはねられ死亡した》
社交的だった妻は事件後、突然「私死ぬね」と言うなど精神的におかしくなってしまって、心療内科に通っていました。事故は心の病が原因でしょう。男に2人を殺されたと思っています。