転職を経て見つけた働き方の軸。幼少期の夢を仕事にしたいと再スタートを決意
京王バス 府中営業所のバス乗務員として、市内路線バスと空港連絡バスの運転業務を担当する宇田川。バスの運転士という仕事との出会いは、幼少期にまで遡ります。
「祖父母が車の工場を営んでいて、幼い頃から乗り物に親しみがありました。その中でも、大きなバスを操縦する運転士は憧れの存在でした。クレーン車や飛行機、電車なども好きでしたが、バスは日常的に一般道を走っているのを目にしていて、一番身近でしたから」
しかし、宇田川がバスの運転士になるまでの道のりは決して一直線ではありませんでした。薬学部出身だった宇田川は、医薬品会社に就職して配置薬の営業に携わります。その後、他の業界の仕事も経験したいと転職を決意。建築会社で現場監督の仕事に就きますが、体力的に過酷な環境で、働き方を見直すことにしました。
「これまでの仕事は、業界や給与、周囲の環境など条件面を軸に選んできた面がありました。その反省から、長く続けられること、自身の好きなことを仕事にしようと考えるようになったんです」
宇田川が前職の建築会社を退職したのは、ちょうどコロナ禍。多くの企業が採用を控えている時期でした。そこで宇田川は、この時間を転職の準備期間にしようと思い立ちます。
「自身の好きなことや昔からやりたかったことについてあらためて考えた時に、子どもの頃の夢だったバスの運転士を思い出したんです。そこで、バスの運転士になるための準備として、大型二種免許の取得に取り組みました」
自身で教習所に通い、無事に免許を取得した宇田川。再び転職活動を始め、京王バスの求人に出会いました。
「バスの仕事の経験や知識はなくても、京王バスという名前は知っていましたし、都内を走っているイメージがありました。また、公共交通機関を運営する大手グループの会社ということで、未経験での挑戦でしたが労働環境面でも安心できそうだと感じました」
そして2021年3月、宇田川は京王バスへの入社を果たします。
運転士デビューをめざして。厳しくも手厚い研修体制と、共に支え合った同期との絆
入社後、府中営業所への配属が決定した宇田川。そこから約1カ月弱の「教導教育(※)」という新人研修が始まりました。
※ 「教導」とは新人の運転士の基礎教育を専門に行う運転士の社内呼称
「朝8~9時から夜の17~18時まで、バスの運転の基礎を学びました。車両の点検方法に始まり、ハンドルの持ち方、ギアの入れ方、マイクでのアナウンス、ボタン操作など……。本当に初歩的なことから一つひとつ教わりました」
お金をいただいてお客さまを乗せるという大きな責務を伴う仕事である以上、乗務員には安全にバスを運転するための確かな技術が求められます。訓練は非常に厳しく、未経験の宇田川は基本的な運転技術の習得に時間がかかったと振り返ります。
「いざ運転しようとすると緊張してしまって、体が思うように動かないんです。ハンドルも動かないし、ギアも変えられない……。最初は自身で考えている通りにバスを動かせなくてとても苦労しました」
教導教育を終えた後は、主なバス路線を覚える期間が1~2週間あり、その後1週間ほど営業所の指導員が同乗してお客様を載せずに走行して指導を行います。さらに、お客さまを乗せての研修も3週間ほど実施。
※ 府中営業所は、配属当初は担当する路線を限定し、習熟度に応じて徐々に乗務できる路線を増やすステップアップ方式を採用
「研修期間中は覚えることも多く大変でしたが、あの時期があったからこそ、1人で運転デビューする時は、緊張することなく楽に臨めました。叱られながらもめげずに努力した経験が、いつの間にか自信になっていたんです。
丁寧なサポート体制のもとで、入社から2~3カ月かけて技術習得に励み、いよいよ独り立ちすることになりました」
宇田川が研修期間を乗り越える大きな支えとなったのが、同期の存在でした。府中営業所では、宇田川のほかに4人が同期入社。年齢層は30歳から40代後半までと幅広いながらも、厳しい研修を共に過ごしたことで強い絆が生まれました。
「正直、同期がいなかったらバスの運転士になることを諦めていたかもしれません。教導教育の時から一緒に頑張ってきて、私が失敗して泣きそうになっていた時も『大丈夫、大丈夫』『頑張ろうぜ』と励ましてくれました。
当初なかなか路線を覚えられなかったり、運転方法で悩んだりした時も、同期に相談することが多かったですね」
現在も、業務上の話はもちろん、家族や趣味の話で交流を深めたり、仕事終わりに一緒に食事に行ったりすると話します。
「大変な時や悩んでいる時も、同期がいるから頑張ろうと思えます。本当に彼らの存在は大きいですね」
お客さまからの感謝の言葉がやりがいに。頑張りが評価される独自の評価制度
市中の路線バスの運転に慣れてきた頃、宇田川は新たな挑戦の機会を得ます。それは空港連絡の高速バスの運転業務でした。
「半年ほど前から高速バスも担当しています。上長から声をかけてもらったことがきっかけで、せっかくできるならと思い『やってみたい』と答えました」
高速バスの車体は、通常の路線バスより1.5m長い全長12m。この差が、運転時に大きな影響を及ぼします。
「車体が長い高速バスは、ハンドルを切る時にバスの後部が外側に大きく膨らむんです。そのため、運転に難しさを感じる方も多く、担当する人はあまり多くありません」
技術を要する業務にも物おじすることなく、持ち前のチャレンジ精神で積極的に取り組んでいる宇田川。
そんな宇田川が仕事にやりがいを感じる瞬間は、お客さまに感謝の言葉をいただいた時だと話します。
「バスを降りる時に『ありがとう』と声をかけられると嬉しいですね。さらに、お客さまから会社宛てに『丁寧で運転が上手だった』と感謝のお電話をいただいたこともあります。この時は社内制度の『善行』として評価されました」
京王バスには、乗務員のモチベーション向上につながる評価制度が整っています。その1つがこの「善行」制度。社員の善い行いが営業所の掲示板で発表され、報奨金が支給されます。そのほか、「モニター添乗」という、審査員が運転技術チェックも行われています。
「ほぼ毎日どこかの路線に審査員が乗車していて、後日、点数と評価が発表されます。ここで良い仕事をしていれば、給与にもしっかり反映されるんです。このような評価制度があると気が引き締まりますし、やる気向上にもつながりますね」
好きな仕事だから、苦にならない。理想の職場でさらなる成長を楽しむ
さまざまな職を経てたどり着いたバスの運転士という仕事について、宇田川が感じていることがあります。
「この仕事に就いてみて、これが私の好きな仕事だったんだなとわかりました。もちろん大変なことはありますが、好きだから、不思議と苦に感じないんです。普段目にする街並みも好きですし、自身の運転技術が徐々に上がっていると成長を実感できることも、日々の楽しみになっています」
2024年で入社4年目を迎えた宇田川。京王バスでの今後のビジョンを問うと、現在勤務する府中営業所で、バス乗務員としてさらなる経験を重ねていきたいと語ります。
「路線バスや高速バス、コミュニティバスといろいろ担当していますが、まだ運転したことのない路線が十数本あるんです。今後はそれらも担当してみたいですね。営業所内でまだ関わったことのない同僚もいますし、まだまだここで頑張っていきたいです」
そして、この仕事を前向きに続ける支えとなっているのが、職場の雰囲気の良さだと言います。
「良好なコミュニケーションを築こうと、積極的にサポートしてくれる人がとても多いです。皆さん友好的で気さくに話しかけてくれますし、堅苦しさがありません。
勤務時間中はもちろん真剣に取り組み、やりがいがありますが、その前後の時間での同僚とのたわいもない会話が、自分にとって仕事を続けていくモチベーションの1つになっています。先輩と後輩、本社と営業所といった関係でも、変な壁がなく、気軽に話ができる距離感があります。これは京王バスならではの魅力だと思います」
未経験ながらも、自身の“好き”を原動力に、バスの運転士という夢をつかんだ宇田川。京王バスの未来を担う一員として、同期や同僚と切磋琢磨し合いながら、さらなる挑戦を続けていきます。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです