これはちょっとあり得ない最悪です。
癌の遺伝子解析、そしてリキッドバイオプシーを研究開発してる者として黙っていられません。誰が診断、コメントしたのか知りませんが色々間違ってますので詳しく解説します。
まずは森永卓郎さんのご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
また本件はワクチン関係の変な陰謀論とは全く関係ないので最初に全否定しておきます。
以下私の私見↓
行った血液パネル検査は血液の中に含まれる癌由来のDNAを調べる検査で、「リキッドバイオプシー」という種類の検査です
リキッドバイオプシーの特徴は血液だけで検査できるので生検(針を刺して針の中に入ってくる癌組織を顕微鏡で見る検査)や手術による癌組織が採取できない場合(進行している、あるいは患者さんの状態が良くない)でも検査ができるというメリットがありますが、一方で簡便な検査(血液検査)なので癌の組織をダイレクトに見る検査よりは精度はかなり落ちます
Liquid Biopsyは国内では主に
Guardant 360(74遺伝子)
FoubdationOne Liquid CDx(324遺伝子)
がありどちらも解析するためにアメリカに血液を送ります
記事にある80遺伝子とあるのでGuardant360の方と推測されます
膵臓癌では95%の確率でみられるKRAS(ケーラスと読む)の遺伝子変異とありますが、これはダイレクトに癌組織を高精度に検査する方法による結果であって精度の落ちるリキッドバイオプシーでは検出率は30%程度(幅がある、下記論文1を参照)であり全然95%ではなく、KRASが検出されなかったとしても膵臓癌を否定する根拠にはなり得ません
さらに「腫瘍マーカーで膵臓がんに反応するやつ」というのはCA19-9だと推測されますがCA19-9の膵臓癌における感度(陽性率)は72%(論文2参照)なので4人に1人以上は陰性になりますので、これも膵臓癌を否定する根拠になりません
どこから発生したのか分からない癌(原発不明癌)の可能性も、もちろんありますがここでの記述はめちゃくちゃです
最も罪深いのは最初に遺伝子解析をした先生だと思います。これは推測に過ぎませんが、この検査は保険で受けられる検査なのですが、怪しい自費診療クリニックでうけているのではないでしょうか?
癌の遺伝子解析は国全体で厳重にシステム化されており、がんゲノム中核拠点病院(全国に13箇所、大学病院やがんセンターなど癌医療の中核になる大病院)と、連携する、がんゲノム医療拠点病院(32箇所)、がんゲノム医療連携病院(232箇所)のみでしか保険を使った癌遺伝子検査ができません。これらの機関ではただ検査するだけでなく、エキスパートパネルといって、担当医、外科医、腫瘍内科医、病理医、遺伝カウンセラー(遺伝性の場合もあるため)、を含む複数の医療機関にまたがるチーム全体でチェックを行い結果の解釈と妥当性の判断、今後の対応を一例一例議論しています。上に私が言ったようなことは癌遺伝子検査に関与する医療者であれば当たり前のことなので、必ず正されるはずです。逆に正されていないということは、このシステムから外れた怪しい医療機関でこの検査が行われて誤った解釈を伝えられてしまったと推測されます。
検査への誤った解釈は患者さんの命に直結します。だからこそ厳重にルールを決めてやっています。癌の種類によって治療や対応も異なるので患者さんの予後やQOLにも影響しますし、患者さんやご家族の肉体的のみならず精神的な負担にもなります
美容外科の件もそうですが、癌医療の領域にも怪しいひとがたくさんいます。陰謀論を振り撒き恐怖を与えて注目を集めて金儲けをしている、とんでもないひとがたくさんいます。すぐにでも根絶したいですが力及ばず悔しい思いをいつもしています。どうかこの文章を読んでくださっている皆さんが正しい認識を持っていただき、あり得ない陰謀論やインチキ医療に傾倒しないように願っています
論文1
jstage.jst.go.jp/article/suizo/
論文2
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35913776/
#森永卓郎
#がん
#膵臓癌
#原発不明癌
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@newssharing1
森永卓郎氏、原発不明がん終末期を語る「入院中に血をアメリカに送って80何種類の遺伝子変異を見る血液パネル検査をやった。膵臓がんの場合95%の確立で出るKRASという変異が見られなかった。95%の確立で膵臓がんじゃない。
newssharing.net/morinagatakuro
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