森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、財務省が存在も明かさないまま関連文書の開示を拒んだ決定の妥当性が問われた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は決定を違法として取り消した。
改ざんを苦に自殺した元近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻雅子さんが「夫の自死の理由が知りたい」と5年前から重ねてきた訴訟の一つである。逆転勝訴した雅子さんにとって一歩前進と言えよう。
文書は改ざんに関する捜査をしていた大阪地検特捜部に財務省が任意提出したもの。「将来の捜査に支障を及ぼす恐れがある」として不開示を認めた一審大阪地裁の判断を、高裁判決は覆した。
そもそも該当の文書は捜査当局が作った供述調書などではない。財務省の行政文書で情報公開制度の対象だ。国側は「原則開示」の原点に立ち返り、判決に沿って速やかに文書を開示すべきだ。
雅子さんは2021年に開示請求した。財務省の報告書や赤木さんがまとめた「赤木ファイル」では、当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官が改ざんを指示したとされる。だが、改ざんの背景など肝心の部分は不明のままだ。
高裁判決は、情報公開法の趣旨に照らせば、文書の存在を明らかにしてから開示・不開示を決めるのが原則で、存否も答えず不開示にできる規定の適用は「例外的」な取り扱いで行政機関の裁量は認められないとした。
その上で、改ざんに関する捜査は佐川氏らの不起訴で終結しており、捜査機関による関連文書の取得も一般的な手法だと指摘。文書の存在や範囲が公になっても「犯罪捜査に支障を及ぼす恐れがあるとはいえない」と結論づけ、存否を明かさぬ形の門前払いを違法とした。国民の知る権利に沿った司法判断といえる。
開示請求を巡っては昨年3月、総務省の審査会も不開示決定を取り消すよう答申したが、財務省は応じなかった。
改ざんの引き金は森友学園への国有地売却に関し、安倍晋三元首相が妻昭恵氏も含めて関与を全面否定した国会答弁だった。財務省を中心に公文書の改ざんや廃棄が通常業務のように行われ、国会では虚偽答弁が繰り返された。
不開示決定もこの一環だろう。雅子さんが国に損害賠償を求めた訴訟では、国が請求を丸のみする「認諾」をして訴訟打ち切りに持ち込んだ。そうまでして何を守りたいのか。いいかげん、安倍政権の負の遺産を清算すべきだ。
真相に近づきたいのは雅子さんだけではない。国民の多くが同じ思いだろう。なぜ鑑定価格から8億円も値引きして国有地は売却されたのか。政権中枢の関わりはあったのか。なお謎である。文書の中身は分からないが、そこに手がかりがあれば解明と再発防止につながる。
今回の判決は文書の開示までは命じていない。国の対応が焦点になる。まだ争ったり、存否だけ回答して不開示にしたりする判断は避けるべきだ。開示は、雅子さんをはじめ国民に対する責任を果たすことに他ならない。