保護者トラブル
ぬ~べ~再アニメ化ですって?
「これインフルじゃーん!」って検査に向かう道すがらに考えたネガティブフォロウなやつ。
京極堂クロスオーバーはよく聞くけど、ぬ~べ~クロスオーバーはないですね。
読んでいたのが小さい頃過ぎて予想以上に記憶が曖昧でした。
そしてこんな子クラスにいたら、いくらぬ~べ~が鋼メンタルでも昼行灯なんかしてられないよってなった。
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その日はカフェ・アミーゴは土曜の半ドン、鬼太郎も今週は遊びに来ない。というわけで水木は、煙草をカートンで、ウィスキー1本、本屋にも寄ってこれから明日まで1人時間を満喫しようとホクホク顔で自宅に向かって歩いていた。ショートカットに公園を突き抜けていくことにする。
と、突然激しい化鳥の断末魔のような声が、両耳の耳朶を打った。
何事かと足を止めて見回すと、
「いやああああああああああだあああああああああ!」
見れば、公園の植え込みの向こう、歩道上を2名の女性が何やら歩調を合わせた様子でゆっくりゆっくりと進んでいる。その背後ではワイシャツに黒いネクタイの男性が、青いランドセルを抱くようにして後をついて歩いている。
水木はやや歩調を緩めつつ前進を続けた。その間も絶叫は続いており、
「帰らないいいいいいいい!」
「がっこう!がっこう!」
「ぎゃあああああああ!」
というような、おそらく男児と思しき声が叫び続けている。
水木があと3歩で公園の敷地から出るというところで、ちょうど一行とかち合った。
女性は教師と保護者であるらしい。2人がかりで小学生男児を、両脇から担ぎ上げるような格好で運んでいる。男児といっても十分大きく、身長150センチ以上ある。それが、今にも殺されそうな声で泣き叫び続けている。その恐慌状態は、水木の記憶から南方での発狂者を思い出させた。
土曜日なのに登校?いや、この時間は下校か。
などと呑気に水木が目の前の光景に呆気にとられていると、突如としてそれは起こった。
「いやああああああああ!」
あっと思う間もなく、男児が母親と思しき方の女性の頭を握り拳で殴った。まともにこめかみに食らった母親は気絶したらしく、崩れ落ちる。それをランドセルを放り出した黒ネクタイの男(おそらく教師)が慌てて支えた。その間に、男児は反対側にいたチノパンにジャージという間違いなく教師であろう女性の脇腹を蹴り上げた。
「いやだああああああああ!」
と泣き叫びながら。
水木は0.3秒で買い物袋を地面に置き、2秒で泣きわめき暴れる男児に近づき、3秒で制圧した。男児の両腕をつかみ上げ、真正面から見据えて
「男と生まれてご婦人に手を上げるとは何事かっ!」
と、大正生まれの元を正せばそこそこ良いとこのボン、しかも兵隊上がりの地が出る言い回しで男児を叱りつけていた。
イヤアアアアアアと悲鳴が上がった。
「おこるうううううう!こわいいいいいい!」
顔から出る物を全部出しながら男児は、両足で水木を蹴り上げてくる。弁慶の泣き所に1発食らいそうになって、水木は男児の両手首を掴んだまま器用に距離を取った。
「おこるぅぅぅ!おこるぅぅぅ!いやだああああああああ!」
敵も然る者、今度は唾を水木の顔に吐きかけてくる。水木は、思わず手を離した。
「こわいよおおおおおお!」
車が走っている車道に飛び出そうとするのである。水木は瞬時に男児の背中に飛びつき、羽交い締めにすると、
「よっ」
と気合いを入れて腰を落とした。アスファルトに尻餅をつくような格好になり、ビチビチ陸に上がった魚のように暴れる男児の両手両足に自身の手足を絡めて、今度こそ制圧した。
「ぎいいいやああああああ!」
「いいですから離してください!」
水木の腕に、母親がすがった。「しかし、」と水木が何か言うより先に
「いいから!大丈夫です!」
言いながら、未だビチビチと暴れる男児を押さえる水木の手を引き剥がそうとしている。水木が力を緩めると、
「わあああああん!」
「加澄くん!」
ひしと抱き合う母子の姿に、水木はなんだか自分が加害者になったような気分でその場を立ち去った。黒ネクタイの若い男性教師だけが、深く頭を下げて水木を見送ってくれた。