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近畿のセンバツ出場校にまつわる不思議! 「大阪枠」はなくなったけど、まだ残る「もう一つの謎」とは?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
波紋を広げる大阪勢不在のセンバツ。しかし近畿にはまだ一つ、謎がある(筆者撮影)

 衝撃の「98年ぶり大阪勢センバツゼロ」の発表から、10日近くが経った。センバツに深く関わる身からすれば、一抹の寂しさを禁じ得ない。ただ、発表直後の反応は概ね好意的で、「いい選考だった」という見方が予想以上に多かった。よく言われた「大阪枠」を否定した選考に、時代の流れを感じたファンが多かった証ではないかと思う。

23年前の近畿大会で大阪3校全滅

 そもそも「大阪枠」の存在が言われたのは、22年前のこと。前年の秋、近畿大会で大阪3校が全て初戦で敗退した。今回の大阪勢よりも状況は悪い。前年の春に、近畿の一般枠が「7」から「6」に減ったこともあり、当時は大阪ゼロの可能性が極めて高いとみられていたし、筆者も客観的に見て、4強プラス準々決勝敗退から2校浮上とてっきり思い込んでいた。当時の選考過程を振り返ると、平安(現龍谷大平安=京都)、智弁和歌山斑鳩(現法隆寺国際=奈良)、東洋大姫路(兵庫)が文句なく決定。そして準々決勝敗退校から、戦力が充実している近江(滋賀)が抜け出し、残る1校を、近畿大会で1勝している南部(和歌山)、育英(兵庫)、箕島(和歌山)と、近畿大会初戦敗退ながら大阪1位の近大付が争う形となった。

謎の「センター返し枠」

 結果的に選ばれたのが近大付で、「センター返しのできる粘り強い打撃」などと訳の分からない選出理由だったため、「センター返し枠」などと揶揄されたものだ。筆者も近畿大会はしっかり取材していたので、南部が有利だろうとみていたし、大阪勢は補欠すら危ういと思っていた。この選考ならつまるところ、「センバツに大阪勢は外せない」と言っているようなものだ。センバツはそもそも、夏の選手権に対抗する形で大阪毎日新聞社(大毎)が始めた招待試合。真の地元は、甲子園が存在する兵庫ではなく、大阪になる。それならいっそのこと、「大阪のチームをどうしても出したい」と言い切った方がよっぽどファンも納得するのにな、と感じていた。しかし後々のことを考えると、そう言ってしまえば、「大阪枠」の存在を肯定することになる。今回の選考で、「大阪枠」の存在が否定され、今後の選考もしやすくなったという意味では、歴史的な英断だったと思っている。

近畿から途切れることなく公立が選ばれる

 さて近畿には、もう一つ「謎の法則」がある。それは、必ず公立校が選ばれている、ということだ。こちらは、98年前に空白がある「大阪枠」と違って、大正13(1924)年の第1回大会から途切れることなく続いている。センバツの歴史を振り返れば、近畿勢は長く、概ね7校選出という優遇を受けてきた。しかし昨今の全国的な強豪私学全盛は、近畿とて例外ではなく、むしろ相対的には、全ての府県で強豪私学の独走状態となっている。今年までの97回の近畿出場校で、一般枠に公立が入らなかったのは6校枠が定着した平成14(2002)年以降の24年間で、3例ある。

3度のピンチで和歌山の名門が救う

 ではその3度のピンチを、どのようにして逃れてきたのか。答えは「21世紀枠」での公立の選出である。平成22(2010)年は向陽、平成26(2014)年は海南、平成27(2015)年が桐蔭と、奇しくも戦前から活躍する和歌山の名門校によって、「近畿公立枠」は死守されてきたのである。実は筆者も、海南と桐蔭が続けて選ばれたあたりから、この謎を意識するようになった。実際に調べてみて驚いた次第なのだが、大阪枠とともに長くファンの間では近畿のセンバツ2大不思議とされてきた。

「神宮枠」で救われた例も

 これを予断として近畿大会を見るようになると、それ以降もピンチと感じることはあった。平成29(2017)年には、当落線上にあった高田商(奈良)が、履正社(大阪)の持ち帰った「神宮枠」で7枠目に滑り込み、一昨年には(兵庫)が、これまた大阪桐蔭による神宮枠で救われた。もっとも神宮枠は一般枠に相当するため、秋の段階で枠数が「6」から「7」に増えていた。ここ2年は公立が選出安全圏に入っていて、雑念を振り払っているが、この枠の継続も、甚だ怪しいものだと思っている。ちなみにこの24年間で最も出場している近畿の公立は、今回も選ばれた市和歌山の6回で、明石商(兵庫)と北大津(滋賀)が3回で続いている。

「選考ガイドライン」でより明確、客観的に

 全員が納得する選考などあり得ない。ただ今回は、とかく話題に上ることが多い近畿の選考で、画期的な選出があったことに安堵した全国のファンも多かったと思う。数年前までセンバツは、主催者の意向が選出に反映されがちだった。招待試合だから致し方ない部分もある。それが3年前の聖隷クリストファー(静岡)の不可解な落選を機に、「選考ガイドライン」を作成し、より明確で客観的な説明を心掛けるようになった。そこには「センター返し」などの入り込む余地はない。今回、一つの大きな謎を解消したことで、実力、実績重視という一定の方向性が示されたのではないか。3年後には節目の100回センバツが待っている。

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毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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