国は速やかに文書を開示し真相を明らかにすべきだ。
森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんを苦に自殺した元近畿財務局職員、赤木俊夫さんの妻が、財務省から大阪地検特捜部に提出された関連文書について、不開示とした同省の決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で大阪高裁は、決定は違法との判断を下した。
一審の大阪地裁判決は請求を棄却したが、妻の逆転勝訴となった。判決が確定すれば、財務省は改めて開示か不開示かを判断するとみられる。財務省は上告することなく文書を開示すべきだ。
問題の発端は、学校法人「森友学園」に、国有地が大幅に値引きされ売却されたことだ。小学校の名誉校長には一時、安倍晋三元首相の妻昭恵氏が就任していたが、安倍元首相は国会で「私や妻が関係していたなら首相も国会議員も辞める」と答弁した。
当時の同省理財局長だった佐川宣寿氏が「このままでは外に出せない」と改ざんの方向性を決め、昭恵氏や政治家が関わる記述を削除するなど14件の文書改ざんが明らかになっている。
今回の訴訟は、赤木さんの妻が2021年、特捜部に提出した関連文書を開示するよう求めたのに対し、財務省は存否を明らかにせず不開示を決定。妻側は決定取り消しを求めて提訴した。一審の大阪地裁判決は、関連文書の存否を回答し開示すると、特捜部の捜査手法や対象が推知され、罪証隠滅が容易となるなどとして請求を棄却した。
しかし、控訴審の判決理由では、文書改ざん事件が不起訴とされ捜査が終結しており「捜査に支障を及ぼす恐れがあるとはいえない」と指摘。将来の捜査にも支障があるとは認められないとし、不開示決定は「情報公開法の要件を欠いた違法なもの」と結論付けている。
常識的かつ、妥当な判決だろう。公文書は国民の財産であり公開が原則だ。情報公開法の第8条では「存否を答えるだけで不開示情報の開示になるときは、行政機関は存否を明らかにせずに拒否することができる」と定めている。
この規定が乱用されれば、国民の知る権利が脅かされることになる。今回の判決は、規定適用は例外的な取り扱いであることを示したものだ。行政機関には、公文書が原則公開すべきものと改めて認識してもらいたい。
改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」では「佐川局長から国会答弁を踏まえた修正を行うよう指示」などと、佐川氏の指示をうかがわせる内容が記されていたが、黒塗り部分もあり、詳細な指示系統などは未解明だ。
森友学園問題の背景には、官僚による安倍元首相への忖度(そんたく)があったのではないか。公文書が改ざんされたものの、その責任は不透明なままだ。文書を開示し、その全容解明を強く求めたい。