12月14日:大惨事西遊記
あけましておめでとうございます
個人的リスペクトな作品が年末に怒涛の更新をしているのを見てせめて自分も……と頑張ってはいたのですが2020年が中々離してくれなかったので新年になってしまいました
今後ともよろしくお願いします
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話が進まないならもはや解決策は一つしかない。無駄話をしてもいいから身体を動かせ、そういうことだ。
そんなわけで俺達は妙に静かな樹海を妙にすんなりと抜けて、砂漠へと足を踏み入れていた……時間は深夜二時、まだ昼みたいなところあるよね。
「んー……あ、そうだ。俺ちょっと寄り道したいんだけど」
「テメェ自分で言ったことも忘れてんのか?」
俺は過去に囚われない男なので。
「出発前に「寄り道は無しだ」とか言ってたよねぇ……」
「これとこれとこれの素材補充なんだけど」
「サンラクさん……何日周回します? 二徹行けます」
彼の人となりをそこまで詳しく知らない俺、ディプスロ、サバイバアルもそろそろこのカローシスUQという人物が「ヤバい」という事に気づきつつあるのだが、その上で俺達の中で一番生き生きとしている彼にそれを指摘する勇気を持つ者はここにはいなかった……あのディプスロでさえも、だ。
こいつは……きっと、社畜であることがある種の制御装置だったのだ。ごくごく稀に存在する「ゲームのためにどこまでもリアルの自分を削れるタイプ」……奇しくも、αサーバーのあいつのように。
俺が見せた蜘蛛、百足、蠍の武具を見て迷わずそう答えたカローシスUQの異様なオーラになんとか呑まれないように気を引き締めつつ、話を続ける。
「いやまぁ、丁度キャッツェリアへのルート上にあるから……それに」
「それに?」
「サバイバアル、お前ならきっと気にいると思うぜ?」
ちと毒の濃度と爆風が激し過ぎるが……あそこの風は孤島にちょっと似ているから。
……
…………
………………
砂漠地帯は兎にも角にも広い。というか樹海もそうだが、マップなしで適当に走り続けるとマジで方向感覚がバグる。
この現代社会に生きる俺達がまさか星や月を見て方向を推し量る事になるとは……でもある程度シャンフロやってる奴ならこれ必須技能なんだって、カローシスが言ってた。
というわけでどうせ二日、三日はシャンフロに人生捧げられる面子を集めたわけで多少の「物資補給」もよかろうと早速寄り道する事にした俺達は、その為にも砂漠を越えなきゃならんわけだが……
「いや見てくれよサンラク……この、この分かる? このセルフ変形機構。地上活動性能削ったけどまさしく戦闘機と言っていい鋭角にして流線型のカスタマイズ……」
「変形的に本体は土下座しながら飛ぶ事になるのでは?」
「背泳ぎとの二択だったんだ」
樹海と違い、遮蔽物の少ないこの場所ならばとヤシロバードがインベントリア……もといその廉価版であるチェストリアから取り出したのは戦術機だった。タイプは三角ボディ、ルストじゃあるまいしこいつは銃に興味はあってもロボには興味はないと思っていたが……この様子を見るにまぁ人並みの興味はあったということか。
ただでさえ特徴的なフォルムをしたピラミッドメンをさらにカスタマイズした姿は……なんだろう、雪除けの蓑みたいなごちゃごちゃっぷりだ。
基本的にタイプメンは人間と合体してる際はパワードスーツのように振る舞うので変形とかはしないのだが、それに似たようなことは出来る。例えば手足を折り畳んで飛行能力に特化した形状になる、とかな。
「流石に無尽蔵に飛ぶのは無理だけど結構な距離を稼げるね。そして何よりこの形態でも銃が搭載できる。アドバイスを参考にした長距離移動の輸送ロボってわけさ」
次にカローシスUQ。
グォングォンと物騒な音を立てて……バイクのエンジンを蒸している。それもアレだ、ヒロイックな感じじゃなくてクッソゴツい背もたれがあるタイプのバイク。あれを無理やりサイバーパンクにした感じというか、十中八九リヴァイアサン製なんだろう……バハムートコンテンツは「ライセンス」の有無でできることの幅が天地ほど変わってくる。
それは逆に言えば、ライセンスを片っ端から獲得すれば大抵のことが可能になる、ということだ。
「ビークルライセンスを上げて作ったんだ、樹海には向いてないけどこういう広々としたフィールドがあるなら作って損はないからね」
「ビークルライセンス」
「まぁ、自動車免許みたいなものですよ。一徹すれば余裕です」
「徹夜を通貨が何かと勘違いしておられない?」
で、次。ディープスローター。
奴の実現杖ザ・デザイアーは非攻撃魔法の出力を倍々計算で拡大することができる。つまり、浮くことだけをあの背中から生えた三本目の腕に持たせた小杖に任せ、両手で持った実現杖で空中での推進力を担ったならば。
「サンラクくぅん……」
「なんだよ」
「いやぁ……もしかしたら最大速度の称号を貰っちゃうかもしれないって考えたらなんだか申し訳なくてねぇ……ねぇ?」
ほぉん?
「いいねディープスローター、挑発目的なら100点満点だぜ」
「勝ったらご褒美は?」
「今ので100点減点、赤点です」
「イエス! 二人っきりの補習! 何も起きないはずもなく!!」
「根性焼き」
「不良な君も素敵!!」
今そのネタはタイムリーで腹が立ったのでいつもより多めに焼いておこう。
さて………各々が砂漠を渡るべく、用意をしてきた。「なあ」この面々ならば砂漠を越えることは容易。目指すはキャッツェリア、猫の王国! 「なあオイ」 まだ見ぬフラグと見えてるフラグを軒並みへし折り、その果てに俺は……いや、俺達はあのクソ蛇を「いやあのだな」凹ます! ウィンプも頑張ってるわけだしな……俺もちっとは必死に頑張らなきゃあな!!
「なぁ! 俺ぁどうすりゃいいんだろうなぁ!!」
「「「「…………」」」」
兎と亀の徒競走において、兎が敗北した理由は慢心に他ならない。不夜なる我々は眠らない兎、残念ながらゼノン式理不尽ターン制徒競走ルールも導入していないので亀が兎に勝つことは有り得ない……つまり。
「まぁ安心しろって、そこら辺はちゃんと考えてあるさ」
「おう、聞くぜ」
「まずこの縄をヤシロバードに括り付けます」
「快適な空の旅をお楽しみくださいってね」
「おう」
「そしてもう一本の縄をカローシスUQに括り付けます」
「素敵な陸の旅をお楽しみください、でいいのかな?」
「……おう?」
「で、この二本の縄をサバイバアルのそれぞれ両手首と両足首に括り付けます」
図式で説明すると……こういう感じだな。
「なぁ……なんで二本括り付けるんだよ?」
「片方に負担を寄せると事故の確率が上がるからな、それに何より……」
「このロボ」
「このバイク」
「「1人乗りなんだ」」
「クソがぁっ!!」
ぶんぶんコマって知ってます?厚紙で作った円盤に糸通して両手で糸持って回すアレ
そう、アレです。頑張れサバイバアル!