プロローグ:叫べ我が名は
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戦士が二人、対峙している。
戦士達は互いに相手を見ていた。
戦士達は互いに同じものを見ていた。
戦士達はそれぞれが違う思いを抱いていた。
戦いの根源などその程度、どれ程に平和を謳い志したところで……私がいて、貴方がいて、それ以外がいる限り、意見は食い違い、争いは起きる。
ただ一つ、違う点があるとするなら……二人は、互いに相手の主張に理解を示した上で、それでも譲れない主張のために戦っているということだ。
「……………」
片や一切の肌の露出をなくす鎧を纏い、身の丈程ある巨大なメイスを構える重厚なる漆黒の鎧騎士。
「……………」
片や身体の半分以上を外気に晒した半裸ながらもその身に竜骨を纏い、劫火漲る剣を構える異形の骸戦士。
「意見を変える気は無いのかよ、戦友よ……」
「……生憎だが、こればかりは……無い!」
最後通牒の突きつけ合い。あるいは親友になれたかもしれない二人は、痛いほどにわかる共感をそれでも押さえつけて、己の得物を構え直す。
その様子を固唾を飲んで見守る観戦者達がどよめく。
幾度となく行われてきた激突の中、二人の戦士の偉業を誇示するかのように現れる影。
それが今この瞬間、己こそがより困難で偉大な試練であったのだと敵手の背後にゆらめく幻影に吠える。
片や肉体の詳細が分からないほどに黒い体躯を持ち、生物が持つ機能美と言うにはあまりにつるりとし過ぎた……例えるなら道具を使って一寸の狂いもない直線、曲線がそのまま生物として動いているかのような流線形のフォルムを持つ異形にして四足の竜が巨躯を捻ってあり得ないほどに巨大な翼を広げる。
片や肉体の殆どが刃、凶器、武の装い。ただ生まれ落ちるだけでは決して叶わぬ筈の「鍛」と「研」を生まれながらにして備えた摂理の異形とでも言うべき、凶刃にして強靭なる二足の竜が轟々と燃え盛る焔の中に幻影として立ち刃の鱗を逆立たせる。
「俺が勝ったならば……協力してもらうぞ、同胞!」
「負けても恨みっこ無しだ、未練を捨てる準備をしておけ……戦友!」
因縁は決着によってのみ、終わる。ただ一人の女性を巡り、二人の戦士はぶつかり合う。その魂にかけて……叫ぶその名は、
「竜魂解禁……」
「真説解炎……」
大いなる竜の、真なる名前。
「───【ガリバー】!!」
「───【トマホーク】!!」
なんとシャングリラ・フロンティアの話なんですよこれ