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The Works "好きなのは" is tagged "原神" and "ゼン蛍".
好きなのは/Novel by warabi

好きなのは

1,764 character(s)3 mins

ひたすらキスをするゼン蛍が書きたくてできたお話です。アルハイゼンは行動派の人かなと思っています。楽しんでいただけたら嬉しいです。

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 アルハイゼンはキスが好きだ。事実かどうかは差し置いて、旅人はそう思っている。
 「アル、ん……」
 今だって、自分の家を訪れたのが旅人だと分かった途端、部屋に籠って図面に向かっていたカーヴェを家から放り出して旅人を自分の腕の中に閉じ込めた。何かに急かされるように口づけた彼の舌が、彼女を確かめるようにその唇をなぞる。
 「ちょ、んん」
 ちょっと待って、という制止の言葉は最後まで言えなかった。開かれた口にするりと侵入してきたそれが、咄嗟のことに怯えるように奥に行った旅人の舌を追いかける。何事にも表情を変えることのない男の舌が自分のものよりも熱いと知ったのは、男の告白を受け入れたその日だった。
 抵抗するように胸を押せば、より一層強く抱き込まれた。逃げる小さな舌が大きなそれに絡めとられて、その熱を移すように互いを擦り合わせる。
 「ん、ん……」
 キスの合間に漏れる自分の吐息が、旅人はあまり得意ではなかった。それを聞いてしまえば、アルハイゼンのキスに自分が反応していると、冷静ではいられないのだと、自分で自分が分かってしまう。
 ―どうして?
 目の前の男は自分にこんなにも熱くキスをしかけてきているのに、自分の口内を探る舌も自分の手を上から握りこんだ手も熱いのに、時折開いた視界で見えるアルハイゼンの瞳はいつもと変わらないように見える。
 限界を感じて胸を叩けば、アルハイゼンの眉間にしわが寄って、如何にも不承不承とでも言いたげに唇が離れた。互いの舌を繋いだ銀糸が、ふつりと切れて旅人の身体から力が抜ける。
 「……は、」
 くて、と言うことを聞かない身体をアルハイゼンに預ければ、ちょうど胸元に頭が当たる。はたと気づいて彼の心音を聞こうと擦り寄った途端、筋肉質な腕に軽々と抱き上げられた。
 「きゃ」
 アルハイゼンは何も言わないまま、リビングルームのソファに彼女を抱き下ろした。少し不満を言おうと旅人が顔を上げれば、間髪をいれずに男のキスが額に落とされる。瞼に、頬に、鼻先に、時折耳に。宥めるように、誘うように贈られるキスに、旅人がふふ、と笑った。
 「アルハイゼンってキスするの好きだよね」
 楽しそうに言った彼女の言葉に、アルハイゼンの動きがぴた、と止まった。じっと無言でこちらを見つめている男に、旅人が首を傾げる。
 「どうしたの?」
 「……そう理解されていたとは想定外だった」
 ソファに座る旅人に覆いかぶさるようにしていたアルハイゼンが、そう言って彼女の隣に腰を下ろした。自分を見つめる翡翠と鳶色の瞳は、何か興味深いことを見つけたときと同じ光を宿している。
 「君は何故そう理解した?」
 「え?だってアルハイゼンはいつも私にキスをするから」
 「恋人同士の触れ合いとして、特に珍しいことではないだろう」
 「そうなの?」
 「俺の初恋は君だ。比較ができない以上、俺にとってはこれが普通だ」
 「でも街で見かける人たちは往来でキスしないよ」
 「……誤解を招くような表現はすべきではない」
 「でも伝わったでしょ」
 腕を組んだ旅人の言い分は、正しいが正しくない。彼女が指摘したいのは、いわゆる“おでかけデート”に対するアルハイゼンの態度のことだ。「たまには一緒にカフェにでも行こう」と言う彼女の提案を、男は断り続けてきた。理由は必ずいつも同じだ。
 「俺はいつでもキスがしたいとは言ったが」
 不満そうにする少女の頬に手を添えれば、旅人がそっとそれに擦り寄った。この愛らしい仕草は、そしてどこか期待するように黄金色の瞳がこちらを見つめるのは、おそらく彼女の無意識の行動なのだ。共にいる間はそれを何度でも見たくて、それでも誰にも見せたくなくて、アルハイゼンが旅人に何度もキスをしていることに、彼女は全く気付いていない。
 「俺はキスが好きなわけではない」
 重ねるだけのキスをして顔を離せば、「足りない」とでも言うように彼女の瞳が揺れる。
 ―好きなのはどちらなのか。
 言うつもりは毛頭ない。旅人が自分を求めている、その事実は自分だけが知っていればいい。
 「本当に?」
 「うん。強いて言えば、君とのキスを好んでいるだけだ」
 男の言葉に目を見開いた少女に小さく笑って、アルハイゼンは唇を重ねた。

Comments

  • 夜流
    3:20 PM
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