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新潟県労働委員会(会長 櫻井英喜)は、令和4年(不)第2号国立大学法人新潟大学事件について、申立人の請求の一部を認容し、その余の請求を棄却する一部救済命令を発し、命令書(別紙添付資料)を当事者に交付しました。
(1) 申 立 人 新潟大学職員組合
(2) 被申立人 国立大学法人新潟大学(法人番号:3110005001789)
被申立人C学系(B学部担当)の任期制教員であったA(以下「A教員」という。)は、学生からの要望等による授業停止措置を被申立人から受けた後、再任審査、再任再審査を経て再任を拒否され、雇止めとなった。再任審査、再任再審査の途上、A教員は申立人に加入し、申立人は、A教員の処遇について被申立人と団体交渉を行った。
申立人は、団体交渉における申立人の求めに対する被申立人の(1)から(5)の対応が不誠実であり、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、新潟県労働委員会に対し救済を申し立てた。
(1) 令和元年7月17日に学生がB学部長に提出した要望書(以下「本件要望書」という。)を提示しなかったこと。
(2) A教員の再任審査及び再任再審査に供された資料一式(以下「再任審査・再審査の資料」という。)を提示しなかったこと。
(3) 申立人が被申立人に提出した令和3年9月28日付け意見書に対し、その回答として、第3回団体交渉において被申立人のB学部長が手元に準備し読み上げたメモ(以下「本件読み上げメモ」という。)を提示しなかったこと。
(4) 第3回団体交渉においてB学部長が、A教員の授業停止措置について説明を行った際に言及した「複数の学生(以下「当該学生」という。)」の人数を説明しなかったこと。
(5) 当該学生の氏名を説明しなかったこと。
(1) 被申立人は、申立人が提示を求めているA組合員に関する以下の資料について、可能な限り提示することとし、これに応じられないものについては、その理由を具体的に説明し、提示に代わる措置を検討するなどして、誠実に団体交渉を行わなければならない。
ア 本件要望書
イ 再任審査・再審査の資料
(2) 被申立人は当該学生の人数を、申立人に明示しなければならない。
(3) 申立人のその余の申立ては棄却する。
(1) 本件要望書について
被申立人は、本件要望書の提示を求める申立人の主張に対し、自らの主張や反論を十分に述べず、提示に応じられない理由を具体的に説明しなかった点で、合意達成の可能性を模索する義務を怠っており、被申立人の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(2) 再任審査・再審査の資料について
被申立人は、再任審査・再審査の資料の提示を拒否する理由について、単に一般論を述べるにとどめ、合意達成の可能性を模索する義務を怠っていることから、誠実交渉義務を果たしたと評価するには足りず、被申立人の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(3) 本件読み上げメモについて
申立人は、被申立人のメモが発言の原稿のような形で存在していたとの推測に基づき、その提示を求めたものの、その主張は合理的とは言い難い。また、団体交渉における発話の聞き取りが困難であるとする申立人の訴えに対しても、被申立人は誠実に対応している。
以上のことから、本件読み上げメモを提示しなかった被申立人の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
(4) 当該学生の人数について
当該学生の人数を明らかにするよう求める申立人に対し、学生の特定につながることを理由に応じられないとする被申立人の説明は具体性に乏しく、学生数を明らかにすることにより生じる影響も明らかでないため、被申立人の主張には理由がない。
被申立人の対応は、団体交渉における発言の具体的根拠となる情報について、正当な理由なく説明を拒んだものであり、合意達成の可能性を模索する義務を怠っていることから、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(5) 当該学生の氏名について
使用者が負う誠実交渉義務とは、労働組合の要求や主張に対して、誠実に対応する義務である。申立人が当該学生の氏名の開示を被申立人に要求した事実がない以上、これに対し被申立人は具体的義務を負うとは認められない。
以上のことから、申立人の主張には理由がなく、被申立人が当該学生の氏名を開示しなかったことは労組法第7条第2号の不当労働行為には該当しない。
(1) 申立年月日 令和4年6月6日(令和4年(不)第2号)
(2) 審査委員 審査委員長 岩渕 浩
審査委員 目黒 千早
(3) 参与委員 労働者側委員 橋本 義明、飛田 博之
使用者側委員 徳武 裕一、小出 清
(4) 審査概要 委員調査12回、審問2回
(5) 結審日 令和6年10月21日
(6) 公益委員会議 合議6回
(7) 判定日 令和7年1月23日
(8) 命令書交付日 令和7年1月31日
労働委員会とは、労働組合と使用者との間で発生した問題の解決にあたる行政委員会であり、労働組合法に基づいて国(中央労働委員会)と各都道府県に設けられています。
労使間の問題は、当事者の話合い(団体交渉)による自主解決が原則です。しかし、自主解決が困難な場合、その労使間の争いを解決するため、労働委員会が争議の調整や不当労働行為の審査などを行います。
また、労働組合と使用者との間の問題に加え、労働者個人と事業主との間の問題を取り扱う個別労働関係紛争のあっせんも行っています。
労働組合法第7条は、労働組合の自主性とその活動を侵害する使用者の行為を不当労働行為として禁止しています。(労働組合員への不利益取扱い、労働組合との団体交渉の拒否、労働組合への支配介入等)
使用者が不当労働行為を行ったと思われる場合、労働組合または労働者は、労働委員会に対して救済を申し立てることができます。
救済申立てを受けた労働委員会は、使用者の行為が不当労働行為に当たるかどうかを審査します。
(不当労働行為)
第7条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
(1) (略)
(2) 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
(3) (略)
(4) (略)
新潟県労働委員会事務局
〒 950-8570 新潟市中央区新光町4番地1
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ファクシミリ: 025-280-5514
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