道順の説明と三角形同士の合同の証明の類似点
さて、冒頭で例示した道順の説明は、いくつかの内容が次々と加わってくるのが普通である。
たとえば、「改札口は2つあるので、東京方面寄りの改札口を出てください。改札を出たら改札を背にして左に向かう道に入ってください。その道を150メートルぐらい進むと左にファミリーレストランAがある。その店内でコーヒーを飲みながら待っています」、等々。
上の説明法の要点は、一意性が次々と加わって説明が進む。だから、最後の部分も一意的に定まるのである。
中学数学で学ぶ「三角形同士の合同」に関しても、これと本質的には同じ説明法である(拙著『新体系・中学数学の教科書(上)』を参照)。
「1辺とその両端の角が定まる三角形はただ一つだけある」ことを示そう。それによって、合同条件「1辺とその両端の角がそれぞれ等しい」の説明は完成したことになる。
いま図のように、
BC=a、角B=イ、角C=ウ
となる三角形ABCがあるとする。(この段階では、ただ1つの三角形に定まるかは分からない)
このとき、線分BCを固定して考えると、角ABC=イとなる半直線BAは、線分BCに対して角度イを時計の針と反対方向にとるので、その半直線はただ1つに定まる。もちろん、この段階ではAの位置は定まらない。さらに、角ACB=ウとなる半直線CAは、線分BCに対して角度ウを時計の針と同じ方向にとるので、Aは両方の半直線の交点として1つに定まる。それゆえ、Aは線分BCに対してただ1つの位置として定まるのである。
符号理論の「誤り訂正」という方法!
最後に、現在の情報化社会で非常に重要な符号理論の世界の話題を一つ紹介しよう(昔出版した何冊かの書からの引用)。
情報・通信時代において符号理論はきわめて重要である。それは、人為的なミスばかりでなく、太陽の黒点の影響で通信路に雑音が入るような自然現象もあることから、符号理論の応援なしに情報を100%正確にそのまま伝達することは不可能である。
それゆえ情報伝達の段階で誤りが生じたときに、誤りがあることを認識したり、誤りを修正したりする符号が必要になる。
前者の要求に応える符号が「誤り検出符号」で、後者の要求に応える符号が「誤り訂正符号」である。ちなみに、ほとんどの商品に付いている13桁のバーコードは誤り検出符号である。
誤り訂正符号においては、送られた情報の誤りを修正することを「復号」といい、いくつまでの誤りならば必ず復号できるのかという最大数を「誤り修正能力」という。
一昔前であるが、火星探査機などからデジタル画像を地球に送るときには、誤り修正能力が7とか8の符号を使っていた。