日常の中にある一意性が必要な場面
今回は「一意性(唯一通り)」という言葉について取り上げよう。
たとえば他人に道案内するときは、この言葉を意識することが大切である。「駅に着いたら改札口を出てください。待っています」と伝えるときは、改札口が1つでなければならない。「その一本道を真っ直ぐ歩いてきてください。待っています」と伝えるときは、向きと距離を伝えなければ1つにならない。
前回の記事「数学にとって方程式とはなにか」(1月15日)では、筆者の出前授業で人気の「誕生日当てクイズ」を取り上げた。
「生まれた日(の数)を10倍して、それに生まれた月(の数)を加えてください。その結果を2倍したものに生まれた月(の数)を加えると、いくつになりますか」という質問をして、その答えから誕生日を当てるものである。その部分の詳しい解説は前回の記事を参照していただきたい。
これは、たった1つの計算式の1つの答えから、誕生日の「月」と「日」の2つを正確に当てるところが面白いのである。ちなみに前回の記事では述べなかったが、単に「月」と「日」の一意性だけの説明ならば、以下のように述べることができる。数学として分かりにくいと思われる場合は、この部分は読み飛ばしていただきたい。
x月y日生まれの人とa月b日生まれの人がいて、誕生日当てクイズの答えが一致するならば、
(y×10+x)×2+x=(b×10+a)×2+a
が成り立つ。そこで、以下が導かれる。
x×3+y×20=a×3+b×20
(x-a)×3=(b-y)×20
上式において、右辺は20の倍数である。そこで、左辺は20の倍数になり、3と20は互いに素(共通の素因数はない)なので、x-aが20の倍数になる。xとaはどちらも1以上12以下の整数なので、x-aが20の倍数ということは、xとaは等しくならざるを得ない。そこで、bとyも等しくなる。