大河ドラマ「光る君へ」

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をしへて! 佐多芳彦さん ~細やかに再現した平安時代の「曲水の宴」

寛弘4年(1007)3月3日~3月4日の2日間にわたり、藤原道長が主催して土御門殿で行われた「曲水(ごくすい)の宴(えん)」。大河ドラマ「光る君へ」で風俗考証を担当する佐多芳彦さんに、スタジオに再現された「曲水の宴」のセットなどについて伺いました。

――藤原道長が主催した「曲水の宴」の会場には、どのような特徴があるのでしょうか?

平安時代の貴族邸宅である寝殿造では、敷地の南北を通る中心軸上に主屋となる寝殿が南向きに建てられ、その東西あるいは北に対(たい)と呼ばれる副屋が設けられています。そして、南庭には大きな池があり、左右対称となるような構造をしているのが特徴です。藤原道長が主宰した「曲水の宴」については道長の日記『御堂関白記』にその様子が細かく記録されており、寝殿と東対(ひがしのたい)とをつなぐ東渡殿(ひがしのわたどの)のところから流れてくる川を使って催されたことがわかっています。そこで、スタジオ内に収まるように要素をギュッと凝縮し、「曲水の宴」が催された土御門殿の東側の区画を再現しました。

――道長が座っている場所は、どこになるのでしょうか?

この写真の下手(しもて/写真の左側)にある建物は寝殿です。上手(かみて/写真の右側)にある渡り廊下(ろうか)は東渡殿で、その先にある東対とつながっています。

道長はこの屋敷の中心である寝殿の東廂(ひがしびさし)に座り、主催者として、公卿(くぎょう)や殿上人(てんじょうびと)たちが漢詩を詠んだり、このひと時を楽しんでいる様子を眺めているという感じです。

――川の周りに漢詩を詠む人の席が設けられているのですね。

『御堂関白記』に「東渡殿の所から流れてくる川の東西に、草墪(そうとん)と硯台(けんだい)を立てた」と記されており、これを再現しています。

草墪というのは、藁(わら)などを芯にして作られた円筒形の腰掛けのことです。和歌会の場合は、地面に敷かれて円座などの敷物に座って和歌を詠むのですが、漢詩会の場合は、草墪に腰掛けて漢詩を詠みます。実は、漢詩会と和歌会とで室礼(しつらい)が異なるんです。寛弘4年に道長が主催した「曲水の宴」では漢詩会が開かれており、そのための室礼として、草墪が川の東西に硯台と共に建てられていたというわけですね。

そして、川の上流に公卿、下流に文人というように、川の流れに沿って立場に準じて座っています。ちなみに、スタジオの大きさや撮影の都合などにより、詠み手同士がわりと近い距離に座っていますけれども、実際には席の間隔はもう少し開いていたと思います。

――川の周りには元服前の少年がいますけれど、彼らは何をしているのでしょうか?

宴が滞りなく進行するように奉仕しています。例えば、曲水を流れてくる羽觴(うしょう)が途中で止まってしまった際には、手に持っている竹竿(たけざお)を使って羽觴を押し、羽觴を再び流れに乗せます。彼らにとっては、よい勉強の場ですよね。漢文学は当時の男性貴族にとって必須となる教養ですし、儀式を間近で見ることができますから。朝廷でよく行われることですが、元服前の貴族の子弟が宮中の作法を見習うため、特に許されて殿上(てんじょう)に奉仕することを「童殿上(わらわてんじょう)」といいます。道長とのコネクションの一環にもなるでしょうから、彼らはすごく真剣にこの場に臨んでいると思いますよ。

――東対には、見学の人たちがたくさんいるのですね。

そうです。これもいい写真ですね。この東対と川との関係性が、本当にすばらしいです。最新の各種研究の成果などを踏まえて作られており、距離感なども含めてかなりリアルだと思います。『御堂関白記』には「東対の南唐廂(みなみからびさし)に公卿と殿上人の座、南廊の下に文人の座を設けた」と記されており、本当であれば、お題を出したりしている文人たちはもっと南側、この写真であればもっと右側にいるのですけれど、そうしてしまうとスタジオ内にセットが収まらず、一画面でご紹介することもできなくなるため、今回は公卿、殿上人、文人のみなさんに、東対の廂にギュッと集まっていただいています。

そして、中宮彰子と共にまひろと赤染衛門がいる場所は、この東対の母屋(もや)になります。

 

――川の西側にはカラフルなテントのような建物も建てられ、その中で楽人が音楽を奏でていますね。

これは「楽屋(がくのや)」といって、現在使われている「楽屋(がくや)」の語源になります。現在の「楽屋(がくや)」は、出演する方々が準備をしたり休息をしたりする場所のことをいいますけれど、「楽屋(がくのや)」というのは、楽人たちが待機する場所であるとともに、演奏を行う場所でもありました。カラフルな色の組み合わせにも意味があり、これは朝廷が設定した楽屋であることを示す色の組み合わせの一つになります。

ちなみに、この「楽屋(がくのや)」で使用しているカラフルな幕は、2012年大河ドラマ「平清盛」の際に制作したもので、今回はこれを再利用しています。松山ケンイチさん演じる平清盛が白河法皇の前で舞うシーンが第2回「無頼の高平太」であり、実はそこで登場しているのですけれども、みなさんは覚えていらっしゃるでしょうか?
 

 

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