大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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をしへて! 佐多芳彦さん ~斎院の中将のもとへ! 塀を乗り越えた藤原惟規

警固をかいくぐり、塀を乗り越えてまで、恋人である斎院の中将(小坂菜緒)に会いにいった藤原惟規(高杉真宙)。大河ドラマ「光る君へ」で風俗考証を担当する佐多芳彦さんに、斎院などについて伺いました。

――藤原惟規が塀を乗り越えてまで斎院の中将に会いに行き、警固の人たちに捕まっていましたが、これはやはりとんでもない行動なのでしょうか?

斎院の中将は、斎院に仕える女房の一人です。彼女が仕える斎院とは、上下賀茂社に奉仕する未婚の皇女、もしくは王女であり、賀茂斎院ともいわれるのですが、このときの斎院は62代・村上天皇の第十皇女である選子内親王(のぶこないしんのう)です。選子内親王は、12歳のときから57年間にわたり斎院をつとめ、大斎院と称された人物になります。ちなみに、選子内親王の母は、藤原道長の父・兼家の同母姉である安子です。

上下賀茂社が建てられているのは、京都の北東になります。つまり、鬼門にあたる北東に鎮座し、都を厄災から守護する守り神のような神社が、上下賀茂社なんですね。そんな大事で神聖な場所に関係するところへ、惟規は警固をかいくぐって築地塀(ついじべい)を乗り越えて侵入しているわけですから、これはとんでもないことです。よく許されたと思いますね。

 

――惟規が侵入した場所は、どこになるのでしょうか?

遺跡の発見にまでは至っていないので場所の特定はできないんですけれども、京都市北区紫野に斎院が常住していた紫野斎院(むらさきのさいいん)があったといわれています。そしてその隣に、斎院の事務などをつかさどった斎院司(さいいんのつかさ)という役所があり、斎院の中将の父である源為理(みなもとのためまさ)はその長官を務めていましたので、惟規が侵入したのはおそらく斎院司であったと思います。

――惟規を捕らえた警固の人たちですが、大内裏内と比べると、装備がずいぶんと軽装のように思えるのですが。

この場は神様にお仕えする人たちの居場所になりますから、基本的に穢(けが)れを招くようなものは身に付けません。武器を一切所持することなく警固を行うのはさすがに厳しいので、太刀や腰刀を携帯してはいますが、朝廷において武装を整えるということは、弓を手に取ることを意味します。当時の人たちの認識では、武器の中では弓矢が一番怖いんですよ。例えば、京都の治安を守る検非違使(けびいし)は、都にいるときは太刀は持たず、装備するのは弓なんですね。やはり神様に仕える機関として、あからさまに武装をするのは神様に失礼であるという概念が、彼らに共有されていたのだと思います。

――ちなみに、そもそも惟規はどこで斎院の中将と出会ったのでしょうか?

それは、わかりません(苦笑)。斎院司は朝廷の出先機関の一つではあるので、惟規が朝廷の仕事を行う中で斎院司を訪れ、斎院の中将が目に留まったとか、あるいは、斎院の中将がどこかへ出かけた際に、たまたま惟規が居合わせたとか、可能性はいろいろとあるとは思いますが、記録が残っていませんのでわかりません。

 

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