57年前に発覚した食中毒「カネミ油症」の調査・研究を続けている全国油症治療研究班は25日、被害者の子どもや孫の救済につながる「診断基準」改定の可能性について議論する「再評価委員会」の設置について、専門家を集め検討を進める考えを示しました。
再評価委員会とは?
「再評価委員会」はカネミ油症の「診断基準」を見直すために、全国油症治療研究班が設置するものです。
研究班は25日、患者が参加する油症対策委員会で、2021年から進めている次世代調査でこれまでに集まった知見をもとに、診断基準の見直しが可能かを検討する「再評価委員会」を設置するかについて、発生学などの専門家らを含めた有識者で議論を進める考えを示しました。
全国油症治療研究班 中原剛士班長:
「患者の気持ちはわかる。しかし研究班の立場としては科学的にしっかり検証していくということを変えるわけにはいかない。そこをしっかり取り組んでいく」
小さな‟一歩”
調査開始から4年、次世代救済に向けて示された‟小さな一歩”に被害者からは「具体的なものが一つ見えた」と評価する声の一方、「次世代も高齢化している。救済を決断して欲しい」など焦りやいら立ちの声もあがっています。
カネミ油症認定患者 下田順子さん:
「もう少し進むかと思った…。次世代調査が認定基準見直しにまでなかなかうまくいかない。本当に私たちは早く救済を願っている。諦めたくない」
57年前の"食中毒" いまも続く被害
1968年に被害が広がっていることが発覚した「カネミ油症」は、市販の油に化学物質PCBが混入して起きた食中毒です。
PCBやPCBが熱変性したダイオキシン類を体内から完全に排出する方法は見つかっておらず、さらに胎盤や母乳を通して子どもに移行したケースが確認されています。
後退した「次世代調査」報告
厚労省が2021年にスタートさせた次世代調査には、これまでに認定患者の子や孫443人が調査票による聞き取りに参加、うち219人は油症検診にも参加しました。
調査を担う全国油症研究班は、油症次世代には「先天的な口唇・口蓋裂の発生率が高い傾向にある」「先天的な歯牙欠損を訴える人が多い」と報告し、次世代救済につなげられないか検討を進めてきました。
しかしこれらについて、25日の委員会では比較対象の設定困難などから、現時点で「油症との因果関係に言及することは難しい」との考えを示しました。
一方研究班は次世代独自の「診断基準」の必要性にも言及してきており、基準改定に向けた「再評価委員会」を設置するかについて議論していくとしています。
認定されない子の方が症状深刻
事件後に生まれた長女が2015年に認定され、他の2人の子どもは未認定となっている油症認定患者の森田安子さんは「認定されていない2人の子どもは長女よりも症状がひどい。認定された長女は最新の治療を受けて症状が改善し、人生に希望を持てるようになったと言っている。次世代が救済される認定基準を新たに作って1日も早く救ってほしい」と訴えました。
加害企業は「約束できない」
油症に認定されればPCB混入油を販売した原因企業のカネミ倉庫から、医療費の支給が受けられます。
油症対策委員会の翌日25日に福岡市で開かれた被害者、国、原因企業による三者協議で、カネミ倉庫は昨年度、認定患者983人に対し総額9千700万円あまりの医療費を支払ったと報告しました。
カネミ倉庫は「少しでもできることがあるならやっていきたい」とする一方、今後次世代を救済する認定基準が作られ認定患者が大幅に増えた場合「必ず医療費を支払えるか約束できないことは伝えておかなければならない」と発言しました。
カネミ倉庫は社長と経理部長がそれぞれ身体的、精神的な病気のため今回の三者協議を欠席しており、加害企業の経営という厳しさに人手不足や資材高騰などの影響も加わった経営状態の厳しさも伺える三者協議となりました。
PCB製造企業は?
2012年に施行されたカネミ油症被害者の救済法では「原因事業者の事業の継続が困難となることが明らかとなった場合には必要な措置が講ぜられる」とされています。
年一回カネミ倉庫に立ち入り調査し医療費の支払い状況を含め帳簿を確認している農水省は「支払いが困難になる状況は認められない」としています。
一方被害者団体はカネミ倉庫の経営状態が悪化し医療費の支払いが滞る可能性について「不安でしかない」「一番大きな問題だ」としています。
カネミ倉庫や被害者団体はPCBを製造・販売した企業にも被害者救済の枠組みに入るよう求めていますが、話し合いも実現していません。