自らの身を削りながらも、一族の再興と藤原道長(柄本佑)の没落を願い続けた藤原伊周。「光る君へ」における伊周の人生をどのように思うか、弟・隆家(竜星涼)、息子・道雅(福崎那由他)への思いなどについて、演じた三浦翔平さんに伺いました。
――藤原伊周を演じきった、今のお気持ちをお聞かせください。
楽しかったですし、やりきったなと思いますけど、疲れました。後半は特にボロボロになりながらひたすら呪詛(じゅそ)をしていたので、夜寝ていても呪詛の言葉が頭の中に浮かんだり、その力に引っ張られているのか体調があまりよくなかったりもして…。今は俳優としての達成感と、呪詛からの開放感が強いですけれど、とりあえずおはらいには行きたいです。もちろん、道長にゆかりのないところへ(笑)。
――改めて、「光る君へ」で描かれた藤原伊周は、どのような人物だったと感じていますか。
「もったいない男だったな」と思います。確かに最初は親の力で成り上がったところはあるけれども、一歩進む道が違っていたら、一つ自分のプライドを我慢できたら、何か一つポイントが変わっていれば、最後まで良い地位にいることができた人間だったように思うんですよ。でも、そんなことはできないのが伊周だったと思うので、なんだか切ない男でした。
弟の隆家は恨みの逃がし方が器用だと思いますけれども、伊周は、自分の中の釈然としない気持ちを道長にぶつけることで精神を保っていたのかなと思います。もう父上(道隆)が築いてくれた栄光は取り戻せないと心の底ではわかってはいても、認められない。すべては、伊周の弱さが招いた結果なんですけどね…。
――隆家の「過ぎたことは忘れる」という生き方を、伊周としてはどのように思っていたのでしょうか。
隆家は次男ですから、「自由に生きていていいな」という思いもあるし、自分の世界観を強く持っているところを疎ましくも思うけれども、やっぱりかわいいんですよね。なんだかんだ言いながらも好きだったのかなと思います。
「そもそもはお前が花山院に矢を射ったのが、我が家が落ちていくきっかけになったのだ」と言ったりしていましたけれど、きっと幼いころからいろいろなことでぶつかってもきただろうし、どこか許しているところがあるんだと思うんです。だから隆家を執ように攻めるのではなく、やるせない気持ちは道長にぶつけたのかなと。
「光る君へ」においては、道長が伊周に対して特別に何かをしたというわけではないですけれど、ほかに怒りの矛先を向ける場所がなかったのではないかと思います。
――伊周の中で道長への恨みが大きくなったきっかけは何だったと思いますか。
母親(高階貴子)が亡くなる際に、立ち会えなかったあたりからですかね。伊周は父親をとても尊敬していて、母親にはすごく甘えがあって、両親に対して絶対の信頼を持っていたので、母親の最期に間に合わなかったことへの恨みはものすごいものがあったのかなという気がしています。
映像としては、ききょうが「御母君がお隠れになりました」と言ったときは伊周のバックショットになっていたと思うんですけれども、もし正面から撮影していたらまた違う見え方をしていただろうと思いますし、伊周にとって精神崩壊が起こるシーンの一つだったと感じています。
――「光る君へ」における藤原伊周の最期をどのように思いましたか。
身体(からだ)が悪くなって衰弱もした状態ですべてをまっさらにしたとき、やはり一番大事に思うのは“家族”なのだなと思いました。「俺は奪われ尽くして死ぬのか」というようなセリフもありましたけれど、伊周もやっとそっち側(道隆や貴子や定子のいるところ)へ行けたのかなとも思います。悔しい思いはもちろんありますけど、父の思想を受け継いでいる伊周としては、これでよかったのかもしれません。
――息子・道雅には、どのような思いを託したいですか。
これまでかなり厳しく育ててきましたし、妻に対しても今だったら考えられないくらいの超亭主関白だったので、最期まで厳しく接するか、それとも父親らしく思いを託すかを、すごく迷ったのですけれども、最終的に、命のともし火が消える瞬間に初めて道雅に少し柔らかい表情を見せるというシーンにしました。基本的にはずっと名前を呼んでも涙を見せずに冷たい道雅でしたけれど、手を握って最後の言葉をかけたときに彼の顔がだんだんゆがんできて、それを見たら自然とほほ笑んでいましたね。映像でどのように映っているかはわかりませんけれども、「あとは任せたぞ」という思いを込めて。そこには、「俺みたいになるなよ」という意味もあるし、「道長を許すなよ」とかいろいろな思いがあったのですけれど、今後、道雅はどうなっていくのでしょうか…。
――今後の展開で気になること、楽しみにしていることはありますか。
道雅の行く末以外にも気になることはいろいろとありますけれど、この間、隆家に「これからどうなっていくの?」と聞いたら、「海賊が出てきて戦うらしいです(※刀伊の入寇/といのにゅうこう)」と言われて、平安時代から武士の時代への切り替えの時期が来るのかなと思いました。「それにしてもだいぶ急に来たな!」とは思いますけれど(笑)、どのような展開が待っているのか楽しみですね。あとは、まひろと道長の恋模様は果たしてどうなっていくのかも気になります。近づいたり離れたりするのをずっと見ているけれども、最終的にどう着地していくのか、これからはいち視聴者として心穏やかに、見ていきたいと思います。