第1回からまひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)のことをそれぞれ懸命に支える、乙丸と百舌彦。従者同士としてお互いのことをどのように思っているのか、特別な絆で結ばれたまひろと道長の関係性をどう感じているのかなど、演じる矢部太郎さんと本多力さんに伺いました。
――まひろと道長のつながりをきっかけに出会うことの多い乙丸と百舌彦ですが、お互いのことはどのように思っているのでしょうか。
本多 百舌彦は、乙丸のことを少し下には見ています。
矢部 ちょっと!(笑)。
本多 脚本にもそのようなト書きがあるんですよ。やはりもともとお仕えしている家の身分に差があるので、悪気はなくてもそういう雰囲気を出してしまうのかなと思います。
矢部 その感じを本多さんも僕に対して出してくるときがある!
本多 それは語弊がある!
矢部 「私はちょっと高貴ですから」みたいな空気感を出してくるときがあって、たまに気になるときがあります!
本多 年齡的には矢部さんのほうが年上なんですけれど、とても懐が深いので、ちょっといたずらをしたくなってしまうんですよね(笑)。
矢部 乙丸と百舌彦さんを比べると、百舌彦さんのほうが家柄は良いですけれど、でも、同じ従者というところでつながっている感じはしますよね?
本多 そうですね。その1点だけでつながっている感じはあります。
矢部 1点だけって(笑)。だとしても、かなり強い1点ですよ。以前、「百舌彦は乙丸をソウルメイトだと思ってる」と言ってくれましたよね?
本多 そう。だから、さわさんの従者の方と仲良くなりそうなときはヤキモチを焼いていました。
矢部 一時期、仲良くさせていただいていたので、そちらに行きかけましたけど、やはり百舌彦さんのところに戻ってきました。
本多 よかったです。
――従者としてお仕えする際に心がけていることを教えてください。
矢部 乙丸は、「どんなにお家が貧しくても、まひろ様と為時様にお仕えする」という忠義心がとても強い人だと思います。やはりそれは、お方様(ちやは)が亡くなってしまったときに自分もその場にいたにもかかわらず、一切役に立たなかったという後悔がとても大きいからだと思うんです。だからこそ、まひろ様には健やかに育ってほしいし、幸せになってもらいたい。自分のことよりも、まひろ様のことを最優先に考えて行動している感じがしますね。
本多 僕はですね、(矢部のほうを向いて)最近出世をしまして!
矢部 (笑)。
本多 従者という身で出世することがあると思っていなかったので驚きました。道長様は、従者に対しても誠実に接してくださるところが魅力的な人だと思います。だからこそいろいろと気苦労も多いのだと思いますけれど、百舌彦としては、道長様が肉親にも見せられない顔を見せたり、言えないことを言えたりする、ガス抜きのような役割として存在できればいいなと思っています。
――お二人は、特別な絆で結ばれたまひろと道長の関係性をどのように思っているのですか。
矢部 まひろ様には幸せになってもらいたいと思っているので、ちょっと複雑な気持ちではあります。
本多 道長様はすごくステキな男性ですし、もしも結ばれる未来があったとしても幸せにはなれるだろうとは思いますけれども、今の道長様には道長様の家庭があるから、ややこしいんやろなぁと…。二人の秘密を知っているのに、何もできないのがもどかしいです。
矢部 僕たちもずっとひそかに思いを抱えていましたよね。
本多 たぶん二人が廃邸で会っているとき、僕らも近くで待っているんだと思うんですよね。何かを話しているのか、それはわかりませんけれど。でもそのあとにそれぞれをお連れして帰る道中はずっと黙っている気がするんです。
矢部 そうですよね。何があったかこちらからは絶対に聞かないし、まひろ様と道長様もお話しにならないですからね。
本多 思いを察する時間というのはとても切なさがあるけれど、でも僕らにとっては特別な時間でもあるような気がします。
――まひろと共に越前に向かった乙丸にも、“いい人”が登場しましたね。
矢部 そうなんです。(本多のほうを向いて)パートナーができまして!
本多 知ってますよ(笑)。いいなぁ。
矢部 「僕ら従者もソウルメイトだ」と言ってくれたのにごめんなさいね。でも、乙丸は百舌彦さんのこともずっと想(おも)っていますので。
本多 今、初めて殺意を覚えました(笑)。
矢部 (笑)。僕もまさかパートナーができると思っていなかったのでびっくりしましたけど、きぬは、姫様のためにウニを求めに行ったときに出会った人なんですよ。姫様にウニを届けるために仲良くお話をしていて、気がついたら京都まで連れて帰ってきてしまったのかもしれません。ついていきたいと思うくらい、乙丸が魅力的なんですかね(笑)。そういえば、百舌彦さんは…。
本多 僕には(ぬい役の)野呂(佳代)さんがいるので。
矢部 何十年前の話をしてるんですか(笑)。野呂さんは野呂さんで幸せになっていますから、忘れてくださいよ。
本多 いますよね~、こうやって自分に彼女ができたら急に強気になる人。
矢部 紹介しますよ!
――従者目線で見た「光る君へ」の魅力を教えてください。
本多 例えば戦国時代であれば、何かのタイミングで従者が主人を裏切ったりすることもあるじゃないですか。でも今の僕らにその発想は一切ありません。百舌彦の場合、道長様と一緒に出世をすることはあっても、裏切るということは絶対にない関係というのがステキだなと思います。“奉仕したい”と思えるような人が人生の中にいたら、また違う豊かさが生まれるのかなぁなんて考えながら演じています。
矢部 乙丸がもし、自分が日々行っている仕事を「はたして意味があるのかな…」と思っていたとしても、もしかしたらまひろ様が書く『源氏物語』の中に乙丸の何かが生きているのかもしれない。そしてそれを1000年後に生きる僕たちが読んでいるのかもしれないと思うと、仕事の大きさとかは関係なくて、“生きている”ということ自体が大事なことなのかと感じます。歴史に名前が残っていない人間のほうが圧倒的に多いわけじゃないですか。でも、従者の名前までは残っていないとしても、藤原道長という人の中にはたしかに百舌彦さんが存在していて、紫式部、そして、『源氏物語』の中に乙丸が残っているのかもしれないと思うとすごくロマンがあるなぁと感じます。何気ない日々でも生きることを肯定できるような気がしますね。