実直に職務を遂行するかたわら、平安時代中期の実情を知るための重要史料『小右記(しょうゆうき)』を書き残した藤原実資。大河ドラマ「光る君へ」ではどのような人物として描かれるのか、実資から見た藤原道長(柄本佑)の印象など、演じる秋山竜次さんに伺いました。
――大河ドラマ初出演ですが、オファーがあったときのお気持ちをお聞かせください。
そんなわけがないだろうと思いました。自分が大河ドラマに出るなんて一ミリも考えたことがなかったので、ドッキリか何かかなって。でもどうやら本当のようで、うれしいです。
――藤原実資はどのような人物だと思われますか。
実資はいろいろな人の周りにずっといますよね。それならば、日記も書くなと思います。真面目なイメージですが、脚本を読んでいると女性の前では少し雰囲気が違ったりもするんですよ。現代にもいますよね、真面目なんだけど遊び倒している人って。一番やっかいなんじゃないかなと思いますけど(笑)。だからこそ演じていてすごく先が楽しみではあります。政治の大事なところに必ずいて、不満を抱えながら見ているときもあれば、的確なアドバイスをすることもある。演じている自分でも、実資が何を考えているのかいまいちわからないのでおもしろいです。
――出演者発表の際に「コントのようにならないか心配」とおっしゃっていましたが、実際に演じられてみていかがですか。
当初は、自分がカツラをつけて着物を着ていたら、時代物のコントみたいに思われそうだなと思っていたんです。けれども、セットの中に入って、共演する俳優のみなさんの中に並べていただいたら、「大丈夫だな」と思いました。朝廷に関する難しい話のセリフも多いので、コントにする隙間がありません。
ただ、画面を見ると自分だけ明らかに日焼けをしているので、それはどうなんだろうとは思っています(笑)。お話をいただいたときに、「お笑いの仕事で日焼けをしますし、基本的には梅宮辰夫さん基準で焼いているのですが、大丈夫ですか?」と確認したんです。そうしたら、それでOKをいただいて。脚本に蹴鞠(けまり)のシーンが何度かあったので、もしかしたら脚本の大石(静)さんが日焼けの理由をつくってくれたのかな、なんて思っています(笑)。
――出世や保身のことを考えている貴族が多い中だからこそ、実資の真面目さが際立ちますよね。
そうですね。「そんな堅いことを言わなくても」と思うことは結構あります。実資は怒っていることが多いじゃないですか。脚本にも「(怒)」とか「(憤慨)」というようなト書きがよく書かれているんです。実資のことが、だんだんとかわいらしくもなってきているのですが、真面目だからフラストレーションが溜まりやすいんだろうなと思います。
そして、きっとそれを蹴鞠などで発散しているのかなと。蹴鞠は一番の娯楽というか、それがあるから頑張れるという存在なのかなと思います。ひたすらやっていますから(笑)。プロ級にうまかったそうですし、日記を真面目に書いているところも含め、「お前、モテたいんじゃない?」という部分がチラチラ見えるんですよ。一見真面目な人物が頑張って格好をつけて、蹴鞠も「すごいだろ」って自慢したいんだろうなと想像しています。
――ご自身と実資との共通点はありますか。
物事を客観的に見るところですかね。自分も学生時代から活発的なほうではなく、クラスの端っこでネチネチと人を見て「あいつ、いま無理矢理ダルそうにしてるな」とか、「ああいう一面があるのか」などと観察するのが好きだったので、実資が常に政治の片隅にいて、感じたことを日記に書いていたりするのは共感できる気がします。
――ライバルの一人である藤原道長のことはどう思っていますか。
家族が破天荒な行動を取る中で、(道長は)うまく立ち回っていかないといけない時期でしょう? 葛藤は多いだろうなと思います。権力欲が強く策謀を巡らせるめちゃくちゃな家族の中で、目線を下げて立ち回ることができる道長のような人物が出てきたのはすごいですよね。野心があまりないというか、優しいので、話していてホッとします。実資も「あいつはあまり暴れないから」という理由で、彼に近づいている気がします。
――撮影の中で、特に印象的な出来事をお聞かせください。
とにかくセットがすごいなと思います。映像にはまったく映らないような隣の小部屋などもしっかりとつくられているので、「端っこでいいから、何本かコントを撮らせてほしいな」と思いながらいつも見ています(笑)。所作をはじめ、撮影のときには自分たちを指導してくださる先生がいらっしゃるのですが、そういう方々を見ていると「ネタができそうだな」と思ってしまうんですよ。そのままはやりませんが、撮影の合間にスタッフさんに書くものをお借りしてメモを取ったことが何度もあります。もちろんそれだけではなく、勉強のために俳優のみなさんの立ち居振る舞いなどもメモをしていますよ。せっかくこのような機会をいただけているのですから、くまなくギョロギョロして、さまざまなことを吸収していきたいと思っています。