アメリカを追い抜く「世界一の経済大国」はもはや夢物語…じつは「中国経済」が「頭打ち」だと言われているワケ
大国間の綱引きの状況を利用して、自国の安全保障と経済的な利益を確保しようとする。常に中立を保つのではなく、自国の利益になるのであれば、テーマごとに米欧、中ロどちらの側と連携することもあり得る。いま、世界を動かしているのは「グローバルサウス」であり、彼らをめぐる動向を理解することこそが国際情勢の鍵である――。 【マンガ】バイデンよ、ただで済むと思うな…プーチン「最後の逆襲」が始まった グローバルサウスの思考体系と行動原理、米中の覇権争いとの関係を解き明かし話題を呼んでいる『グローバルサウスの時代』(脇祐三)より一部を抜粋してお届けする。 前編記事『中国の求心力が強まっているわけでもないのに…日本を含めた「西側」の求心力が落ち続ける「本当の理由」』より続く。
中国の成長の停滞
2023年から24年にかけて、中国の経済状況についての世界の論調が大きく変わった。米欧のメディアで定番になっていた「台頭する中国」(Rising China)という表現が消えていき、代わって「頭打ちの中国」(Peak China)という表現が増えた。中国では、不動産バブルがはじけてマンションなどの価格が下落し、株価も大幅に下がった。 中国の国民の多くが節約意識を強め、消費は盛り上がりに欠ける。対外貿易も23年は、輸出、輸入ともに前年比でマイナスだった。習近平国家主席は、23年12月31日夜に国営テレビが放送した新年に向けての所感の中で、「一部の企業は経営へのプレッシャーに直面し、一部の人々は就職や生活上の困難に遭遇している」と、経済状況の厳しさを認めた。 中国政府は23年の実質GDP成長率が5.2%だったと発表した。「5%前後」という政府目標を達成した形にしたわけだが、実際の成長率はもっと低いはずだという見方も多い。政府発表によると、23年の名目GDP成長率は4.6%だった。物価の変動の影響を差し引いた実質成長率のほうが、名目成長率より高いということは、中国の物価が下落傾向にあることを意味する。生産者物価は22年10月から前年同月比でマイナスになり、24年10月まで25カ月連続でマイナスだった。 消費者物価はマイナスになった後、24年2月から小幅なプラスに転じたが、豚肉など食料の価格上昇の影響が大きく、自動車やスマートフォンなど耐久消費財の値下がりは続いている。世界がなおインフレ局面にある時期に、中国ではデフレの気配が広がった。中国での事業が、増益の要因から減益や赤字の要因に転じ、株価を上げる材料から下げる材料に変わった。そういう日本企業、欧米企業は数多くある。 中国の生産年齢人口がピークに達したのは、2012年から13年にかけてだ。習近平政権の発足とほぼ同じタイミングで生産年齢人口は減少に転じ、潜在成長率が下がってきた。総人口も22年から減少局面に入り、インドに抜かれて世界2位になった。不動産バブルの崩壊、人口の減少、デフレの組み合わせは、「失われた30年」と呼ばれた1990年代以降の日本の経済停滞を連想させる。欧米のメディアで中国の経済状況を「日本化」(Japanification)と表現する例も目に付くようになった。