大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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【光る君へ絵巻】ドラマ美術の世界 ~まひろと藤原道長が逢瀬を重ねた「廃邸」

まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)がたびたび忍んで逢瀬を重ねた「廃邸」。大河ドラマ「光る君へ」で建てられた「廃邸」の美術についてご紹介します。

◆◆ デザインコンセプト ◆◆

元は貴族の屋敷であった場所が風化して荒れ果てた空間で逢瀬を重ねるまひろと道長、二人の人生の岐路にあたる特別な場所。「六条」「夕顔」「廃院」「もののけ」など『源氏物語』から連想される要素を盛り込みながら、この世ともあの世ともわからない幻想的な世界を表現。目指したのは「諸行無常」の儚(はかな)さ。自然に還りつつある寝殿や池の面影がかつての栄華を感じさせる。朽ち果てていくものと生きようとする植物の力、それらを照らし続ける太陽と月光が、隔世された神秘的な場所を作り上げた。

――『源氏物語』も想起させる1枚の絵画に

まひろと道長が身分差を飛び越えて会うためには、相応の場所が必要となります。そこで参考にしたのが、六条にある廃邸です。京都六条には、数度の火災によって荒廃した52代・嵯峨天皇の第十二皇子・源融(みなもとのとおる)の旧邸宅「河原院」がありました。紫式部が著した『源氏物語』にも廃邸で男女が会う描写がありますが、光源氏が夕顔を連れ込むさびれた某院(なにがしのいん)は、光源氏の邸宅の一つである六条院とともに、この河原院がモデルともいわれています。まひろと道長が逢瀬を重ねる美しい場所はこれらから想像を広げて、色あせた寝殿や木々に侵食された屋根などがかつての栄華といまの儚さを感じさせる、1枚の絵画に収まるような空間を目指しました。

――廃邸セットのヒントは平安神宮の庭園

廃邸セットのヒントとしたのは、京都・平安神宮の庭園です。平安神宮には、社殿を取り囲むように東・中・西・南の4つの庭園がありますが、その一つである東神苑では、大きく広がる栖鳳池(せいほういけ)を横切るように泰平閣(たいへいかく)という橋殿(はしどの)が掛かっています。寝殿造りの屋敷には池泉庭園(ちせんていえん)と呼ばれる池泉や水景物のある庭があり、廃邸のセットでは中央に作り上げた池とそれを取り囲むように配置した寝殿や植物によって、この廃邸の池泉庭園をスタジオ内に表現しました。

――三位一体となって表現した幻想的な世界感

廃墟となった寝殿の屋根にぽっかりと空いた穴から月光が優しく差しこむ。これは「“月から滴るしずく”が舞い降り、まひろと道長を見守る」というシチュエーションを創り出したいという、演出・黛りんたろうのたっての希望により用意したものです。第10回のまひろが道長を受け入れるシーンでは、幻想的な世界感を創り出すために、照明やスモークの効果などにもこだわってベストな形を検証。美術チーム、照明チーム、特殊効果チームが三位一体となって表現しました。
   
   

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