大河ドラマ「光る君へ」

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【光る君へ絵巻】ドラマ美術の世界 ~越前に置かれた迎賓館「松原客館」

まひろ(吉高由里子)と越前国守に任官した藤原為時(岸谷五朗)が、越前国府への途上で立ち寄った「松原客館」。大河ドラマ「光る君へ」で建てられた「松原客館」の美術についてご紹介します。

◆◆ デザインコンセプト ◆◆

為時とまひろが越前国府に赴任する際に立ち寄った宋人たちのための迎賓館。海の近くに建ち、朱塗りで瓦屋根、池・石・木・橋・亭などの五つの要素がそろった「園林」と歳寒三友(さいかんのさんゆう)と呼ばれる松竹梅、土間で靴生活、椅子(いす)・テーブル・カーテンを使用したスタイルなど、建築・庭園・調度など中国様式で、見るもの、聞くもの、食べるものなどは、まひろにとって全てが印象的で刺激的な新世界への入口。

――史料がほとんど残されていない松原客館

松原客館は、越前国敦賀津(現在の福井県敦賀市)付近に置かれた渤海(ぼっかい)の使節団(渤海使)を迎えるための迎賓・宿泊施設でした。渤海滅亡後も、宋の商人や官人が敦賀に来訪した際に利用されていたともいわれますが、詳しい史料が残されておらず、その外観や構造だけではなく、客館が建っていた正確な場所さえもわかっていません。このため、福岡にある当時の外交施設の一つであり、一部が復元されている筑紫の鴻臚館(こうろかん)を取材するなどし、番組オリジナルの松原客館を作り上げました。船でやってきた宋人たちがすぐに休憩できるように、海岸近くに建てられていたという設定としています。

――中国様式の園林と歳寒三友

松原客館セットでは、四合院(しごういん)という四つの辺に建物を置いて中央に庭園を配置する中国の伝統的な住宅の様式を取り入れ、庭園は園林としています。園林とは、中国において古代から伝わる庭園や造景芸術のことで、池・石・木・橋・亭などの五つの要素を必ずそろえることが特徴の一つです。庭園の木々には、松・竹・梅を植えています。冬の厳しい寒さの中で松と竹は常緑を保ち、梅は毎年春の魁(さきがけ)として美しい花を咲かせることから、中国の人々は松・竹・梅を厳しい環境においても節度を守って不変の心を持つものとして「歳寒三友」と讃(たた)えてきました。日本では「松竹梅」と呼ばれますが、その起源は宋代ともいわれているので、松原客館の庭園にもこの要素をあしらいました。また、太湖石(たいこせき)という中国・太湖周辺の丘陵から切り出される穴の多い複雑な形の奇石を配置するなどし、まひろが目にする新世界にふさわしい空間となるように工夫を凝らしています。

――青い光を放つ瑠璃燈籠(るりとうろう)

中心をなす正殿とその対となる亭は、中国様式による朱塗りで瓦屋根の建物です。建物から釣り下げられた青い燈籠(とうろう)は瑠璃燈籠といい、瑠璃色(るりいろ)のガラス玉をつないだ六角黒漆塗りの釣燈籠になります。現代にも藤原道長の長男・頼通が寄進したと伝わる品など当時の瑠璃燈籠が残っており、それらを参考にして制作しました。隣接する茶色の建物は、宋人たちが休憩する際に利用する宿坊です。宿坊内には中国の調度品を取りそろえ、御簾(みす)ではなくカーテンを付けるなど、平安貴族の屋敷とは違った独自の世界観を作り上げています。

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