大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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藤原道長役 柄本佑さん ~目指す世のために、新しい政を

父や兄たちが立て続けに世を去り、右大臣の座についた藤原道長。かつてまひろ(吉高由里子)と共有した思いを胸にどのように政に向き合っていこうとしているのかや、若き帝・一条天皇(塩野瑛久)の印象などについて演じる柄本佑さんに伺いました。

――ついに右大臣の座につきましたが、どのように受け止めていらっしゃいますか。

かなり偉い立場になってしまいました。自分の中でいろいろな出来事が消化されるより先に、あれよあれよという間に立場のほうが上がってしまって、内裏(だいり)でやらなくてはならないことと、本来の自分が求めていることの差がどんどん離れてしまってきているような感覚です。僕としては、第19回から“道長・第二期”という印象ですね。

――道長は、かつて父・兼家が行っていた政の姿を受け継いでいくのでしょうか。それとも反面教師にしていくのでしょうか。

“受け継ぐ”とまではいかないですけれども、“わからないことはない”という感じではあると思います。父が言っていた「政は家だ」という執念にはすごみを感じていたし、どこかでその考えを意識しているところはあるので、自分の中に流れる一族の血を受け入れつつも、自分なりに咀嚼(そしゃく)して考えようとしているのではないかなと感じています。道長さんの目指している世は、「民を思い、共に生きる」ということなので、自分のことばかり考えている公卿(くぎょう)たちの中で、目標の実現に向けてどういうふうにレールを敷いていけばいいのかをひたすら考えている感じです。これまで、父・兼家、兄・道隆、道兼の政に向かう姿を見てきていますけれど、道長さんは急ぐような人ではないのかなと思うんですよ。三男坊らしいのんびりした部分と手の内を即座には見せない一種のクレバーさを持ち合わせた人なので、また新しい政の向き合い方をしていくのではないかと思います。

――その目指している世は、まひろと共有した思いが強く影響していると思いますが、まひろと道長の関係性はどのように変化していると感じますか。

まひろさんとの関係は、「もうこれはどうしようもないな」と最近気がついてきていまして、そう簡単に言葉にはできない複雑な思いを抱えているんですよね。この物語、そして道長が「自分も政に関わっていかないといけないのだ」と覚悟を決めるベースになっているのは、やはり兄・道兼がまひろさんのお母さんを殺してしまっているという物語上の事実がありますし、共に経験してきたさまざまな共有が、2人が“ソウルメイト”たるゆえんとなっているので、もはや“想い合ってしまっている”という感じだと思うんです。なので、「まひろさんのどこが魅力ですか?」と聞かれると難しくて、そういう次元とはまた違うところに2人はいるんですよ。

世間一般に言われるような愛情は、奥さんである倫子さんと明子さんに向いているというか。愛の有りようがそれぞれの女性たちで全然違う気がします。倫子さんに向ける愛情は“友情”や“同士愛”に近くて、明子さんには“安らぎ”を求めていきますが、まひろさんに対しては言葉にできない想いを抱えているのではないかなと最近感じ始めました。

――覚悟を決めるベースをつくった道兼に対して、最期まで道長が寄り添う姿勢を見せたのはなぜだと思いますか。

これは僕も実生活で感じることですけれど、やっぱり兄弟って特別なんですよね。どうしたって人間なので間違うことはあるけれども、結果的に諦められないというか。道兼さんは自分の愛する人を悲しませてどん底に突き落とした人だけれど、どこかで許そうとする心が働いてしまうのは、しかたがないことのような気がしています。だから関白になった道兼さんに「兄上なら、よき政ができましょう」と言ったのかなと。信じたいし、諦めきれない心がずっとあったのだと思います。

最期のシーンは、脚本では疫病にかかった道兼さんのために医師を呼んだけれども、「近づくな。出て行け!」と言われてそのまま去っていくことになっていたんです。でも、そのあとに道兼さんが亡くなって道長がすごく憔悴(しょうすい)している場面がくることを考えたら、やっぱりただ去っていくわけにもいかないなと思って、「出て行け!」と言われて1回出ていくけれども、道兼さんの読経を聞いて戻って抱きしめるということに変わりました。兄上の言うとおり、これからは僕が政を継がなければならないし、疫病にかかっている人に対策もなく近づくことは危険を伴うことだとはわかっているけれども、情が勝ってそこをこえていってしまう。道長さんはそういう人なのだと思います。

――公任、斉信、行成の幼なじみメンバーとの関係性は、どのように変化していると感じますか。

これも実生活でも感じることですけれど、例えば小学校時代の友人とか、それぞれ生活や立場に変化があったりしても、会った瞬間に当時に戻る感覚ってあるじゃないですか。そういう感じかなと思います。いまや僕が圧倒的に偉くなってしまっているし、仕事の上では、「してやられた!」と思ったり、「お前のそういうところどうかと思う」みたいな指摘をしたりはするけれども、仕事以外の場所で会えば、ずっと若いころの4人のままなのではないかと。わりとメリハリのある関係性かなと思いますね。第19回で久々に4人で次の除目(じもく)について話すシーンがありましたが、今後はなかなか集まれなくなるので、またどこかで4人でお酒を飲みながら話すようなシーンがあったらいいなと思っています。

―― 一条天皇のことはどのように支えようと考えているのでしょうか。

以前(第5回)父上に対して言った、「帝がどなたでも変わらない。大事なのは、お支えしている者が誰か」ということを地で行っているのではないかなと思います。帝が間違った道に進んでしまったとしたら、それは自分の誘導ミスであると思おうとしているというか。「民を思う御心あってこそ、帝たり得る」というセリフがありましたけれど、一条天皇はまさにそれを体現してくれるであろうと道長的には思っているので、右大臣という立場からどのようにコントロールしてさしあげればいいかなと考えている感じです。だから、「関白になりたいか」と聞かれたときに、「関白としてではなく右大臣として、こういうふうにお上を支えたいです」とハッキリ言ったのではないかと思うんですよ。その言葉の中にある種の思惑がまったくないとは言えませんし、昔から道長のことを知っている人から見たら「変わったな」と思われてしまうのかもしれないけれども、道長自体はきれいなハートのまま変わっていないような気がします。

――改めて大石静さんの脚本のもと、道長を演じることをどのように感じていますか。

「大石さんの脚本っておもしろいなぁ」とずっと思い続けていますね。おもしろすぎてもはや僕、マンガを読んでいる感覚で脚本を“何巻”って数え始めましたから(笑)。毎話いただくたびに、「これはすごい賭けに出てる!」とか「ちょっと大石さん~!」と思えるので、非常におもしろいと思います。ト書きに「(万感の思い)」とか(笑)、演者側にかなり託されているなと感じる部分も多いけれども、大石さんが僕らの芝居を楽しみにして書いてくださっているのだと思うと、ただ無難に収まっても申し訳ない気がするし、そんな状態で大石さんにお見せするわけにはいかないなと思います。もちろん視聴者のみなさまにどう受け取っていただくかが大事ですが、「大石さんが見たらどう思うのかな」ということをいつも考えています。

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