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躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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をしへて! 倉本一宏さん ~貴族たちの激しい競争の場だった受領の除目

貴族たちの命運を左右する除目(じもく)。任官がかなうかどうかによって収入にも大きな開きが出るため、貴族は申文(もうしぶみ)を書いて、自身をアピールしました。時代考証を担当する倉本一宏さんに、受領(ずりょう)の除目について伺いました。

――受領の除目について教えてください。

受領とは任命された国に自ら下った国司の最高責任者のことですが、任地が60余州あり、任期は4年です。年ごとにおよそ4分の1が任期満了となりますので、除目によって10数人が交替します。受領は、政権を握っている人が「お前は○○守」と勝手に任じることはできません。資格を有する人が希望し、まず申文(もうしぶみ)を書いて出すんです。

――受領になるための資格があるのですね。

官職によって違うのですけれども、中央官を何年か務めて、上日(じょうじつ/出勤した日)を満たし、業績をきちんと挙げている人が、勤務している役所の中で順番(「巡」)に申文を出すことができます。そこまで行くのがまず大変なんですね。それで、次にどこの受領が空くのかはわかっていますから、その中で自分の位、業績、勤務している役所の格によって、「自分はどこへ行きたい」と申文を書きます。申文には、自分がいかに優れた人間であるか、ライバルと目される人がいかにダメなやつか、あとは自分がいかに名門であり、そのうえでどれほど不遇なのかというようなことが書かれます。『本朝文粋(ほんちょうもんずい)』という史料があり、当時の申文がいくつか残されています。

――そうなんですね。藤原為時(岸谷五朗)の申文も残っているのでしょうか。

為時の申文は残っていないので、考証にはいろいろと苦労しています。けれども『本朝文粋』を見ると、当時の貴族たちの切々たる思いが伝わってきます。受領になれる資格を持つ貴族は、かなりの人数がいますからね。その競争を勝ち抜くのは大変なんです。

――厳しい競争社会で、家族も大変だったでしょうね。

紫式部は20代後半まで未婚ですけれど、これは父・為時が長らく無官だったからです。「藤原兼家や道隆の妻もわりと中級貴族の娘ではないか」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、紫式部とは置かれている状況がまったく違います。兼家や道隆の妻は、ほとんどが受領の娘なんですね。つまり、お父さんは受領であり、お金があります。一方、為時はすごく貧乏なんです。六位で無官でしたから、定収入はなかったと思います。そんな家に婿にくるような人はいません。紫式部も不安というより、あきらめていたと思います。

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