越前守として任国に赴任した藤原為時(岸谷五朗)。大河ドラマ「光る君へ」で時代考証を担当する倉本一宏さんに、国司の四等官について伺いました。
――国司の四等官について教えてください。
律令制では、諸官司は4つの等級に分かれており、地方行政単位である国の行政官にあたる国司の場合は、上から「守(かみ)」「介(すけ)」「掾(じょう)」「目(さかん)」となります。各定員は国の格によって変わり、「介」がいない場合もあります。奈良時代までは、国司はすべて中央の人です。「守」「介」は五位以上の貴族が、「掾」「目」は六位、七位の人が務めました。任期は6年で、連帯責任になります。
これが律令国家における国司だったのですが、10世紀のはじめに国家体制が変わり、これに伴って「守」だけが受領(ずりょう)という責任を取る立場となりました。そして中央から下向するのも、基本的には「守」だけとなり、任期は4年に短縮されます。「介」は中央から赴任する場合もありますが、多くは現地の有力者です。任用国司というのですが、しばしば郡司(※注1)を兼ねます。「掾」「目」は、現地の人が務めるか、中央の下級官人が名目上、これに任じられるかです。
【注1】郡司(ぐんじ)… 律令制において、国司の管轄下で郡務を担当した地方官。
◆◇ 国司の四等級 ◇◆
【守(かみ)】
律令制において、国司の職務を四等級に分けたうちの第一等官。任国の行政・司法・警察などの国務を総括する。平安時代中期には受領とも呼ばれる。
【介(すけ)】
律令制において、国司の職務を四等級に分けたうちの第二等官。守を補佐し、不在の際には代理を務める次官。上野国・常陸国・上総国は介が受領を務めた。
【掾(じょう)】
律令制において、国司の職務を四等級に分けたうちの第三等官。書記業務などを担当する。平安時代中期は現地の人を任用した。
【目(さかん)】
律令制において、国司の職務を四等級に分けたうちの第四等官。国内の取り締まりや文書の起草などを担当する。平安時代中期は現地の人を任用した。
――なぜ10世紀のはじめに国家体制が変わったのでしょうか。
律令国家では税率が高過ぎて、租税を払えずに逃げ出してしまったり、都に租税を運ぶ途中で行き倒れになってしまう人が増加していきました。このため、税収が減り、国家運営が行き詰まるようになってきたんですね。それで、税率を何分の1というレベルで大きく下げて、それまでよりも税収は少なくなるけれども、確実に確保するように体制を転換したんです。また律令国家では人を単位に租税を取っていましたけれども、体制を変えて以降は土地を単位に税を取るようになりました。つまり、誰が耕しているのかは、どうでもいいんです。その土地の納税責任者が自分で耕してもいいし、誰かに貸したり、人を雇ったりしてもいい。とにかく、その土地に対する税を収めればいいんです。これにより、受領はもちろん、その他の国司やその下の郡司、そして農人に至るまで、少なくなった一定額の税さえ収めれば残りは私物化できるようになり、律令国家よりもはるかに豊かになりました。
教科書には、「律令国家が崩れて平安時代になった」というように書かれていたりしています。けれども、そうではなくて、律令国家体制は戦時体制で、もともと無理があったんです。それで平安時代に、日本の実情に合わせて国家体制が見直されました。私は、こちらのほうが日本的な古代国家の完成だと思っています。
――受領(「守」)の任期が4年に短縮されたのはなぜでしょうか。
一定額の税さえ収めれば残りは私物化できるようになりましたので、もちろん人にもよりますけれども、儲(もう)ける人はかなり儲けられるようになったんですね。このため人気が上がり、任官を願う貴族が増えたので、任期を短くしないと人事が回らないんです。中央の実務官人の給料はそれほど万全には支払われませんので、受領はとても魅力的な官だったのです。もちろん公卿(くぎょう)のほうがさらに高収入ですけれども、ふつうの中級官人、下級官人はそんなに収入がありませんから、「実務官人として頑張って、受領に申請できる資格を得たら、地方で儲けてくるか」という気持ちはよくわかります。
◆◇ 国の四等級 ◇◆
【大国(たいこく)】
律令制において、面積や人口などによって諸国を大・上・中・下の四等級に分けたうちの、第一位の国。大和・河内・伊勢・武蔵・上総・下総・常陸・近江・上野・陸奥・越前・播磨・肥後の13か国。
【上国(じょうこく)】
律令制において、面積や人口などによって諸国を大・上・中・下の四等級に分けたうちの、第二位の国。『延喜式』では山城・摂津・尾張・三河・遠江・駿河・甲斐・相模・美濃・信濃・下野・出羽・加賀・越中・越後・丹波・但馬・因幡・伯耆・出雲・美作・備前・備中・備後・安芸・周防・紀伊・阿波・讃岐・伊予・豊前・豊後・筑前・筑後・肥前の35か国。
【中国(ちゅうごく)】
律令制において、面積や人口などによって諸国を大・上・中・下の四等級に分けたうちの、第三位の国。安房・若狭・能登・佐渡・丹後・石見・長門・土佐・日向・大隅・薩摩の11か国。
【下国(げこく)】
律令制において、面積や人口などによって諸国を大・上・中・下の四等級に分けたうちの最下級の国。和泉・伊賀・志摩・伊豆・飛騨・隠岐・淡路・壱岐・対馬の9か国。