平安時代を描いた絵巻物では、白木で作られた建物が多く登場します。柱は「丸柱」となっており、この時代の文化を特徴づけるやわらかな美を文字通り支えています。そんな世界を鮮やかによみがえらせるために、「光る君へ」美術チームがこだわった「白木の丸柱」についてご紹介します。
――絵巻物に描かれている、白木の丸柱
『源氏物語絵巻』をはじめ、『年中行事絵巻』、『伴大納言(ばんだいなごん)絵巻』など、当時の姿を今に伝える絵巻物では美しい白木色の丸柱がよく描かれています。平安絵巻の世界を色鮮やかによみがえらせるためには、この「白木の丸柱」を再現することが不可欠ですが、セットを組み上げるために必要な本数を本物の木材で調達することは困難でした。そこで、檜皮(ひわだ)屋根と同様に“エラストマー”という素材を用い、1本の本物の白木の丸柱から型を作り、そこに流し込んでできた“エラストマー”に塗装を加えて白木の丸柱を量産しました。
ドラマ美術の世界03 ~これぞ平安の建物 こだわり抜いた屋根まわり
――平安当時の技法で作られた、薬師寺の丸柱を参考に
丸柱を制作するにあたって参考にしたのは、奈良・薬師寺の丸柱です。薬師寺の丸柱は復元されたものですが、当時の道具と手法が使われており、建築考証の三浦正幸さんから「参考にしてください」とアドバイスをいただき、薬師寺を訪れて取材をしました。当時はまだ鉋(かんな)が発明されておらず、槍(やり)の穂先のような形状をした槍鉋(やりがんな)といわれる鉋の一種を使用して木を削っていく手法で丸柱は作られています。このため、宮大工さんに実際に丸柱を1本削っていただき、その丸柱で型を作りました。
――名古屋城の本丸御殿で白木の色合いを研究
“エラストマー”は木材を削った際の跡だけではなく、木目の表情まで細やかに拾うことができる優れものですが、型から取り出しただけでは表面がグレーであり、セットで使用するためには塗装を施す必要があります。絵巻物で描かれている白木を再現するにあたり目指したのは、建造してから10年くらい経過した白木の色合いでした。そこで参考にしたのが、2009年に着手し、2018年に復元工事を終えた名古屋城の本丸御殿です。この名古屋城の本丸御殿を訪れて取材し、白木の色合いを研究してセットに反映しました。
“エラストマー”は砕いてさまざまなものに再利用することが可能であり、環境にもできる限り配慮をして、ドラマ制作を行っています。