大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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【光る君へ絵巻】ドラマ美術の世界 ~これぞ平安の建物 こだわり抜いた屋根まわり

平安絵巻の世界を色鮮やかによみがえらせるために、大河ドラマ「光る君へ」の美術チームがこだわって制作した「檜皮屋根(ひわだやね)」と「廂(ひさし)」についてご紹介します。

檜皮とは、檜(ひのき)の樹皮のこと。これを細かく積み重ねて葺(ふ)いた屋根が、平安時代に広く普及していたといわれています。また寝殿の周囲にめぐらされた「廂」には日光や月光が差し込み、平安貴族はこの場所で日々を楽しみました。

こうした貴族の生活空間をセットでいかに再現するか、「光る君へ」では工夫を凝らしています。

――平安らしさの追求

これまでの大河ドラマは武士を中心とした物語が多く、そのセットには武骨さ、力強さが求められてきました。しかし「光る君へ」では、絵巻物に描かれているような平安時代中期の貴族を中心とした物語が描かれるため、繊細さ、優美さが優先されます。このため、既存のセットパーツをそのまま活用することは困難でした。そこで、平安らしさを追求したセットパーツを新たに制作することを決断し、取材と研究を重ねました。

――「勾配」と「反り」と「軒先の出」

古い時代に創建された宇治の宇治上神社、京都の浄瑠璃寺、上賀茂神社、奈良の春日大社などの古くから残る寺社は、屋根の緩やかな勾配と美しい反りが特徴的です。今回、平安絵巻の世界をよみがえらせるために、この「勾配」と「反り」を追求しました。またそれとともに、屋根の「軒先の出」にも注力しています。雨が当たるのを防ぐために本物の屋根の軒先はしっかりと出ているのですが、屋根のセットパーツは重量があり組み上げた際の負荷が大きいため、安全性も考慮し、これまでの大河ドラマではセットの屋根の軒先は少し控えめに作られていました。しかし「光る君へ」では新たなセットパーツを開発し、平安時代中期の本物に近い「勾配」と「反り」、そして「軒先の出」を表現しています。

――新たに制作した檜皮屋根

これまでの大河ドラマでも檜皮屋根は登場していましたが、従来のセットパーツでは今回目指した「勾配」と「反り」には対応できません。また、セットパーツであるがゆえに、パーツのつなぎ目が見えてしまうことも課題でした。このため、つなぎ目を極力なくし、そのうえで理想的な「勾配」と「反り」を持つ檜皮屋根を実現させるために、檜皮の素材を一から見直しました。
そこで取り入れたのが、“エラストマー”という素材です。この素材は、木材を削った際の跡だけではなく、木目の表情まで細やかに拾うことができる優れものです。このため本物の檜皮を使って型を作り、そこに“エラストマー”を流し込んで出来上がったものに塗装を加えてセット用の“檜皮”を量産。これをつなぎ合わせて、軽量なうえに緩やかな勾配と美しい反りを持つ檜皮屋根を作り上げました。
軽量化された檜皮屋根により、「光る君へ」のセットではおよそ150cmの「軒先の出」を実現しました。これは本物に近い数値であり、セットの建て替えを考慮して設計した際の限界値でもあります。細部に至るまで徹底的にこだわって制作したこの檜皮屋根は、垂木の先端には白い塗装の保護剤が表現されているなど、美術チームの情熱が細部にまで詰め込まれています。

――リアリティーにこだわった広い廂

本物に近い「軒先の出」を実現したことで、「光る君へ」では廂の幅も広く取ることが可能となりました。廂は寝殿の中心部である母屋(もや)を取り囲む廊下(ろうか)のような部分で、ここで楽器を演奏したり、サロンが開かれていたりする様子が絵巻物にも描かれています。母屋よりも廂のほうが光が差すため、好まれたのでしょう。ドラマにおいても、さまざまなシーンの撮影に使用したいという演出の意向があり、今回はおよそ2m70cmの廂を設けました。また木材ごとの個性を表現するために廂を構成するパーツは均一にすることなく一つ一つ質感を変えており、場所によっては雨による傷みも表現するなど、リアリティーにも気を配っています。今回の広い廂からはゆったりとした平安らしさを感じていただけると思います。

 

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