大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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制作統括 内田ゆき ~「何を求めて生きるのか」は、いつの時代も変わらない

7年ぶりに女性が主人公の物語を描く「光る君へ」。なぜ紫式部なのか。制作統括の内田ゆきが、作・大石静さんがつむぎ出すストーリーや、主人公・まひろ(紫式部)を演じる吉高由里子さんの魅力などを語ります。

――「光る君へ」の構想の経緯を教えてください。

2017年に放送された「おんな城主 直虎」以来、7年ぶりとなる、女性が主人公の大河ドラマを企画制作することになり、チーフ演出の中島由貴と歴史上に実在した人物で誰を考えられるかを話し合いました。その中で、武士の時代に入るとどうしても規範に従って家を支える立場の女性が多くなってしまうので、もう少し主体的に動ける主人公はいないかと考えた結果、「自分で何かを成し遂げた人=紫式部」という案が上がりました。正直、平安時代中期の貴族社会は、大河ドラマでは取り上げたことがありませんので、本当に大丈夫かという思いはよぎりました。けれど、紫式部についてはまだわかっていないことが多く、いろいろと想像も加えたフィクションの物語にできる強みがあります。謎の多い女性であることを逆手に取って、魅力的に描けるのではないかと思ったのです。

――「光る君へ」というタイトルはどのように決まったのでしょうか。

やはり主人公が紫式部ですので、「紫」を入れたタイトルにしたほうがいいのかなどと、かなり悩んでいたのですが、あるとき『源氏物語』を読んでいて「光る君」という言葉を見つけました。もちろん『源氏物語』の大河ドラマではないので、そのままタイトルにするわけにはいきませんけれども、『源氏物語』を生み出した人・紫式部には、きっと「光る君」に強い思いがあったはずだと思ったんです。もしかしたら、それは光源氏のモデルの一人といわれている藤原道長への気持ちかもしれません。誰かに対して想(おも)いをぶつけたいということが、紫式部の作家としての原動力なのではないかと考えたときに、「光る君」のあとに「へ」をつけることで、「主人公の一番大切な人への想いが描かれているドラマですよ」ということがお伝えできるのではないかと思いました。また、人によって感じ方は違うとは思いますが、声に出して読んだときの語感がクリアでいいことも理由のひとつです。

――脚本を大石静さんに依頼された理由を教えてください。

先ほどもお話ししたように、「光る君へ」は通年の大河ドラマ以上に想像を付け加えていく作業が必要になります。そして、戦(いくさ)よりも登場人物の人生において起こることを全面に出して、しかも長期間書いていくには、かなりパワーのある方にお願いしないと難しいのではないかと思っていました。そうしたら、チーフ演出の中島から「大石静さんはどうでしょうか」と。大石さんは2006年の大河ドラマ「功名が辻」を書きあげておられ、また女性の人生や恋愛を強さと細やかさをもって巧みに描かれる作家だという印象がありました。お名前を聞いてぜひお願いできたらうれしいなと思いました。それから大石さんとお話をしてみたら、「登場人物一人一人の生きる世界だけではなくて、“社会のうねり”みたいなものを必ず描いていかないと大河ドラマという枠への期待には応えられない」と。実際にそういう部分をバランスよく、そしてダイナミックに書いていただけているので、とてもありがたいことだと思っております。

――脚本は恋愛の物語と政治の物語が交わりながら進んでいると感じます。その二つのパートのバランスをどのように取っていきたいとお考えなのでしょうか。

物語の中盤くらいまでは、政治のことは藤原道長を主軸として描かれます。これは、まだまひろが政治に関わるような位置にいないからですが、やはり、すべての登場人物を多面的に描くためには、まひろから見た道長の姿も描いたほうがいいと思うんです。史料があまり残っていない時代とはいえ、政治に関してはわかっていることが多くあります。一方で史料には残っていないかもしれませんが、道長たちが行う政治を見つめて生きていた人たちももちろんいました。たしかにバランスとしては少し難しいところがありますが、まひろ独特の冷静な目線を通して、当時のありさまを伝えられるようにできればと思っています。

――まひろと道長の関係性についてはどのように捉えていますか。

“社会のうねり”とともにもう一つ、まひろと道長の2人の結びつきが、このドラマの非常に大きな柱だと思っています。この2人が夫婦として結ばれないことは歴史的にわかっていることですので、お互いの気持ちの揺れ動きを1年間続けて描いていくことは挑戦ではあります。もちろん“まひろの人生”と“道長の人生”とが同じ道をたどるわけではありませんが、そのときどきで、忘れられない相手に対してどのような感情を持っていたのかという点を丁寧に描いていけば、ちゃんとときめき続けることができるのではないかなと、現状出来上がっている脚本を拝見して思っています。大石さんがとても細やかに書いてくださっているので、「複雑だけど魅力的だなぁ…」とご覧くださるみなさまに感じていただけるのでは、と思います。

――まひろ役・吉高由里子さんの印象はいかがですか。

以前から、表情が豊かで、かなり繊細で確かなお芝居をなさる方だなという印象を持っていました。あとは、男女共に好かれるような天性の人柄の良さをお持ちなのだろうなと思っているのと、くったくがなくオープンに見えて、笑顔をフッとやめた瞬間には少し謎めいた部分を感じる方だなという印象でした。まひろは、明るくてかわいいだけではなくて、ちょっと面倒くさいところもある女性として描きたいという思いがあったので、吉高さんが持つ良い意味での“複雑性”に強く惹(ひ)かれました。実際に演じられている「まひろぶり」のすばらしさには、何も言うことはありません。現場を温めてくれるユーモアと思いやりも含めて、本当にこのうえない主役と、感謝しています。

――これから「光る君へ」をご覧になるみなさまにメッセージをお願いします。

今回この作品を制作するにあたって平安時代のことをいろいろと調べていると、意外と現代に近い感覚があるのではないかと感じることが多くて、私はいつも驚きの連続です。その一つが、「何を求めて生きるのか」ということ。恋愛的な幸せだったり自分の出世だったり家族の繁栄だったり、そういう欲求はいつの時代も変わらないのだということが見ている方にも伝わったらいいなと思います。
また、ドラマ内の心情的なことからは外れますけれども、平安時代に成立した文字や文化などで現代にまで残っているものがかなり多くて、これは本当に奇跡に近いことだと思うんですね。当時の人たちがどのような思いをのせて、どのように自分らしさを出しながら、文字を書き、物語や和歌などを綴っていった書いていたのかということも、この作品を通して描いていきたいと思っています。

 

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