大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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双寿丸役 伊藤健太郎さん ~ずっと憧れていた“家族のあたたかさ”

平為賢(神尾佑)と共に大宰府に下ることになった双寿丸。盗賊から救ったことをきっかけに親しくなった賢子(南沙良)のことをどのように思っているのか、頻繁に訪ねるようになった為時邸は双寿丸にとってどのような場所になっていたのかなどを、演じる伊藤健太郎さんに伺いました。

――「光る君へ」の双寿丸はどのような人物だと思いますか。

すべてのことに対して、非常に誠実でまっすぐな好青年だなと感じます。基本的に笑顔ですし、わりとハッキリものを言うところもいいですよね。双寿丸は「光る君へ」のオリジナルキャラクターなので、脚本に書かれたセリフやト書きなどから想像を膨らませて役柄を作っているのですが、彼には身寄りがありませんので、やはり非常につらい時期があったでしょうし、一人で涙を流してしまう日もあったと思います。なので、“家族のあたたかさ”は、双寿丸にとって憧れの存在だったと思います。

例えば、賢子とまひろの親子のやりとりを、双寿丸はほほ笑ましく見ているんです。双寿丸の誠実さを大切に演じ、賢子の家では、「求めていたものにようやく触れられた」という感情を丁寧に表現したいと考えています。

――「憧れていた家族のあたたかさ」に居心地の良さを感じたのですね。

そうだと思います。自分の育ってきた環境を悲観的に捉えているわけではないけれども、「こんなにゆっくりごはんが食べられる場所があるのか」「こんなにあたたかい家もあるんだ」と、おそらく初めて目の当たりにしたことがたくさんあったと思います。そういう感情は非常に大切にしたいなと思いました。
賢子の家族は基本的にフラットな人たちで、まひろも「いいんじゃないの」と言ってくれたりもするので、心を開きやすい家族だったというのもあると思います。いとだけは最初、「こんなやつを家にあげていいんです!?」という感じでしたけど(苦笑)。

――いとと双寿丸の関係性も独特でおもしろいですよね。

そうですね(笑)。最初こそ毛嫌いされている感じがありましたけれど、なんだかんだ言いながらもだんだん双寿丸を受け入れてくれている感じはします。言葉では、「何しに来たの!」「早く出ていきなさいよ!」などと言われますけれど、僕が「あんたの飯がうまいから」と答えたら「まぁ、口がうまいこと!」ってちょっと慌てたりとかして、いいですよね(笑)。いとと双寿丸の関係性、僕はすごく好きです。

――賢子のことはどのように思っていますか。

たぶん双寿丸は、例えば「貴族だから」というように、「◯◯だから」という感覚で人を見る人間ではないので、最初は正義感で助けたし、自分に親切にしてくれる人という印象だったと思います。それが、一緒にいる時間が増えるほど賢子が双寿丸に懐いてくれて、だんだんと、「こんな妹がいたら楽しかっただろうな」と思うようになったのかなと。賢子の家をよく訪ねるのには、シンプルに「おなかがすいているから」という理由もあったと思うんですけど(笑)、賢子のことは“かわいい妹”として接していると思います。

――賢子が好意を寄せてくれていることには、気づいているのでしょうか。

感じているとは思います。でも、やっぱり双寿丸としては「妹」みたいな存在と思っているので、思わせぶりな態度を見せてしまうのは良くないし、ちゃんと線は引いておかないと誠実ではなくなってしまうという思いがあるので、適度な距離感を保とうとしているのだと思います。

――大宰府に行くと知らせたとき、「わたしも一緒に行く」と言った賢子の思いをどのように感じましたか。

本当はうれしかったと思うんですよ。でも、戦場(いくさば)へ行くことになりますから、無責任に「じゃあ一緒に行こう」とは絶対に言えない。何があるかわからない場所だし、双寿丸の性格であれば、任務として守るべき人がいたとしても、賢子を優先的に守ってしまうと思うんです。それはやはりよくない。だからハッキリと「ダメだよ」と諭したのだと思います。あのあと賢子がまひろに「フラれた」という解釈で相談しているので、そういう思いにさせてしまったのは申し訳ないなと思うけれども、双寿丸としては、懐いてくれたかわいい妹が「一緒に行きたい」と思ってくれたことはすごくうれしかったと思うし、やはりあの家は、本当に居心地の良い場所だっただろうと思います。

――賢子たちが開いてくれた送る宴(うたげ)では、どのような思いになりましたか。

楽しかったし、夕方の日差しも入って、とてもステキな時間でした。カメラが回っていないときもみんな仲良く話をしていて、その景色を見たときにふと、「双寿丸が感じたあたたかさってこれなんだな」と思ったりもして。「光る君へ」の撮影に途中から参加した僕と、出来上がった家族の中に途中から入った双寿丸の感情がリンクして、胸にくるものがありました。
双寿丸は下っ端の中の下っ端だし、どこかへ戦に行くとなっても、今まで宴みたいなものを開いてもらったことはなかったと思います。また捨て子として育っているので、家族のような存在から「頑張っておいで」と言われたこともなかったと思うんですよ。もちろん生きる中で誰かに優しくしてもらったことはあると思うけれども、人からの“無償の愛”みたいなものに触れたのは、これが初めてだったのかもしれない。そう考えると、双寿丸にとってこの宴は、忘れることのない、非常にうれしいひと時だったのだろうと思います。

 

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