狂犬病予防法
第一章 総則
この法律は、狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及びこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図ることを目的とする。
この法律は、次に掲げる動物の狂犬病に限りこれを適用する。
ただし、第二号に掲げる動物の狂犬病については、この法律の規定中第七条から第九条まで、第十一条、第十二条及び第十四条の規定並びにこれらの規定に係る第四章及び第五章の規定に限りこれを適用する。
犬
猫その他の動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏及びあひる(次項において「牛等」という。)を除く。)であつて、狂犬病を人に感染させるおそれが高いものとして政令で定めるもの
都道府県知事は、当該都道府県内の地域について、前項の規定によりこの法律の一部を準用する必要があると認めるときは、厚生労働省令の定めるところにより、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならない。
都道府県知事は、当該都道府県の職員で獣医師であるもののうちから狂犬病予防員(以下「予防員」という。)を任命しなければならない。
予防員は、その事務に従事するときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人の求めにより、これを呈示しなければならない。
第二章 通常措置
犬の所有者は、犬を取得した日(生後九十日以内の犬を取得した場合にあつては、生後九十日を経過した日)から三十日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地を管轄する市町村長(特別区にあつては、区長。以下同じ。)に犬の登録を申請しなければならない。
ただし、この条の規定により登録を受けた犬については、この限りでない。
市町村長は、前項の登録の申請があつたときは、原簿に登録し、その犬の所有者に犬の鑑札を交付しなければならない。
犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければならない。
前各項に定めるもののほか、犬の登録及び鑑札の交付に関して必要な事項は、政令で定める。
予防員は、前項の抑留を行うため、あらかじめ、都道府県知事が指定した捕獲人を使用して、その犬を捕獲することができる。
予防員は、捕獲しようとして追跡中の犬がその所有者又はその他の者の土地、建物又は船車内に入つた場合において、これを捕獲するためやむを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において、その場所(人の住居を除く。)に立ち入ることができる。
但し、その場所の看守者又はこれに代るべき者が拒んだときはこの限りでない。
何人も、正当な理由がなく、前項の立入を拒んではならない。
第三項の規定は、当該追跡中の犬が人又は家畜をかんだ犬である場合を除き、都道府県知事が特に必要と認めて指定した期間及び区域に限り適用する。
予防員は、第一項の規定により犬を抑留したときは、所有者の知れているものについてはその所有者にこれを引き取るべき旨を通知し、所有者の知れていないものについてはその犬を捕獲した場所を管轄する市町村長にその旨を通知しなければならない。
市町村長は、前項の規定による通知を受けたときは、その旨を二日間公示しなければならない。
前項の場合において、都道府県は、その処分によつて損害を受けた所有者に通常生ずべき損害を補償する。
第三章 狂犬病発生時の措置
狂犬病にかかつた犬等若しくは狂犬病にかかつた疑いのある犬等又はこれらの犬等にかまれた犬等については、これを診断し、又はその死体を検案した獣医師は、厚生労働省令の定めるところにより、直ちに、その犬等の所在地を管轄する保健所長にその旨を届け出なければならない。
ただし、獣医師の診断又は検案を受けない場合においては、その犬等の所有者がこれをしなければならない。
保健所長は、前項の届出があつたときは、政令の定めるところにより、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、厚生労働大臣に報告し、且つ、隣接都道府県知事に通報しなければならない。
都道府県知事は、狂犬病(狂犬病の疑似症を含む。以下この章から第五章まで同じ。)が発生したと認めたときは、直ちに、その旨を公示し、区域及び期間を定めて、その区域内のすべての犬に口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じなければならない。
第九条第一項の規定により隔離された犬等は、予防員の許可を受けなければこれを殺してはならない。
第八条第一項に規定する犬等が死んだ場合には、その所有者は、その死体を検査又は解剖のため予防員に引き渡さなければならない。
ただし、予防員が許可した場合又はその引取りを必要としない場合は、この限りでない。
都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において、そのまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、期間及び区域を定めて予防員をして犬の一せい検診をさせ、又は臨時の予防注射を行わせることができる。
都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、期間及び区域を定めて、犬又はその死体の当該都道府県の区域内における移動、当該都道府県内への移入又は当該都道府県外への移出を禁止し、又は制限することができる。
都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において緊急の必要があると認めるときは、厚生労働省令の定めるところにより、期間を定めて、狂犬病にかかつた犬の所在の場所及びその附近の交通をしや断し、又は制限することができる。
但し、その期間は、七十二時間をこえることができない。
都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、犬の展覧会その他の集合施設の禁止を命ずることができる。
都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、予防員をして第十条の規定によるけい留の命令が発せられているにかかわらずけい留されていない犬を抑留させることができる。
前項の場合には、第六条第二項から第十項までの規定を準用する。
厚生労働大臣は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急の必要があると認めるときは、地域及び期間を限り、都道府県知事に第十三条及び第十五条から前条までの規定による措置の実施を指示することができる。
第四章 補則
公衆衛生又は治安維持の職務にたずさわる公務員及び獣医師は、狂犬病予防のため、予防員から協力を求められたときは、これを拒んではならない。
削除
この法律又はこの法律に基づく命令の規定による処分及び手続その他の行為は、当該行為の目的である犬等について所有権その他の権利を有する者の承継人に対しても、またその効力を有する。
この法律中「都道府県」又は「都道府県知事」とあるのは、地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項の規定に基づく政令で定める市については、「市」若しくは「市長」又は「区」若しくは「区長」と読み替えるものとする。
ただし、第八条第二項及び第三項並びに第二十五条の三第一項の規定については、この限りでない。
前条の規定により地域保健法第五条第一項の規定に基づく政令で定める市又は特別区の長が行う処分(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務(次項及び次条において「第一号法定受託事務」という。)に係るものに限る。)についての審査請求の裁決に不服がある者は、厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができる。
地域保健法第五条第一項の規定に基づく政令で定める市又は特別区の長が前条の規定によりその処理することとされた事務のうち第一号法定受託事務に係る処分をする権限をその補助機関である職員又はその管理に属する行政機関の長に委任した場合において、委任を受けた職員又は行政機関の長がその委任に基づいてした処分につき、地方自治法第二百五十五条の二第二項の再審査請求の裁決があつたときは、当該裁決に不服がある者は、同法第二百五十二条の十七の四第五項から第七項までの規定の例により、厚生労働大臣に対して再々審査請求をすることができる。
第二条第三項、第八条第一項及び第二項、第九条第二項、第十条から第十三条まで、第十四条第一項、第十五条から第十七条まで、第十八条第一項、同条第二項において準用する第六条第二項、第三項、第五項及び第七項から第九項まで並びに第十八条の二第一項の規定により地域保健法第五条第一項の規定に基づく政令で定める市又は特別区が処理することとされている事務は、第一号法定受託事務とする。
第十八条第二項において準用する第六条第七項及び第八項の規定により市町村(地域保健法第五条第一項の規定に基づく政令で定める市を除く。)が処理することとされている事務は、第一号法定受託事務とする。
第五章 罰則
次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
第五条の規定に違反して犬に予防注射を受けさせず、又は注射済票を着けなかつた者
第九条第二項に規定する犬等の隔離についての指示に従わなかつた者
第十条に規定する犬に口輪をかけ、又はこれをけい留する命令に従わなかつた者
第十一条の規定に違反して犬等を殺した者
第十二条の規定に違反して犬等の死体を引き渡さなかつた者
第十三条に規定する犬の検診又は予防注射を受けさせなかつた者
第十五条に規定する犬又はその死体の移動、移入又は移出の禁止又は制限に従わなかつた者
第十六条に規定する犬の狂犬病のための交通のしや断又は制限に従わなかつた者
第十七条に規定する犬の集合施設の禁止の命令に従わなかつた者
この法律は、公布の日から施行する。
この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。