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これに対して地裁判決は、 ❶「犯人の検挙や処罰よりもまずは当該動画の拡散を防止してもらいたいとの気持ちを有するのは自然な心情であるから、たとえ本件被害申告の主たる目的が性 的動画の拡散防止にあったとしても、何ら不自然なことではない」 ❷「(警察に対して当初1回目の口腔性交を話さなかったことについて)Xの当時の心情は、刑事手続に初めて携わる若年者の心情としても、自責の念を抱きやすい性被害に遭った者の心情としても十分理解し得る」 ❸「(なめさせられたのは3名であった等事実に反する内容を申告していることについて)被害直後の段階では混乱や動揺から抜け出せず、被害を思い出すことにも苦痛が伴うであろうことは想像に難くない」 という理由を挙げて、虚偽供述の動機があるという弁護人の指摘を排斥しているのだが、高裁判決は、地裁の判断を「一応の検討を加えてはいるものの、やや的外れなもの」とした上で、次のように厳しく批判している。 ①原判決の説示は、それぞれ当時のXの心情を、自然で、理解し得、想像に難くないという、Xの証言が真実であるとして説明が付けられるかという方向から検討したものにとどまり、弁護人の指摘に対して直接応答するものとはなっておらず、この点を十分に検討した形跡がない。 ②原判決は、Xが1回目の口腔性交を殊更隠すつもりで供述していたとは認められないとするが、X自身、(捜査をやめられて、動画の拡散を止めることができなくなったら困るという理由で)警察に話していなかった1回目の口腔性交については、話さないといけないとは思いながらも、最初に言ってなかったから言えないという気持ちであったと証言しており、(被告人ら逮捕後の)検察官の事情聴取の際に話をするまでは殊更隠すつもりであえて供述しなかったことに疑いはなく、そのようには認められないとの原判決の判断は、明らかに証拠に反している。 ③そうすると、Xには、誇張、誇大な供述をし、あるいは、実際にはあった事実を伏せて矮小化した供述をするなど、虚偽供述をする動機があり、実際に虚偽供述に及んでいたことから、X証言の信用性判断に際しては、虚偽供述の可能性について、相当慎重に見極める必要があるにもかかわらず、原判決はかかる重要な視点から十分に検討をせず、Xの証言が真実であるとして説明が付けられるかという方向からの検討の仕方に偏ったものとなっているといわざるを得ない。 通常、被害者には虚偽供述の動機はなく、だからこそ被害者証言の信用性は容易に肯定されることが多いのだけれど、今回の場合、虚偽供述の動機があるだけでなく、実際に虚偽供述もしている以上(こんなことは滅多にないが)、その信用性は相当慎重に判断する必要があると、至極真っ当なことを高裁は説いている。 地裁判決は、上記のとおり検討の仕方にも問題があるし、その前提となる事実認定も不十分で、高裁は、(原判決が事実経過及びX証言の概要として認定した部分は、)「虚偽供述の動機があることを疑わせる重要な事実が漏れており、内容が不十分である」と指摘している。