大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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藤原彰子役 見上愛さん ~心のうちに秘められた思い

藤原道長(柄本佑)の長女として生まれ、12歳で一条天皇のもとに入内(じゅだい)した藤原彰子。物静かな雰囲気の彰子を演じるうえで意識していること、父・道長、母・源倫子(黒木華)の存在などについて、演じる見上愛さんに伺いました。

――「光る君へ」の出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

「本当に…?」と思いました。出演が決まる前に大石(静)先生をはじめとするスタッフの方々と面談をさせていただく機会があったのですが、そのときは私がどのような人かを知る時間という感じで、役の説明などは特になかったんです。もちろん大河ドラマに関する面談であることは知っていましたけれど、後日、藤原彰子という役をいただけてびっくりしました。

――大河ドラマ初出演ですが、クランクインの前にプレッシャーのようなものは感じましたか。

放送されているドラマを見ながら、「私はいつから撮影に参加するんだろう」「ちゃんと馴染(なじ)めるかな…」みたいなソワソワした感じはありました。すべてのことが初めてすぎてプレッシャーを感じるというよりは「とりあえず飛び込んでみよう!」という気持ちのほうが強かったです。本当にすばらしいお芝居をされる方しかいらっしゃらないので、きっと私がどんな失敗をしてもなんとかしてくださるだろうとある意味身を委ねるような思いで、「怖がらずにやってみよう!」という気持ちでクランクインしました。

――「光る君へ」の藤原彰子はどのような人物だと思いますか。

いまのところ「はい」と「仰せのままに」しか言っていないので、演じている自分でもまだ模索中です(笑)。脚本のト書きには、「◯◯だと思ってはいるが顔には出ない」とよく書いてあるのですが、演出のみなさんと話し合って、「いろいろなことを考えすぎた結果、何も言えない」という方向で役づくりをすることになりました。表現方法がわからないというか、そもそも自分が無表情であることもあまりわかっていないのかなと思うんです。親が困っているのを見て彰子なりに努力をするけれどもうまくいかない、みたいな感じですかね。歴史的には強くて聡明(そうめい)な女性という印象のある方なので、今後どのように変化していくのか楽しみです。

――演じるうえで意識していることはありますか。

私は彰子とは逆で、思っていることが表情に出やすいタイプなので、気を付けています。あとは、人とあまり目線を合わせないことと、会話の間の悪さも意識しています。相手の方が気まずそうな顔をしてシーンが終わることがすごく多いんです。撮影中も、脚本にはそんなト書きはないのに道長さんが立ち上がってどこかに行ってしまったり、(赤染)衛門さんが「どうしましょう…」という顔をされていたりするんですよね。「わかるわぁ」と思います。だって私も気まずいですから(苦笑)。

――父・道長はどのような人物だと感じますか。演じる柄本佑さんの印象も教えてください。

すごく怖くて威厳がある感じの父親ではないけれど、なんとなく“絶対的な存在”だとは思っている気がします。お母さんがお父さんを立てている姿を幼いころから見ていると思うし、お父さんが政治の真ん中にいる人だと完全に理解できているわけではないけれど、自分の入内(じゅだい)の際に後ろにたくさん大人がついてくるのを見たり、屏風(びょうぶ)にみんなの歌が貼られているのを見たりして察していることはあるのかなと。お父さんのことを信用しているけれども、畏(おそ)れみたいなものも若干抱いていると思います。
柄本さんは、誰にでもフラットに接する方という印象です。クランクインしてすぐのころに「おいくつですか?」と話しかけてくださって、年齡を答えたら、「10代にも見えますね!」と言ってくださいました。たぶん、それがお会いして最初の会話だったと思います。

――母・倫子はどのような人物だと感じますか。演じる黒木華さんの印象も教えてください。

倫子さんは、彰子が一生懸命話を聞こうとしたり、感情を表に出そうとしているけれどもうまくいかないことを理解して、一緒に練習をしようとしてくれる優しいお母さんです。お父さんが彰子に入内したらどうなるのかを説明するとき、「お母さんや田鶴(たづ)たちに会えなくなるんだよ」と話していたので、彰子はお母さんやきょうだいのことが好きで、大事に思っているんだなと思いました。
黒木さんとはいろいろとお話をさせていただいて、俳優というお仕事を始めた年齡が近いという共通点を発見したりしました。あとはやはり、「おいくつですか?」と聞いていただきまして(笑)。みなさん、「この人、12歳の役を演じているけど、何歳なんだろう」と気になるのだと思います(笑)。

――彰子は、「入内する」ということをどのように捉えているのでしょうか。また、一条天皇のことはどのように感じていると思いますか。

入内がどういうものなのかあまりよくわかっていないと思うんですよね。両親が決めたことだからそれでいいと思っているのだと解釈しています。自分が天皇と結婚することでお父さんがもっと権力を持つことも、完全に理解はできていないのだろうなと。
一条天皇に対しては、どうやら結構キュンキュンしてはいるみたいなんです。入内して初めてお会いしたときに天皇のお顔を見て、「え! めっちゃカッコいい!」と思ったけれどやはり表情には出ないということで、どういう塩梅(あんばい)で演じようか演出の方と相談しました。一条天皇もまだ20歳くらいだと思うのですが、彰子にはとてもスマートな大人に見えて、心惹(ひ)かれている部分があるのだろうなと思います。

――これまでの撮影で印象的だったことはありますか。

クランクインして最初の3日間は入内シーンの撮影だったのですが、とにかく衣装が重くてびっくりしました。立ち上がるだけでも本当に大変で、スタッフさんに「この衣装何キロあるのですか?」と伺ったら「20キロあります」と言われました。動くのは結構苦労しましたけれど、やはり映像で見るとかさね色目とかもすごく華やかで美しく、おもしろい文化だと感じました。

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