さまざまな苦難を懸命に耐え抜きながら、25歳でその生涯を閉じた藤原定子。父・道隆(井浦新)ら家族との関係性、一条天皇(塩野瑛久)と清少納言(ファーストサマーウイカ)は定子にとってどのような存在だったのかなど、演じた高畑充希さんに伺いました。
――「光る君へ」の藤原定子はどのような人物だったと思いますか。
頭がよくてユーモアもあって、ある意味カラッとしたたくましさのある人という印象です。演じていて思ったのは、平安時代は、男性以上に実は女性のほうが芯の強さを持っていないと生き抜けない時代だったのではないのかということです。特に定子は、もともと本人が強かったというよりは、環境に強くさせられた部分があったので、それを踏まえて慎重に役のことを考えました。家や保身のために動いている人物が多く登場するからこそ、一条天皇への愛の表現方法が少し違うだけで途端に人物像が見えなくなる危うさを秘めている役だったと思います。政治のためだけに愛しているふりをしているというふうには見えないといいと思っていました。一条天皇への真実の愛を貫き通した女性だと感じています。
――父・道隆をはじめとする家族とは、どのような関係性だったと感じていますか。
父と母(貴子)の仲がとても良いからこそ、定子と兄・伊周、弟・隆家も仲が良くて、母は若干伊周を溺愛し過ぎていたけれど(苦笑)、キレイに整えられた家族だったと思います。けど父が、権力を手にした瞬間に人が変わったようになってしまって…。信じたくなかったですね。それまで父は、すごく神聖で完璧でカッコいい人だったので、とても見ていられないと思いました。私自身、道隆を演じていた(井浦)新さんのことが大好きなので、もし新さんがあんなふうに声を荒らげるようになってしまったら悲しくて記憶を改ざんしてしまいそうです。
父が亡くなってからは、あっという間に家族が崩れていってしまいました。とにかく伊周の激変ぶりがすごくて、見ていて痛々しかったですし、中盤あたりからは悲しいシーンばかりでしたね。母は伊周についていくことを選択してしまうし、弟も潔くいなくなってしまって、どんどん一人にされていく感覚が強くて、しんどかったです。
――精神的に追い詰められていく中、ずっとそばで支え続けてくれた清少納言はどのような存在でしたか。演じるファーストサマーウイカさんの印象も教えてください。
史実的にも今回の脚本的にも、定子と清少納言の関係には“女子同士の恋愛”に近い友情を感じました。天皇にも一時的に見放されて、頼れる人がいなくなったときに救いの手を差し伸べてくれたのが少納言だったという印象です。最初のころは、“主人”と“仕える人”という適度な距離感があったと思うんですけれど、自分の宿命に絶望して定子が命を諦めようとしてしまったときに少納言が活を入れてくれたあたりから、強い友情が芽生え始めたような気がしています。私にとって少納言は、「荒波の中で唯一つかむことができた花」みたいな存在ですね。
ウイカちゃんとは以前も共演経験があり、気心の知れた仲なのですが、いつも私を立ててくれるといいますか、丁寧に接してくれるんです。撮影中はずっと「定子様」と呼ばれていましたし、プライベートでも定子と清少納言のもう少しラフな感じの関係性を築いてくれたので、良い意味でフラットな気持ちで撮影に臨むことができました。ウイカちゃんのおかげだなと思っています。
―― 一条天皇はどのような存在でしたか。
とにかく愛していただきました。一条天皇は若いので定子のことを「好き! 好き!」というテンションできてくれるんですけれども、定子としては「このいとしい人のために私はどうしてあげればいいのだろう」と、もう少し大人な愛情を向けていたのかなと思います。とにかく一条天皇はピュアなんですよね。いい人なんですけれど、私情と政(まつりごと)の間に挟まれて、しんどいだろうなと思います。
この間、一条天皇役の塩野(瑛久)くんが言っていたのですが、やっぱり天皇は位が高いので、基本的にみなさんと御簾(みす)越しで会話をすることになるんです。だから、貴重な話し相手だった定子が精神安定剤だったのに先に亡くなってしまい、とても孤独だと。私がクランクアップする当日まで「本当につらい」と言っていて、すごく後ろ髪引かれる思いでした (苦笑)。これからはいち視聴者として応援したいと思います。
――25歳で幕を閉じた定子の人生を、高畑さんはどのように思われますか。
「光る君へ」をご覧になった方それぞれに考え方は違うと思いますけれど、私としては、“最期までちゃんと燃え尽きた”という印象です。すべてのことに全力で向き合った人生だったなと感じますね。定子として生きる中で、自分ではない誰かに引っ張られてギリギリの状態で立っている感覚がすごく強くて、もう少し楽に生きる方法もあったのではないかと思わなくもないんですけれども、私は、激動の人生を懸命に駆け抜けた定子の生き方は好きだなと思います。目の前のことに必死に生きていたら撮影が終わってしまった、という印象です。