三条天皇(木村達成)を東宮のころから献身的に支えてきた藤原娍子。不遇の時期も多かった天皇の后(きさき)としてどのように振る舞おうと努めていたのか、左大臣・藤原道長(柄本佑)のことをどのように思っていたのかなどを、演じた朝倉あきさんに伺いました。
――「光る君へ」の出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
もともと平安時代も、紫式部が書いた『源氏物語』も大好きだったので、「光る君へ」の制作が発表されたときから「ご縁があればいいな」と思っていたのですが、それが実現する見込みは薄そうな気配のまま2024年になり、放送が始まり…。いち視聴者として毎週楽しみに見ながら「出たい」という思いをさらに強くし続けていたある日、「出られます!」と連絡をいただいてびっくりしました。もうそのころにはかなりのファンになっていたので、信じられない気持ちも大きかったのですけれど、すばらしいと確信している世界に飛び込めることがうれしかったです。
――娍子は、三条天皇のことをどのように支えようと努めていたと思いますか。
三条天皇の中に悪いものがたまって爆発してしまわないか心配しながら、すごく複雑な思いを持ってそばにいたのかなと思います。また息子の敦明もやんちゃな子だったので(苦笑)、とにかく幸せな家族を壊さないように、自分ができることを一生懸命やろうという思いを抱いている人物だと思いながら演じました。娍子は、自分が心配していることは三条天皇に悟らせないようにしながらも、彼の心をあたためられる存在でありたいと常に自分の気持ちを整えておこうとしているような、賢い人だったと思います。
――左大臣・藤原道長のことは、どのように思っていましたか。
正直、道長さんのことはずっと「この人、怖い」と思っていたと思います。自分が不安定な立場だと悟ってしまっているからこそ、そういうふうに見えてしまっていたのではないかと個人的には分析していて。あの人、表情がないので、目的が見えないんですよね。とてつもなく久々に顔を見せに来たとしても、悪びれる様子もなく堂々としているし…。宮中でも一定数、「道長さんの最終的な目的が見えない。自分が偉くなることを目指しているのかわからない」と、不安視している声があったと思うので、娍子としても「何を考えているかわからない=怖い」となっていたのかなと。だからこそ、敵に回さないように、道長の娘・妍子が敦明に近づいているところを目撃しても、穏便に済ませようと判断したのだと思います。
――立后の儀の際も、出席者が極端に少なく、さみしかったですね。(第42回)
そうですね。落差を思い切りつけられた場面ではありましたけれど、政治的権力を見せつけられるとはこういう感じなのかとも思って、誤解を招く言い方にはなってしまうかもしれませんが、おもしろいなと思いました。
実際にあった出来事ですから、本当にあの場にいた娍子の気持ちを考えるとつらかっただろうと思いますし、より一層「道長を敵に回してはいけない。自分が何かを感じて波風を立ててはいけない」と思ったでしょうね。
あの場面、とても豪華でキレイな装束を着て、冠までつけさせていただいていたのに一瞬で脱ぐことになってしまって、それもさみしかったです。すごく楽しみにしていた装束だったのに、娍子としては何も楽しい気持ちにならなくて…悔しいです(苦笑)。
――三条天皇が病におかされていると知ったあとは、どのように支えようとしていたのでしょうか。
起きてしまったことはすごくショックだけれども、自分以上に苦しいのは三条天皇のはずなので、これ以上不安をあおらないように努めていました。そうすることしかできなかったですね。最後のほうは怒涛(どとう)の勢いで撮影をさせていただいたのですけれど、「お互いがどのように思っているのか」「運命にどうあらがおうとしているのか」というような思いを言葉にしなくてもわかり合えて、木村(達成)さんと阿吽(あうん)の呼吸で駆け抜けることができたような気がしています。
――譲位を決意した三条天皇と過ごした際、そして「闇を共に歩いてくれて、うれしかった」という言葉を聞いた娍子の涙の理由をどのように解釈されていますか。
「頑張りすぎないで」と思いながら共に過ごしてきたので、三条天皇から“譲位”という言葉を聞いたときには、「おつかれさま」という気持ちが一番大きかったと思います。けれどもそれと同時に、不遇であり続ける三条天皇のことを想(おも)って、娍子にも急に悔しさが湧き上がってきてしまったような気がしています。安堵(あんど)であったり、悔しさであったり、一気にあふれたさまざまな感情が娍子の中でぐちゃぐちゃに混ざり合い、それで涙が出てしまったのかなと私は思っています。
「闇を共に歩いてくれて、うれしかった」という言葉を聞いたときには、少し笑顔も出たんですけれど、やはり自分にとって生涯をささげた人が亡くなる瞬間でしたので、とにかく本当に悲しかったです。
――木村さんのクランクアップの際に駆けつけたと伺いました。
はい(笑)。私は先にクランクアップしていたんですけれども、どうしても駆けつけたくて。木村さんに喜んでいただけたので、勇気を出して行って良かったです。ご一緒できたのは少しでしたが、木村さんのすばらしいお芝居を娍子としてそばで見ることができたのは本当に幸せなことだったと思っています。