大河ドラマ「光る君へ」

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敦康親王役 片岡千之助さん ~“悲劇的”だけではなく、愛も受けた人生

一条天皇(塩野瑛久)と皇后定子(高畑充希)の第一皇子として生まれながら、不遇の生涯を送った敦康親王。東宮になれなかったことをどのように思っていたのか、養母となった中宮彰子(見上愛)はどのような存在だったのかなどを、演じた片岡千之助さんに伺いました。

――「光る君へ」の出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

大河ドラマは、いつか出演したいと思う目標の場所でしたので、とてもうれしかったです。しかも、実は「光る君へ」の制作が発表されたときに、「この作品に出てみたいな」とひそかに思っていまして。というのも、歌舞伎でも『源氏物語』はよく取り扱われる題材で、かねてより『源氏物語』と光源氏に対して強い意識、「演じてみたいな」という思いを持っていたんです。「何か光源氏に通ずるような役があればやりたいな」と思っていたところ、今回まさしく“義理の母に育てられた皇子”という、光源氏の境遇に似た人物としてお話をいただけてびっくりしましたし、夢がかないました。

――敦康親王はどのような人物だと思いましたか。

客観視したら悲劇的というイメージを持たれると思うんですけれども、今回演じてみて、いろいろな人からちゃんと愛情を受け取って育ったのだと感じました。誰も周りにいなくておいてけぼりにされたのではなく、信頼できる人もいるし、家庭も持てました。20歳で寿命が尽きるとは思っていなかったと思うので、「もうちょっと生きたかったな。娘の成長を見られないのは悔しい」という思いはあったかもしれないけれど、僕としては決して悲劇的なだけではなかったのかなと思います。それを特に感じたのは、昔は消え入りそうで感情も表に出さなかった彰子が、今では国母(こくも)にふさわしい風格をお持ちになっているのを見たとき。すごくホッとしたんですよね。僕が東宮になれないとわかって道長に反抗するようになったりとか、ああいう姿を敦康としては願っていたので、ホッとした気持ちで最期を迎えられたことは良かったのではないかなと思います。

―― 一条天皇と定子の第一皇子として生まれながら東宮になれなかったことを、敦康親王自身はどのように感じていたのでしょうか。

もちろん継げなかったことへの悔しさはあります。生まれたときから期待されて育っているので、お父さんの仕事を見ながら自分の中で理想の天皇像をつくり上げていたわけです。だからこそ肩透かしではないですけれど、「僕じゃないんだ…」と落胆するような思いはありました。別に権力を欲しているとかではないにしても、「トップに立ちたい」という思いは向上心があればつきまとうものだと思うんです。僕自身も家を継ぐという立場に生まれているので、自分に重ねたら、残念でさみしい気持ちになっただろうなと思います。

――父である一条天皇は、どのような人物だと感じましたか。

僕、一条天皇に一度しかお会いしてないんですよ。しかもクランクアップの日(笑)。『源氏物語』の朗読会だったんですけれども、現場で、「あ、お父さんだ! 敦康です! よろしくお願いします!」とご挨拶(あいさつ)した数時間後に、「一条天皇、クランクアップで~す!」と言われて、「えぇ!!」って(笑)。定子さんに会えなかったのも悔しいですけど、一条天皇との対面が一度だけというのもちょっとショックでしたね(笑)。「父に叱られてみたかった」という敦康のセリフがありましたが、近くて少し遠い独特の距離感をリアルに感じたような気がしました。

一条天皇と敦康は、繊細さが似ている親子だと感じました。自分の気持ちはあるけれど、裏でうごめく思惑に振り回されて、最終的に意志が通せないつらさは痛いほどわかるなと。だけれども人間としてひねくれることはなく、帝(みかど)としてひたすらまっすぐなままだったというのが、すばらしいなと思います。

――中宮彰子は、どのような存在でしたか。

お母さんのようであり、お姉さんのような人でもありました。もちろん定子さんと彰子さんに対する想(おも)いは別物ですけれど、母親がいないからこそ彰子に母性を求めたり、甘える部分はあったのかなと思います。彰子もそれをちゃんと受け止めてかわいがってくれたので余計に。敦康にとって定子さんは気がついたときにはもういない存在で、ききょうとか周りの人からお話を聞いて「母上は、僕が東宮になれなかったことをどう思うだろうか」と思ったりもしたと思うんですよね。そういう部分でも、彰子にはもう手が届かない存在を追い求める気持ちといいますか、ないものに対してすがる思いと、控えめな彼女を守りたいという思いで見ていた気がします。

敦康が小さいころ、彰子がお菓子をくれて、周りには見せない笑顔を唯一見せてくれたりしたじゃないですか。あのシーンを見た友人から、「あの内緒はやばくないですか!?」という大興奮の連絡が来たのですが(笑)、ああいう愛情を彰子はずっと注いでくれて、それに何か応えたいという思いで敦康は育ったのだと思います。

――ちなみに、客観的に放送をご覧になって好きな登場人物はいますか。

まずは、ファーストサマーウイカさんが演じる、ききょう。最初から良い意味で強烈なインパクトがありましたし、清少納言は今回の作品にかけがえのない存在だと感じます。一緒にお芝居をさせていただいたときも、東宮になれなかったとわかった際に「まだ諦めてはいけません」と強く言われたので、「すごいパワーだな」という印象が強く残っています。

あとは、同じシーンはありませんでしたが、黒木華さんが演じる倫子さん。まひろと道長の関係性に勘づいていく女性の怖さがリアルですよね。あの目の利かせ方、小さい社会の中でギラギラ生きている感じがすごいなと。そういう意味で、「光る君へ」は、政(まつりごと)の世界で生きる女性の強さや怖さがとても生きる作品だなと思います。

 

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