大宰府にてまひろ(吉高由里子)と再会するも、刀伊(とい)による襲撃に巻き込まれて生涯を終えた周明。越前編からおよそ20年を経て周明の死生観はどのように変化していたのか、まひろに対してどのような想(おも)いを抱いていたのかなど、演じた松下洸平さんに伺いました。
――周明が再登場する第45~47回の脚本を読んだ感想を教えてください。
「まひろを助けて身代わりになる」ということは、実はだいぶ前から聞いていましたし、大宰府編の衣装合わせのときに、「まひろを助けて死んで、そのまま置き去りになるよ」と演出部から聞いて、「あ、置き去りになるんだ」とは思っていたんですが、脚本をいただいたら想像していた以上に悲しい最期でした。でもだからこそ、周明のまひろへの想いや彼の人生をまっとうして、しっかりと終わりにできるように演じなければと思いました。
――大宰府での周明は、まひろに対してどのような想いを抱いていたのでしょうか。
越前でかなり乱暴な別れ方をしてしまったということへの懺悔(ざんげ)の気持ちはありながらも、思いがけず大宰府の市で成長したまひろと再会したときは、やはりうれしかったんだと思います。
政庁で隆家様がお茶を出してくださるシーンがあって、そのときに飲んだことのない宋の茶に興味津々のまひろを見て「懐かしいな」と思ったし、20年前は自分の気持ちに気がつけなかったけれど、再会して改めて「とてもステキな人だな」と思うからこそ、恋心が再熱した感じはしました。
しかも聞くところによると独り身だということだし、もちろん道長への想いも知っているけれども、今度こそ自分の想いを伝えたいと思ったのではないかと思います。お互いにいい歳(とし)ですし、具体的にどうなりたいとかではなく、特別な想いがあることを伝えたかったのだろうなと思って演じました。
――20年という年月の経過を、どのように表現しようと思いましたか。
あまり難しく考えないほうがいいかなと思っていました。もちろん20年の間にいろいろなことがあったとは思いますが、それらを経た結果、気の優しい周明になりました(笑)。今はもう昔のような葛藤もないのでわりと笑顔も見せるし、書く気力を失ったと話すまひろに対して、「俺のことを書くのはどうだ」なんて冗談を言ったりもできるようになっているし。あと、「もう私には何もない」と言ったまひろに対して「まだ命はある」と返したのもステキだなと思いました。20年前の周明は「自分はいつ死んだって構わない」と思って生きていたんですが、あのときに、まひろに「死という言葉をみだりに使わないで」と怒られて考え方が変わったんだと思うんです。だから今度は自分が励ます番だと考えたのだろうと思うと、このセリフはすごく大切なセリフだと感じていました。月日が経過して、憑(つ)き物が取れて、ホワっとしたお医者さんになった周明の姿をたくさん見せたいと思いました。
――まひろが物語を書く女房になっていること、そしてどうやらその物語によって隆家が追いやられたらしいという話を聞いて、どのように思いましたか。
あまりにも状況がつかめないというか、違う国の話をしているみたいな感覚でした。でも今回はそれでいいかなと思っていて。『源氏物語』をよく知らない人も当時だっていたと思うし、まったく蚊帳(かや)の外の人間だからこそ、まひろに対して客観的にものが言える立場であったと思うんです。「よくわからないけれど、こんなの書いてみれば?」とか、良い意味で軽く言える周明のような存在が今のまひろには必要で、背中を押すきっかけになれていたらいいなと思います。
――周明の人生はどのようなものだったと感じていますか。
周明は幼いころに親に捨てられてしまい、“愛情”という“一番信じるべきもの”を失った状態で育ってきました。とても大げさな言い方をすると、その人の人生は、「どういう愛情を受けて育ったか」で決まるのではないかと思うんです。だけれども、周明はその“愛”を知らずに生きてきてしまった。宋に渡っても馬車馬のように働かされて孤独になり、良き師匠には出会えたものの、「自分の使命とは何なのか」「生きる意味とは」ということを常に考えていたので、20年前はまひろに向ける笑顔もすべて偽りの姿でした。でも月日を経て、しがらみがなくなった状態で、大切な人を守りながら亡くなったというのは結果良かったんじゃないかなとは思います。もちろん想いは伝えたかったですし、最良ではなかったと思いますけれど、天国で「まぁ良しとしよう」と思っているんじゃないかと思いますし、視聴者のみなさまにもそう思ってもらいたいです。
――乙丸に手をひかれて、去っていくまひろの姿を、どのような思いで見つめていたのですか。
命の尊さを教えてくれた人なので、自分の命を大切にしてほしいという思いがあるからこそ「逃げろ」と言ったのだと思います。だから「何があっても懸命に生きろよ」という思いを込めてずっと見ていました。先ほども言ったように、つらいけど、彼女を守って一生を終えられたなら、それはそれでいいかなとも思うし、でもやっぱり悲しくもなったし、今まであまり感じたことのない気持ちになりました。
――大河ドラマへの出演は、松下さんにとってどのような経験になりましたか。
今回は登場場面の限定された役ではありましたが、大河ドラマの現場に初めて入らせていただいて、主演の吉高さんの姿を見て、1年半かけてひとつの役をやりきるというのは俳優にとってすごく大きな経験なのだろうなと感じました。僕自身は時代劇もあまり経験がなく、勉強しないといけないことがまだまだたくさんありますが、もう少しいろいろな場所で力を蓄えて、いつか自分も1年半かけて生きることができる役に出会えたらいいなと思います。大きな目標をいただきました。