大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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藤原道長役 柄本佑さん ~「まだ終わりたくない」と思っています

平安の貴族社会で摂関政治の全盛期を築き、およそ30年間、公卿(くぎょう)たちの頂点に君臨した藤原道長。出家の道を選んだ際の心境や、摂政を引き継いだ嫡男・頼通への思いなどについて、演じた柄本佑さんに伺いました。

――クランクアップを迎えられたお気持ちを教えてください。

正直な話、まだ実感がわいていません。最終回まで放送が終わったときにどう思うのかはわかりませんが、今は心のどこかで「まだ終わりたくない」と思っているようなところがあって。この1年半ほど、大河ドラマの撮影に来ることが生活のベースになっていたので、それがなくなったらどうなるのか、今後の自分はどうしていくのか、全然想像ができない感じです。もはや「燃え尽きた」という感覚でもないというか(笑)。同じチームで1年半も一緒にやっていると、こういう不思議な気持ちになるんだなと思っています。

――第45回で出家することを選んだ道長ですが、どのような心境だったと解釈されていますか。

まひろが「大宰府に行く」と言った数シーン後くらいには出家しているので、だいぶショックだったのかなとは思いますよね(苦笑)。倫子には「体も衰えたから休みたい」と説明していましたけど、まひろがいなくなったショックもあるでしょうし、政治的なところも含めて「休みたい」というセリフにいくのがステキだなと思いました。すごく立派ではない感じが、またいいなと。そういう道長像が今回のねらいだったのだと思うし、僕自身、助けられたところです。

剃髪(ていはつ)は地毛でやらせてもらったんですけれど、不思議な感覚でしたね。剃(そ)り始めた最初は特にどうってことなかったんですけれど、徐々に剃った髪が降ってきて手の甲に当たったときに一気にグッときてしまって、触覚によって実感するものなのだなと。作品の中でこのような経験をさせてもらえることはなかなかないし、とても不思議な思いになりました。

 

――長かった髪がスッキリしていかがですか。

究極に快適です。ちょうど剃った日から気温が下がり始めて、普通の感じで過ごしていたら少し風邪気味になったりはしましたけれど(笑)、基本的にはかなり楽です。女性ですと、髪が長い方って多いじゃないですか。例えば僕の妻も髪が長いときは、お風呂上がりにドライヤーで乾かして、半乾きくらいで一度テレビを見ていたりするから、「全部乾かせばいいのに」と思っていたんですけれど、その理由がわかりました。ずっとドライヤーを持っていると、腕が疲れるんですね。長髪のときはそれがしんどかったので、今は本当に楽になりました。

――道長には、まひろ以外にも、妻である倫子や明子、そして真摯(しんし)に支えてくれている行成など想(おも)いを寄せてくれている人たちがいますが、それぞれのことをどのように思っていたのでしょうか。

行成さんからの想いには気づいていないふうにしようという方向性でやっていたので、道長としては悪気はなく、わりとシンプルに受け取って返している感じだと思うんですけれど、僕としては「気の毒なことをしているな」と思いながら接していました(苦笑)。

妻たちに関しては、倫子さんは“仕事仲間”、明子さんは“オアシス”的な感じだと思っていまして。だから倫子といざこざがあって明子のところに行くんだけれど、明子のところでもいざこざがあって、結局内裏(だいり)で寝泊まりすることになるという(笑)。

つまりどちらにも向き合えてないんですよね、道長さんは。常に少年のような心の人なので、倫子のところに行ってうまくいかなくて、「あちゃ~。明子のところに行こう」と思うけれども、明子のところでも「あちゃ~。ダメだった。内裏に行こう」みたいな。自業自得なんですけれど(苦笑)、そういうところでも今回の道長さんの持つおおらかさが出ていたらいいなと思っています。

 

――権力を手にしていく道長と父・兼家の姿がどんどん重なっていくような気がしていたのですが、どのように思いますか。

やっていることは同じだけど、気持ちは違うかなと思います。言ってしまうと、道長はずっと嫌だったんですよ。若いときに兄貴2人が亡くなって思いがけず政治に力をいれないといけなくなったけれども、権力を持ったり仕切ったりするのは、本当は向いていない人だったんだろうなって思うんです。いつの間にか仕事として政治を先導する立場になったけれども、本当はのんびりしていたかったのではないかというところが、兼家さんとは全然違うところだと思います。

 

――摂政となった嫡男・頼通に託したい思いはありますか。

頼通には期待もしているし、どこか自分に似ている部分も感じて、“民のための政治”を彼なら引き継いでくれるだろうと思っていました。けれどもこれは勝手な解釈ではあるのですが、「頼通にバトンタッチしたことが道長の最後の間違いだったのではないか」と演出陣と話していたんです。史実だと出家したあともだいぶ内裏に行っていたらしいですからね。今回はそういうシーンはないですけれど、結構いろいろな人から相談は受けていますし、政治面を陰のフィクサーみたいに牛耳れるだろうと思っていたら、結果的に息子に突っぱねられるという。かつて実資さんに「民の幸せなんて曖昧(あいまい)なものを求めるな」と言われたりしましたけれど、「でも頼通なら…!」と思っていたら、息子にも伝わっていなくて。まさか「父上はもう出家したじゃん。働いているのは僕です!」みたいなことを言われるとは思っていなかっただろうから、衝撃を受けたと思います。そういうこともあって、道長が最後に犯した間違いはこれだったのではないかという思いを、頭の片隅に置いて演じていました。

 

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