収録現場から出演者のコメントをお届けしてきた「君かたり」。動画内に収まりきらなかったコメントを含めて、藤原道長役の柄本佑さんにクランクアップ後にお話ししていただいた内容をテキスト版の「もっと、君かたり」としてお届けします。
――演じきった今のお気持ちを教えてください。
不思議な感じがします。クランクアップのあいさつで吉高(由里子)さんも言っていましたけれど、「光る君へ」の撮影に来る生活が基本になっていたから、それがなくなったらどんな感じなのかまだちょっと想像ができないです。もはや「燃え尽きた」という感じもないくらい(笑)。こんなに長い期間ひとつの役をやるというのも初めてだったし、1年半も同じチームで作品をつくることも初めてだったので、終わったんだなという実感がまだわいてこないです。
――改めて、「光る君へ」の藤原道長にとって、まひろはどのような存在だったと感じていますか。
これもまだ渦中のような気がして、全然振り返ることができないんですけれども(笑)。でも最後まひろに物語を語ってもらっているところなんかは、母と子みたいな雰囲気があったというか、道長さんが子どもになっていくような感じは受けました。ソウルメイトから始まり、仕事仲間となり、編集者と作家のような関係にもなり、最後はお母さんと子どもみたいな感じになって、いろいろな形に関係が変容していった気がしています。
最終的なことでいうと運命的に結ばれた二人だったのかなという感じはしますね。それをソウルメイトというのかもわからないけれども、偶然に出会わされたというよりは、必然で出会うべくして出会ったような、そんなふうにまひろと道長の関係性については考えました。
――特に印象に残っているシーンはありますか。
長いからなぁ…その時期その時期で印象的だったことはありますけれど、でも直近だとやはり剃髪(ていはつ)のシーンは印象に残っています。今回は地毛でやらせていただいて、ありがたいことに撮影スケジュールも髪がある状態を撮りきって、出家後また再スタートできたのはありがたかったです。出家前後で道長さんはまたちょっと違う次元に入るというか、むしろ出家後のほうが元気になるような印象で、見ようによってはむしろ前向きに人生を楽しむようになるというか。やらなきゃいけないことはいっぱいあるんですけれど、わりと軽やかに第二の人生のようなものに対してワクワクし始めるようなところはあったような気がしています。
実際にあれだけ伸ばしていた髪をいざ剃(そ)るとなったとき、当初は静かにいようと思ったんですけれど、やはりダメでしたね。剃られている音だけを聞いているときはまだ冷静だったのですが、髪が自分の手の甲に落ちたのを見たら急に実感してきてしまって、かなり緊張しました。
――藤原道長として過ごした時間は、柄本さんにとってどのようなものになりましたか。
今はまだわからないかなぁ。それこそこういったことに関しては10年とか20年たってから、「あのときの自分の仕事はああいうことだったのかな」とわかるような気もするんですよね。今はまだ最終回のオンエアまで見ていないこともあり、自分がやってきたことがどんなことだったかを実感しきれていなくて。ただ、いろいろなスタッフの方やキャストの方と面と向かってお芝居ができたこと、中でもまひろは特別ですよね。あの二人の関係性を1年半かけてずっとやってきましたけれど、自然と生まれてくる強固な絆みたいなものが出来上がっていく感覚がありました。
それはやはりほかの現場の比ではないくらい長い撮影期間の中で、大石(静)さんの一筋縄でも二筋縄でもいかないような脚本に挑む仲間としての「一緒に頑張ろうぜ」という思いがつくりあげたものだと思います。どんな時間だったかを感じるのはこれからだと思うけれど、吉高さんが非常にニュートラルな存在で現場にいてくれたことで僕もニュートラルにお仕事ができたなということは、今振り返って思います。
――出演者やスタッフたちから「吉高さんと柄本さんが先頭を走ってくれたからこそ良いチームワークがうまれた」とよく聞くのですが、柄本さんが感じた今回の現場の印象はいかがでしたか。
それはわりと相対的なもので、現場のみなさんはそう言ってくださいますけれど、僕からしたらみなさんステキな人たちばかりだから、完全に甘えさせてもらっていたという印象なんですよ。ただ本当におっしゃるように、良い緊張感もありながら全然いがみあうことがなく、変にぶつかったりもしない朗らかな現場でしたね。僕としてはすごく助かる現場だったなと思います。
――オールアップの瞬間までみなさん楽しそうでした。
楽しそうでしたね。集合写真を撮ったあとも各所で撮影会みたいになっていて、「こんなに名残惜しそうなのは始めて見た」とスタッフさんに言われたりとかして。うれしいですよ、そういう現場にいられたことが。自分がどうと言ってもらえるのもうれしいけれど、現場全体がそういう空気感になっていったのが一番うれしいかな。名残惜しいと思える場所に、自分もその中に仲間入りできたことがうれしいです。
◆君かたり