野々原なずな『男性恐怖症だった私がAV女優になるまでの話』
AV女優として活動する作者による、自伝的漫画である。
読者はタイトルに誘導されるまま、無垢な少女がAV女優になった理由を探ることになる。
きっかけは継父による性的虐待だった。
小学校低学年の頃から継続的にあったらしい。
継父とは別居(離婚?)するが、悪夢は終わらない。
暴力を継父から受けていた兄が、新居でおかしくなってしまった。
ずっと引き籠もってゲームをし、意味もなく大声で喚き散らす。
優しかった兄の豹変ぶりに「私」は動揺する。
壊れてしまった兄は「私」を餌食にする。
あの継父さえしなかった決定的な行為までなされる。
陽の光の当たらない私的な空間での、暴力の連鎖が恐ろしい。
本作のあらすじを追うと、どうしても深刻で悲惨な場面ばかり選んでしまうが、全体的に絵柄は可愛らしい。
表情豊かな「私」に読者は共感するし、明と暗のバランスは取れている。
でもやっぱり本作は救いがない。
唯一の例外は、古本屋で漫画に没頭する場面。
虚構の世界にしか救いがないのは悲しすぎる。
漫画はとんでもなく主観的なメディアだ。
「心象風景」と「現実」の区別をつけられない。
つけようがない。
この記事だって現実世界の事実に言及してるのか、作品の構成要素に言及してるのか、整理できないまま書いている。
でもそこが漫画の魅力だと考えると、本作はこの涸れかけたメディアから潜在能力を汲み出した力作と言える。


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