25.イベント4日目 人を呪わば
大量の生首が着弾した場所からは白い煙が延々と地面から噴きあがり続けており、煙の中はまだどうなっているか確認できない。
けど何か物が溶けるような音はずっと煙の中のあちこちから聞こえ続けている。
時間が経つと物が蒸発する音も鳴り止んでいき、共に煙も徐々に晴れ渡ってくる。
そしてクリアになった視界に移ったものは…何も無かった。
「これは…こっちに飛んでこなくて本当に良かったですわね」
流石にアンズも唖然とこの光景を見ている。
黒く焦げた地面が微かに白い煙を立ち込めさせている光景だけが残っており、広範囲にわたりそれ以外は何も無くなっている。
あそこにいたプレイヤーはもちろんの事、あの辺りにあった木製のロッジやプレイヤーの位置を知らせていたはずのスズムシのような化け物もいなくなっている。
あのトウモロコシは敵味方問わず諸共に全て溶かしてしまったようだ。
「そうだね。とりあえず先に他の人が手を明かしてくれてよかったと思うよ。とりあえず私達も行動に移そうか?」
アンズもうなずいているからわかってはいるようだけどまだあの光景から目が離せないでいる。
結構インパクトがあったからね、呆然とするのは止むを得ないかもしれない。
仕方ないからアンズが立ち直るまでは先に私の方で家の中を探索してようかな?
私は外を覗くのを止めてベランダから室内に入ろうと体を動かして…そこで動きを止めた。
…何かおかしい?
変に部屋の中から先ほどと空気が変わったような違和感を感じる。
さっき見た時は違和感はないと思ったけど今見ると何か変なような…。
あ、わかった。
頭だけの鹿の剥製だね。
少し見まわすとここだけが変わっているのがわかった。
最初に確認した時は目は上を向いていて口はしっかりと閉じてたはずだ。
今は目がグリンと回ってこちらを見下ろしており、口が半開きになって不気味な表情をこちらに向けているんだよね。
あれ、これってひょっとしてまずくない?
勝手に動くようなのって罠か化け物ぐらい…。
「やば!?」
私はすぐにベランダの壁まで移動するとアンズの水着を掴んで勢いよく壁の上まで押し上げる。
「ちょっとニミリ?いきなりなんですの!?水着に手をかけるなんて!」
前ばかり見ていたせいで状況が把握していないアンズは私の急な行動に理解できず慌てふためいている。
暴れるなって!時間ないのに!
「話は後!ここから飛び降りるよ!」
「え?」
とりあえず理解を全くしていないアンズは壁から下へ突き落す。
幸いここは二階みたいなので下手したら骨を折るかもしれないけど頭から落ちない限り死ぬことは無いでしょ?
…多分。
さて、アンズが重力にひかれて落下したのを確認したので私もこの場から飛び降りる。
幸い下の部分は土であったらしく足から地面に落ちたけど怪我は無かった。
怪我は無かったけど…ビーンと衝撃が下半身に走る。
これは先に落としたアンズは大丈夫だったかな?
少し周りを探すと…いたいた。
アンズは腕をさすりながら恨めし気な目で口をぷくーと膨らませながらこちらを見ている。
「ニミリーー!一体どういうつもりですの!?突き落とすのはひどいのではなくて?」
「いや何となく?」
「何となくで私はこんなに痛い目に会ったのかしら!?」
アンズにセーラー服の襟元を掴まれてがくがくと前後に揺らされる。
気持ちはわからないでもないけどとりあえずは落ち着いてほしい。
アンズの成すがままに頭をシェイクされ続けていると、頭上からさらさらと白い粉が落ちてくるのが視認できる。
…白い粉って何!?
がくがく揺らしてくるアンズの肩をガシッと力強く取り押さえて揺らすのを止めさせるとあわてて先ほどまでいたロッジの二階部分に視線をやる。
するとベランダが跡形もなく消えている…。
これはかなりまずいのではないのかな?
私はアンズをそのまま横に引きずり倒して一緒に床に転がり伏せる。
しばらくして私達のいた場所を虹色の光線が通り過ぎていく。
その光線は私達を探すようにしばらくあちこちを動かして照らし続けて…やがておさまる。
光線が通った後は…信じられない事に照らされた物は瞬時に粉々に分解されてしまっているようだ。
光線が照らした草むらも光線が通った後だけ綺麗に分解されて綺麗な白い粉が舞っており、ロッジの方も同じように光線が通った部分だけ穴が開いている。
そしてロッジに開いた穴の先には…先ほどの鹿の頭部の剥製が置いてあり…こちらと目が合った。
まるで見ぃつけたというように鹿の表情に喜色が浮かんでいる気がする。
事実鹿の剥製はにやりと口を動かすとこちらに向けて口を半開きにして…。
「アンズ走るよ!あれはまずい!」
「ニミリ何がどうなっていますの!?何に攻撃されていますの!?」
「つべこべ言わずに走りなさい!それよりも次にあの虫が鳴き始めるまでどれぐらいかわかる!?」
私はアンズの手を取って走り出すと次に重要な事を聞く。
流石に時間までは計ってないかもしれないなと思い全力で走り出す。
「最初の間隔だと思いますので…大体後二分後じゃないかしら!?」
…どうやら計っていたようだ。
そういう所きっちりと記録してもらえているのは本当助かる。
「では全力でぎりぎりまで走ってそこで伏せるよ!がんばって!」
背中から何かが発射される音が響いてくるけど振り向いてはいけない…はず!
どうやら他の人達を生贄にしたからといって私達が楽に進めるという事は無いようだ。