28日午前9時40分ごろ、八潮市の交差点で道路が陥没してできた直径およそ10メートル、深さが5メートルほどの穴にトラックが転落しました。
また、29日未明には付近の道路がもう1か所陥没して穴が開き、周囲にある飲食店の看板が倒れたり、電柱が沈み込んだりするなど被害は拡大しています。
埼玉県によりますと、最初の陥没は下水道管の破損が原因とみられ、続く陥没は、あふれて行き場をなくした汚水が周囲の土を削って起きた可能性があるとしています。
トラックに取り残されたとみられる74歳の男性の救助活動が続けられていますが、大型のクレーンで引き上げた際には運転席部分は穴の中に残り、救助できませんでした。
その後、流れ込んだ水に運転席部分がつかるなど、救助が困難な状況で安否が分からないままです。
29日は、東京消防庁やさいたま市消防局の隊員らも応援として現場に入りドローンを飛ばすなどして穴の内部を調べました。
消防によりますと29日午後6時前には水かさが減ったということで救助活動を進めることにしています。
周辺ではさらに陥没が起きる危険性もあり、地中にあるガス管が傷ついてガス漏れが起きるおそれもあるとして、八潮市は現場から半径およそ200メートルの範囲の住民に対し、避難するよう呼びかけていています。また、復旧も見通せない状況が続いています。
埼玉県八潮市で下水道管の破損などが原因とみられる大規模な道路陥没が起きるなか、陥没できた穴に転落したトラックに取り残されたとみられる70代の男性は、安否がわからなくなってから30時間近くが過ぎました。
穴には水が流れ込んでいるなど2次災害のおそれがあるため、救助活動は困難なうえ、復旧も見通せない状況となっています。
避難を呼びかけている地域(いずれも一部)
▽中央1丁目
▽中央2丁目
▽八潮2丁目
▽中馬場
▽大字2丁目
八潮市は周辺のおよそ200世帯を対象に避難を呼びかけていますが、避難所の場所をこれまでの市役所から八潮中学校に変更しました。
より多くを収容できるということで、29日午後8時の時点ではおよそ15人が避難しているということです。
午後10時から汚水を近くの川に緊急放流へ
埼玉県は陥没現場の周辺に流れ込む下水の量を減らすため、下水道管の上流部で汚水をくみ上げて川に流す緊急放流を29日午後10時から始める予定だと明らかにしました。
緊急放流は近くを流れる新方川に行われ、汚水は塩素で消毒して放流するとしています。
午後8時20分ごろ
ショベルカーで穴を広げる作業始まる
消防によりますと、29日午後8時20分ごろから、ショベルカーを使って陥没した穴を広げる作業を始めました。
消防は広げた空間を使って穴の中に小型の重機を入れて土砂を排出できないか検討を進めていくということで、二次災害を防ぎながら慎重に作業にあたることにしています。
- 注目
陥没はなぜ起きたのか?
埼玉県によりますと、陥没した道路からおよそ10メートル下の地点には下水道管が通っています。
下水に含まれる生ゴミなどの有機物から硫化水素が発生し、空気に触れることで硫酸となって水道管を溶かし、その穴に徐々に土砂が流れ込むことで地中に空洞ができていた可能性があるということです。
この上をトラックなどの車両が通ることによって重みに耐えきれず、道路が陥没した可能性があるとしています。
現場を通る下水道管は、1983年から使われていて、2021年度の定期調査の際には修繕が必要なほどの腐食は確認されていなかったとしています。
地中レーダーで下水道管の被害状況を調査
事故を受けて埼玉県は、陥没した穴の周辺で「地中レーダー」を使って、下水道管の被害状況の確認を進めています。
埼玉県は民間企業に協力を依頼して、29日午後、陥没した穴の周辺で電磁波を発射して調べる「地中レーダー」を使って下水道管の状況を確認し、分析を進めています。
さらに、ドローンを飛ばして穴の中の様子を撮影したということで、被害状況を把握して復旧に向けた準備を進めたいとしています。
埼玉県下水道局の担当者は「道路の陥没は県が管理する下水道管に起因すると思われる。規模は過去最大のもので、元どおりにするのは年単位になると思います。復旧するまでどれくらいかかるかや、下水の使用の制限をいつまでお願いする必要があるかは未定ですが、状況を把握して早期の復旧に努めたい」と話しています。
周辺の道路 空洞ないか調査
現場近くでは、周辺のほかの道路の下にも空洞ができていないか県が調査を進めています。
調査は29日午後2時ごろから県からの依頼を受けた測量などの専門調査会社が行いました。
陥没した現場そのものは規制線があって近づけないため、周辺の道路のうち地下に下水道が走っているおよそ3.5キロメートルの県道と市道が対象となりました。
センサーを搭載した専用の車両が道路上を走って路面の下のデータを収集し、解析することで、深さ3メートルほどまでであれば陥没につながるような空洞があるかがわかるといいます。
調査担当者は車体の底に取り付けられたセンサーで路面の下の状況を記録し、空洞を見つけるための波形が表れているかを確認していました。
調査会社はこのあと収集したデータの解析を進め、30日までに空洞があるかどうか調査結果をまとめるとしています。
担当者は陥没の有無について「目に見えないだけにきょうの調査だけでは空洞があるかはまだわからないので、データを見てしっかり解析し対応していきたいです」と話していました。
なぜ難航?救助活動の経緯は
「車が穴に転落した」
消防に通報があったのは28日午前9時50分ごろでした。
消防が駆けつけると、全長8メートルほどのトラックが前方から深さ5メートルの穴に運転席から突っ込むような形で転落していました。
救助隊員が穴に入って、男性が運転席に閉じ込められているのを確認。
当時、男性とは会話ができたということです。
運転席のドアは土砂の影響で開けられない状態で、運転席の後ろからの救助も試みましたが、穴の内部が崩落。土砂が降ってきて隊員2人もけがをするなどして断念しました。
崩落が広がる中で作業を進めれば、男性も隊員も生き埋めになるおそれがあり、消防はまずトラックごと穴から出し、男性を救助することにしました。
《28日午後4時ごろ》
建設用のクレーン2台でトラックをつり上げようとしましたが、うまくいきませんでした。
《午後7時すぎ》
さらに大型の別のクレーン2台に変更。
《午後8時ごろ》
2台のクレーンで車の運転席側と荷台側の2か所にワイヤーをつなぎ、トラックをつり上げようとしました。
しかし、作業開始から30分ほどたった午後8時半過ぎ、運転席側につながれていたワイヤーが切れました。
《午後10時ごろ》
2度目のつり上げ作業が開始。崩落に気をつけながら少しずつトラックを持ち上げていきました。
《29日午前1時すぎ》
付近の道路がもう1か所、陥没。この影響で周囲の飲食店の看板が倒れ、電柱が沈むなどし一時、作業は中断しました。
《午前3時前》
トラックの荷台部分が穴から道路上につりあげられましたが、男性がいる運転席は穴の中に残されたままになっています。
運転席部分はその後、流れ込んだ水につかっていて、救助活動は難航。
消防によりますと、男性とは28日昼すぎ以降、やりとりができておらず、消防は穴にたまった水の排水作業を行ったあと救助活動を進める方針です。
《午後》
東京消防庁とさいたま市消防局も支援に訪れています。
29日午後からはドローンを使って、陥没した穴の内部を撮影し、状況を確認する作業を進めています。
【2度目の陥没はなぜ生じた?】
2度目の陥没が生じた原因について、地盤工学が専門で芝浦工業大学の稲積真哉教授は、大型クレーンを使って穴からトラックを引き上げた際に地盤の均衡が崩れたことが影響したのではないかと指摘しています。
現場周辺はもともと砂を主体とした軟弱地盤で地下水の水位が高いため、影響を受けやすく、稲積教授は、1回目の陥没で周囲の砂や土が不安定化していたもののトラックが穴にあったことで、かろうじてバランスが保たれていたとしています。
しかし、トラックを引き上げたことやクレーン車の重みでそのバランスが崩れ、陥没した穴の周辺にあった砂や土が不安定化し、一気に穴に向かって動いたことで陥没が起きたとみています。
その上で稲積教授は、現在2か所の穴に向かって力がかかっている状態で、わずかな衝撃が加わったり雨が降ったりすれば、周囲の別の場所で新たな陥没が発生するおそれもあるとして注意が必要だとしています。
道路陥没 各地でも
去年10月には水戸市の中心部でも下水道管が破損し、道路が幅2メートル、長さ5メートル、深さ5メートルにわたって陥没しました。
市によりますと、破損したのは設置から50年以上がたった下水道管で、老朽化が原因だったということで、復旧までにおよそ3週間がかかりました。
50年の耐用年数を超えた下水道管は、市内に75キロ余りあります。
老朽化などが原因の陥没は、年に10件程度起きていて、ほとんどは小規模なものだということですが、この時破損したのは複数の管が流れ込む「幹線」と呼ばれる大型のものでした。
市は幹線が破損すると陥没の影響が大きくなることから、今後幹線を重点的に点検していく方向で検討しています。
水戸市上下水道局下水道計画課の久木崎隆課長は「去年の陥没では下水道管が大きかったことから復旧にかなり時間がかかってしまった。地下に埋まった下水道管の調査は費用が高く、限られた予算の中で優先順位をつけて、リスクの大きいところから対策を進める必要がある。下水道管は全国的に老朽化が進んでおり、より国の支援を求めていきたい」と話していました。
全国で下水道が老朽化 ドローンでの調査も
全国で下水道の老朽化が進む中、ドローンを使って下水道の調査を行う会社には、全国の自治体から依頼が相次いでいます。
国土交通省によりますと、2022度末時点の全国の下水道管の総延長はおよそ49万キロメートルで、このうち耐用年数とされる50年を超えているものがおよそ3万キロメートルでした。
耐用年数を超える下水道管が、20年後にはおよそ20万キロメートルに達すると見込まれる中、下水道管の調査などを行う東京都内の会社には、全国の自治体から依頼が相次いでいます。
この会社は2017年からドローンを使った調査を行っています。
ドローンは飛行するタイプと、水面に浮かぶタイプ、それに水中に潜るタイプの3種類で、管の大きさや環境にあわせて使います。
人が入れない危険な場所でも調査ができ、下水道を使いながら調査が行えるのもメリットだということです。
ドローンで撮影された映像や画像には、内側の壁が硫化水素で溶けて崩れ落ちている様子や、穴が開いて地下水が噴き出している様子、それにつなぎ目の部品が外れている様子などが確認できます。
自治体からの調査依頼は年々増えているということで、NJS企画広報室の坂井貴彦室長は「下水管の調査のニーズは非常に高くなっています。中を調査してみると老朽化が進んでいるところが多くあり、耐用年数前でも老朽化が激しい管路は多くあります。ドローンのような新しい技術をつかって点検困難な場所の調査を進めていきたいです」と話していました。
「まさかこんなことが」住民からは不安の声
70代の父親と一緒に避難してきたという50代の女性は「午前4時ごろに避難してきました。警察官が避難所に来て、一度自宅に戻ってもいいという話があったので、避難生活に必要なものを取りに帰ろうと思います。まさかこんなことが起こるとは思っていなかったので、本当に驚いています」と話していました。
また、30代の夫婦は「自宅が陥没の現場から200メートルの範囲内にあります。きのうから風呂の水を流さないようにしたり、洗濯を控えたりしていましたが、市が避難指示を出したので、携帯電話の充電器や飲み物などを持って避難しました。いつまで避難する必要があるのか全くわからないので不安はありますが、状況に応じて今後のことを考えようと思います」と話していました。
80代の女性は「避難生活が長引くことも考えられるので、必要な準備をするためにこれから一度自宅に戻ろうと思います。こんなことは初めてなので、本当に困っています」と話していました。
現場周辺の小学校では “う回して登下校” 指導
事故現場の周辺が通学路になっている小学校では、う回して登下校するよう指導するとともに、下校の際に教員が付き添う対応を取っています。
現場から2キロほど離れた八潮市立潮止小学校では、通学路の一部が、避難が呼びかけられている地域にあります。
29日は昼休みの時間に通学などで事故現場付近を通る児童およそ200人を体育館に集め、危険な場所は通らないよう指導しました。
教員が事故現場が記された地図を見せながら、現場の周辺をう回するよう通学路を変更することや、登下校の際はう回場所に立っている教員の案内や指示に従うことなどを伝えると、児童たちは大きくうなずいていました。
そして午後2時半ごろ、1年生と2年生の集団下校の列に教員が付き添いました。
この小学校では30日以降も、安全が確認されるまでは同様の対応を続けることにしています。
五味理絵子校長は「『昨夜はサイレンの音で眠れなかった』という子どもたちもいて、突然の出来事に戸惑い、心が不安定になっている子もいるように感じます。学校全体で子どもたちを守っていきたい」と話していました。
保育園などで休園措置も
八潮市によりますと、この影響で現場付近の1つの保育園と1つの認可外保育施設が臨時休園になっています。
休園措置をとった保育園の一つは「近くでこのようなことが起こり驚いている。避難の呼びかけを受けてきょうは閉園としたが、あす以降の対応はまだ決まっていないので市と情報共有を図って判断していく」と話しています。
埼玉県 大野知事 “影響が長期化する懸念”
今回の陥没事故を受けて、埼玉県の大野知事は下水道管が破損しているおそれがあり、影響が長期化する懸念を示しました。
このため周辺の住民だけでなく、企業や工場などにも下水に流れる水を減らすための協力を呼びかけています。
陥没事故を受けて、県は29日昼前に3回目となる対策会議を開きました。
このなかで大野知事は、道路の下にある下水道管が破損しているおそれがあり、影響が長期化する懸念を示しました。
このため、周辺の住民だけでなく、企業や工場にも下水に流れる水を減らすよう呼びかけているほか、対象となる自治体の医療機関にも支障のない範囲で協力を依頼したということです。
会議の中で大野知事は「被害を最小限に食い止めることが私たちの職務です。影響が長期化する懸念があり、ご迷惑をかけるが、ご協力をいただけるようお願いしたい」と呼びかけました。
国交省 全国の自治体に緊急点検を指示
陥没事故を受けて、国土交通省は29日、全国の自治体に対し、同じような規模の下水道管に腐食などが起きていないか緊急点検を実施するよう指示を出しました。
緊急点検の対象となるのは、直径2メートル以上、晴天時に1日あたり最大で30万トン以上の下水を処理できる大規模な処理場に接続している下水道管です。
こうした下水道管があるのは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県の6つの自治体で、総延長は539キロメートルにのぼるということです。
国土交通省は2月7日までに点検結果を報告するよう求めているほか、対象となる下水道管がない自治体に対しても改めて点検を行ってほしいとしています。
橘官房副長官「専門家を派遣 全国で緊急点検も」
橘官房副長官は午後の記者会見で「政府として埼玉県にリエゾン職員や専門家を派遣し、技術的な支援などを行うことにしている。また、国土交通省が全国の下水道管理者に対し、同様の箇所の緊急点検を要請したほか、埼玉県で実施する事故原因調査の結果を踏まえ、必要な対応を実施していく」と述べました。
【動画で見る】
【動画19秒 午前1時ごろ】トラックつり上げ作業中に別の陥没が
【動画6秒 午前2時40分ごろ】住民への避難呼びかけ
【動画24秒 午前4時すぎ】市役所に避難する住民
【動画17秒 午前7時前】上空からの陥没箇所
【動画22秒 午前11時半ごろ】上空からの陥没箇所
【動画17秒 午後5時ごろ】上空からの映像
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