彼には夢があったそれは、英雄となること。そして・・・ハーレムを築くことだ。
彼は変態じじいの高等教育を受けハーレムの素晴らしさに魅せられたのだ。
「アルゴノウト」としての役目を終え実質2週目となる彼は使命のようなものから解放され生きたいように生きることを選んだのだ。
祖父の話から世界が自分が望んだようになったことに安堵し英雄達の物語に心を躍らせる毎日を送りそして彼は・・・彼は英雄を目指すナンパ男になった。
彼、ベル・クラネルがオラリオに来てすぐにやったことは情報の収集だった。多くのファミリアを訪ね持ち前のコミュニケーションで話を聞き出し自らを売り込みにいったのだ。
しかし、彼を待っていたのは実力不足の烙印と侮蔑と嘲笑だった。それでも彼は折れず努力を続けそして彼女との出会いを果たしたのだ。
そう。彼女こそ女神ヘスティアである。彼女はこの出会いを運命だと思いこう言った。
「僕の眷属にならないかい。」
彼は彼女の眷属になった。
そして、そして・・・・今に至る。
「神様。そのことは本当に申し訳ない。まさかナンパをしただけで他派閥の冒険者が襲ってくるなんて思ってもいなかったんだ。」
「君には本当に驚かされるよ。ぼ!く!という者がいながらまさかここまでしでかすとは本当に本当に君というやつはー!」
「フハハハ!だが!安心してくれ、私は誰にも相手にされてない!」
「違う!そうじゃない。もう、ナンパを辞めろって言っているんだ!」
「大体君が口説くのはみんな美女、美少女でしかもけっこう大きなファミリアの看板眷属だ。そりゃあ主神達は怒るに決まっているだろうし相手にされないよ!」
「だが!しかし、目の前に美少女が美女がいて口説かないなどもったいないと思いませんか?」
「ロキの時を思い出せ!ロキの時を!」
「確かにあれはひどかった。」
「まさか、大幹部3人全員お出ましでその後他の幹部もやってきて事の詳細をつまびらかに説明させられるとは・・・。生きた心地がしなかった。」
顔を引きつらせながらベルは言う。
この男、都市二大大派閥ロキファミリアの「剣姫」と呼ばれる冒険者にダメ元の初対面ナンパをかましたのだ。しかも、その結果なんやかんやでそのナンパが成功してしまうのだがら質が悪い。
ダンジョンでもないのに多くの賭けにでてロキファミリアから何とか無実を勝ち取ったあの出来事は本当にトラウマものだ。魅了のスキルを使った、催眠のスキルだ、等々疑われすぎて本当にファミリアが吹き飛ぶ所だった。あれほどに前世の地獄を想起させる事態は今までにない。
「それで、結局あの後からあのロキの子とはどうなんだい?あの場では何もなかったことにすることでチャラにしてもらったらしいけど。」
「はい。私自身これ以上何かやらかしたらまずいと思ってロキファミリア近辺一切近づいておりません!」
「え?そうなのかい!?」
ヘスティアファミリアではベルのナンパ癖もあり、ヘスティア自身ベルが大好きだが子供達の恋愛もあってしかるべきだという方針に切り替え節度とルールを決めた上で彼のナンパを傍観していた。そんな彼女から見てこの状況は異常なのだ。
「君はナンパに成功はしていたんじゃないのかい?」
「さすがに私でもヘスティア様が送還されると分っていてナンパはできない!」
「ロキの所・・・そこまでだったか。」
「え、えぇ、何というかフィンさん達より他のファミリアの方達の方の圧が凄くて・・・。」
急に震え出すベルを伏せ目にヘスティアは話しを続ける。
「成る程・・・。良い判断だベル君。」
ヘスティアは胸をなで降ろした。
「ところで、君のスキルのこと少しは分ったのかい?」
ヘスティアは悪夢のような話題から話しを変えるようにベルの謎に話を移した。
「はい、少しは。」
ベルに神の血を落とした時から発現していたスキル。
しかし、その名も効果も神にさえ読むことができなかった。正しく異常スキル。
ヘスティアはそれに仮の名前として自らをさすモノの名「ウェスタ」と名付けた。
「ウェスタは恐らくある一定の人々に対して影響があるのかなと。」
「ヴァレン某のように?」
「・・・恐らく。」
「うーーん。本当に分らないなー!」
ヘスティアと暮らし始めて実に1ヶ月と少し。本当に色々なことがあった。多くの失敗をしたし死にかけた回数もこの一ヶ月で数え切れないほど在る。それでも自分が笑顔で過ごせるのは、神様が絶対に味方になってくれるからだろう。もっと良い暮らしをさせたいのだが中々スカウトも難しく、ソロでダンジョンに行くしかない。
「まあひとまず、今日の分のステータス更新やっちゃおうか!」
「頼むぞ!我が愛しき女神よ!」
慣れた手つきで女神はベルのステータスを更新する。
「良し!できた!」
「相変わらずステータスがどんどん上がるねー、君は。」
そこには
Lv1
力 :C 565→C 585
耐久:D 490→C 500
器用:C 550→C 560
敏捷:B 650→B 675
魔力:D 410→D 415
<魔法>
[サンダーボルト] ・詠唱 「討て、雷霆の剣」
・自分自身に雷の付与
・自分自身に雷の加護を授ける
<スキル>
[●●●●] ・???????????
「うむ!結構いけた!」
「というか1回の冒険でトータル50オーバーって。すごいよ、ベル君。」
「私は成長期だからな!」
色々と言いたいことはあるがひとまずは、そう、ひとまずはこう言おう。
「今日の冒険もおつかれさま!ベル君!」
そしてこんな日々がいつまでも続きますように。
ベルはヘスティアを見ながらつい1ヶ月前を振り返る。
いつものようにナンパを敢行していた時ロキファミリアの面々を見たときのあの衝撃は未だに彼を興奮させると同時にある種の寂しさを与えていた。自分を見ても全く歯牙にも掛けない者達を見て彼は彼らは全くの別人なのだと改めて分らされたのだ。だが、それと同時にうれしくもあった。彼らも覚えていたらと期待もしたが別にそこまで期待した訳ではなかったから。ただ、別人であっても彼らが彼ららしく誇りをもって英雄の道を駆け抜けているという事実がかれはどうしようもなくうれしかったのだ。
だから、そう、だからかれはナンパをした。かつても彼がそうしたように、あの日以来見ることは叶わなかった少女とうり二つの少女にただの道化のようにそして一人の紳士として、彼は少女の手をとりナンパをした。
「私と町を回りましょう!」
「
その瞬間、彼は瞠目した。ロキファミリアも唖然とした。剣姫を多くの男が狙っているのは公然の事実だ。しかしナンパが成功した試しはただの1回も存在しない。そもそもロキファミリアをナンパする時点でありえない。だがこの男は、そうベル・クラネルは成功した。してしまった。
そして彼は直感する。これは自分のスキルの効果だと。3,000年前に別れた少女の記憶がここに呼び出されたのだと。詳しい条件もきっかけも分らないだが奇跡が起きた。それが紛れもない事実だった。
「・・・アリア?」
「ええ!そうよアル!」
少女は笑っていた。少年も笑っていた。ああ、笑うしかないこんな奇跡があるなんて、こんな、こんな!
周りを置いて二人は笑った。ただどうしようもなく、笑い合った。
かくて、再開は果たされた。
これは少年の物語であり、眷属達の物語。3,000年の時を経てなおこんなことが起こるのだ。何が起ころうと不思議じゃない。
ならば綴られることだってあるだろうさ。
これは大昔の英雄がうっかりやらかす物語、そんな滑稽な喜劇であり、うっかりついでに世界を救ってしまうようなそんな「後日譚」。
「「さあ、喜劇を始めましょう。」」
喜劇譚の第二幕が幕を上げる。